『AYA UCHIDA LIVE 2019 ~Take it easy~』東京公演レポート
内田彩が築き上げてきた“当たり前”という財産 “Take it easy”を掲げた一夜を振り返る
次に、すべての楽曲がこれまでのアーティスト活動はもちろん、内田の人生や生き様を抜きに語れないことも大きな特徴である。その象徴といえるのが、本編終盤の「Ordinary」。ほか、「SUMILE SMILE」と「Say Goodbye, Say Hello」だ。
これらの楽曲はすべて、2017年9月発売のアルバム『ICECREAM GIRL』収録曲。2016年春から患っていたという声帯結節の手術を乗り越え、〈当たり前じゃなくなって 当たり前に気付いた〉と歌う「Ordinary」や、時には涙さえ受け入れて生きていく強さを描いた「SUMILE SMILE」を聴けば、リスナーは内田との思い出を自ずと呼び起こされる。たとえ彼女の歌声を初めて聴いたとしても、後者の〈笑顔をつくって、 ごまかすなんてできないね きっと〉というラインなどには、そっと背中を押されることだろう。何より「SUMILE SMILE」の泣きメロギターリフは、ずるい。
最後に、数年前までの内田は声優アーティストとして、様々な楽曲の役柄を演じることを強みとしてきた。その一方、現在の彼女はありのままの表情で、会場の誰よりもライブの時間を楽しんでいる印象が強い。誰かを演じてきた声優の彼女が、誰を演じるでもなくアーティストとして最大に輝く光景が、そこにはある。ライブ終盤には「みんなとのSignは、笑顔かなって思います。顔を見合わせて、笑顔を確かめ合えるのが、私にとってはすごく大事な時間です」とも語られた。彼女の“Take it easy”なスタンスには、ファンの存在が欠かせないようだ。
ジャンルを越境したライブアレンジや、自身の活動における文脈と切り離せない数々の良曲、そして自然と笑顔が溢れてしまうファンとの優しい時間。そのすべての担い手であるアーティストーー内田彩になれるのは、誰でもない内田彩だけである。
(取材・文=青木皓太/写真=青木早霞)
■セットリスト
01.Candy Flavor
02.What you want!
03.Floating Heart
04.Everlasting Parade
05.So Happy
06.キックとパンチどっちがいい?
07.いざゆけ!ペガサス号
08.Holiday
09.Sign
10.Sweet Rain
11.Ordinary
12.SUMILE SMILE
13.Say Goodbye, Say Hello
EN01.ドーナツ
EN02.キリステロ
EN03.アップルミント
EN04.Merry Go
■関連リンク
内田彩 オフィシャルサイト