『第7回アイドル楽曲大賞2018』アフタートーク(インディーズ編)
2018年は実りの多い年だったーーアイドル評論家4氏が語る、インディーズシーンに芽吹く新たな文化
新しいアイドル文化はどんどん芽が出ている
ーー10位以下はどうでしょう。12位は「終わりから」で、SAKA-SAMAが入っています。
宗像:12位の「終わりから」は4人体制の曲で、この後にメンバーが脱退、加入となり、7人になる流れの中で、4人時代の美しい記憶だったなと。SAKA-SAMAは、「Lo-Fiドリームポップアイドル」というコンセプトなんですけど、今はそこまでローファイでもなく、雰囲気が若返っている印象です。「終わりから」は、そういった感触を音に残していた時代の美しい記憶ですね。
ガリバー:アルバムジャケットの白の衣装もすごいいいですよね。
宗像:尖ったクリエイターを揃えてきているので、そういったところで面白さはあると思うし、雑誌の『TRASH-UP!!』の嗅覚をそのまま持ち込んでいるんですよ。エディトリアル的な感覚、センスがアイドルの運営に持ち込まれると、こうなるのかという。
ーー『ゴッドタン』(テレビ東京)でも話題の眉村ちあきさんは「ピッコロ虫」で15位です。
ガリバー:この間、大阪のゲリラライブで観たんですけど、曲はもちろんいいと思ったし、それに彼女の言動が面白いですよね。カリスマ性がずば抜けている。眉村さんに関しては新人というわけでもないんですけど、ソロだからこそ、こういった才能って出てくるんだなと見せつけられました。
ーーRYUTistは、10位「黄昏のダイアリー」、11位「無重力ファンタジア」、16位「青空シグナル」、20位「心配性」と続きます。
ガリバー:作家はいつもの顔ぶれなんですけど、11位の「無重力ファンタジア」は作曲にikkubaruを起用した冒険だったんですよ。
宗像:新潟アイドルは、NegiccoもNGT48もアコースティックな音を使ったサウンドアイコンがあるので、そういったものからどこまで飛び出せるかですね。
ーー2019年のアイドルシーンに期待することはありますか。
岡島:2019年はオサカナがどうなっていくのか、展開が楽しみだなと思います。しっかり地盤を固めて活動しているので、楽曲がどこまで一般層に受け入られていくのか、アニメ層に跳ねるのか。あとは、おっさんの夢を詰め込んだようなSOLEILが大好きなので。受験が終わって復帰するのが楽しみです。
ーー『バズリズム02』(日本テレビ系)の「今年コレがバズるぞBEST30」に、フィロのス、眉村さんと一緒にランクインしていましたね。
岡島:60年代ガールポップなサウンドを、無自覚な可愛い女の子にやらせる。その夢が最も美しく結晶化したのがSOLEILだと思っているので。だから、しっかり見ておきたいなと思っております。
ーー宗像さんは。
宗像:次の新しいローカルシーンの動きが見えているのが面白いですね。まず、横浜市のローカルアイドル・nuanceについては、僕が神奈川県の人間だと言い出すくらいには好きなんですよ。基本的に歌謡曲の四つ打ちですが、新曲の「タイムマジックロンリー」からかなり違った変化球が来たんです。でも、そんなスピードの速さも面白さの一つだと思いますね。横浜のメランコリーみたいなもの、地元感が常にある。川崎から見た横浜感が強烈にありますね。
ガリバー:関東でこれだけ洗練されたロコドルは、nuanceが初めて。基本的に関東のアイドルはロコドル感を消しますからね。
宗像:ロコドルで言えば、個人的に北陸3県にすごく興味があって。石川県小松市に空野青空さんにイベントMCとして呼ばれて行った時に、せのしすたぁの現地での熱い受け止められ方とか、いろいろ面白くて。あおにゃんは現地ではすごくリスペクトされている、とかね。ほかにも、おやゆびプリンセスが2回解散して、そのメンバーがそれぞれ活動をしていたり活発化しているので。ローカルシーンに関しては新しい動きだな。
2010年代は「アイドル戦国時代」というワードが使われ、2018年は「中堅アイドルがどんどん解散していく」みたいな記事が朝日新聞に載ったりしたけれど、そんなことは5年も6年も前に産業構造の一つとして分かっていたことなんですよね。個人としては2018年はインディーズもメジャーも実りの多い年だったんですよ。シーンが衰退しているとみんなが頭を抱えている時に、次の動きが見えていて楽しかった。なんキニ!、真っ白なキャンバス、マリオネッ。といったグループは、20代のプロデューサーが新しく立ち上げているんですよね。シュリンクしていくシーンを分かっている上でグループを作っている。それって商業的な文脈では捉えられない文化的な面白い動きだと思うし。そういった新しい文化はどんどん芽が出ているから、僕はそっちを追いかけるのに必死なんですよ。僕はシーンに置いていかれたくないし、新しい動きを追いかけていこうと思っていますね。
ーー最後にガリバーさんお願いします。
ガリバー:僕は、けやき坂46がどこまで伸びていくのか、自分たちのポジションを確立できるのかというのと、IZ*ONEの日本展開が楽しみで仕方ないですね。一方で、ロコドルに関しては、四国とか鳥取の米子、それこそ北陸の石川といった新たなところで動きが復興したのがあって。その子たちは東京を目指さないんですよね。東京を目指すというのは一周回って古くて、例えばサブスクで全国の人に聴いてもらって、地元に来てもらうという、本来のロコドルの姿を、配信という新しいインフラを活用して動きを取り戻しているのが、各地であったのはいいことだし、2019年はそれがランキングなり、存在感なりで、形になることを楽しみにしています。あとは、中堅アイドルがいなくなったと言われるけど、実際もっと層は厚いよ、と言いたいです。2010年代前半から表舞台に立っていた人たちはいなくなったかもしれないけど、その間に新たな中堅層は裏にいっぱいいるんだということがより顕にっていくのではないでしょうか。2019年はそういったグループを目にすると思うし、活躍してくれる年だと期待しています。
(取材・文=渡辺彰浩)
■イベント情報
『アイドル楽曲大賞プレトーク2019 Vol.1』
日程:2019年2月11日(月・祝)
開場18:00/開演18:30
会場:新宿・ROCK CAFE LOFT
料金:前売1500円 / 当日1800円(+要1オーダー)
チケット予約はこちら(※ROCK CAFE LOFTのサイトのみとなります)
出演:ピロスエ、ガリバー、岡島紳士、宗像明将
ゲスト:児玉律子(FAREWELL, MY L.u.v)、小林拓馬(FAREWELL, MY L.u.vプロデューサー)
主催・お問い合わせ:VIDEOTHINK
内容:ピロスエ、ガリバー、岡島紳士、宗像明将の4名が2019年オススメのアイドル楽曲をそれぞれ紹介。さらにゲストを交えて、そのゲストに関する楽曲や楽曲制作についてのトークなども行う。児玉律子さんによるライブと、物販&特典会もあります。