Hi-STANDARDによる新たなサプライズ “語り合いたくなる”ドキュメンタリー映画公開までの軌跡

 そんなHi-STANDARDというバンドの在り方を114分に凝縮したのが、11月10日から劇場公開中の映画『SOUND LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』だ。ここからは、この作品の魅力について触れていきたい。

 冒頭に書いたように、筆者はひと足先に試写会にてこの映画を拝見し、その際Twitterに下記のようなコメントを残した。

“ハイスタ映画試写、見終えてしばらくひとりで噛み締めてました。知らなかったこと、今回初めて明かされることなど情報量多すぎて、処理するのに時間がかかりそう。とにかく「すごい」の一言。これ、劇場公開後に数人で観に行って、終わってからいろいろ語り合いたい。胸いっぱい。”

 古くから知るファンならば、初めて明かされるその情報量の多さに間違いなく圧倒されることだろう。時系列に沿って、メンバー3人のコメントと当時の貴重な映像で進行していく作風は非常に淡々としたものだが、だからこそ余計な情報で邪魔されることなく、Hi-STANDARDの濃厚な世界にじっくり浸ることができるはずだ。また、最近彼らのことを知ったという若いリスナーにとっては、丁寧な説明がないぶん、事前に彼らの軌跡を把握していないと難しく映るかもしれない。だからといってつまらないかと言われると、まったくそんなことはなく、ある程度の予習があればより理解が進むし、観終えてからさらに深く知ればどんどん“沼”にハマっていくことだろう。


 そして、知れば知るほど他人と語り合いたくなる。Hi-STANDARDの3人は自分と同年代ということもあり、より自分の人生と重ね合わせて観てしまう部分が多かった。それによる感情移入も少なからずあったのも事実だ。そんな自分の中に溢れる思いを、他人にぶちまけ共有したい。相手がこの映画を観てどう感じたのか、その理由を知りたい。Hi-STANDARDというバンドを通して自分自身の生き方を再確認する……まさかそんな経験をすることになるとは、観る前は考えてもみなかったのだから、そりゃあ胸いっぱいになるわけだ。

 Hi-STANDARDというバンドの本質が、嘘なく正直に描かれたこの映画。これを観ればHi-STANDARDが支持される理由が理解できるはずだ。だって、こんなに“人間クサい”んだもの。自分に対しても相手に対しても正直で、他人事感がまったくない。自分たちが信じたものこそが「カッコいい」わけで、そこにブレがまったくない。だから物事がうまく進むときはスムーズだし、ぶつかり合うときはとことんぶつかる。彼らの歴史を振り返れば、思い当たる事象はいくつもあるし、そういった場面もこの映画の中では余すところなく触れられている。


 だから、この3人のことを信用できるんだ。114分におよぶ映画を観終えたあと、きっと誰もがそう思うはずだ。この数奇な運命を見事な形で映像作品としてまとめ上げた梅田航監督にも拍手を送りたい(しかもこの作品が初監督映画とのこと!)。

 さて、あなたはこの映画を観て何を感じるのだろうか。ぜひ身近にいる人と一緒に映画館に行き、観終えたあとに自分の中に芽生えた感情をお互いにぶつけ合ってほしい。あるいはひとりで観るという人は、SNSなどを通じてぶちまけてほしい。そうすることで、Hi-STANDARDというバンドの存在がよりリアルなものになるはずだから。

■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

『SOUNDS LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』パンフレット

■公開情報
『SOUNDS LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』
全国公開中
監督:Wataru Umeda
製作:SOUNDS LIKE SHIT PROJECT
配給:NexTone
(c)SOUNDS LIKE SHIT PROJECT
公式サイト

■商品情報
『SOUNDS LIKE SHIT: the story of Hi-STANDARD』パンフレット
劇場にて販売中
全44ページ/フルカラー/303mm × 228mm
価格:800円(税込み)
発行元:SOUNDS LIKE SHIT PROJECT

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