米津玄師、「Flamingo」に見る身体表現における芸術性 辻本知彦が絶賛するダンスセンスに迫る

 そして、再び辻本による振付で制作された新作「Flamingo」。この曲のダンスで特徴的なのは、フラミンゴのように凛と立ちながら体の一部をくねらせるウェーブの多用。これは、〈へらへらり〉〈ふわふわ〉〈ふらふら〉といった歌詞や、楽曲のテーマである「みっともなさ」、和的なメロディやサウンドの、いずれにもリンクする。全体的には気だるいポップダンスとでも言おうか。ポップはパントマイムやロボットダンス、アニメーション、ブガルーなどを取り込んでいるジャンルで、マイケル・ジャクソンのムーンウォークもこれに分類される。別の物体のような人間的でない動きが求められ、米津の細長い手足も相まった「Flamingo」のダンスは不可思議な魅力を放つものに仕上がっている。

米津玄師 MV「Flamingo」

 この“体の一部だけウェーブ”は、他の部位を動かさないことで対比を出すため、体の支柱をぶらさない体幹が必要だ。サビの〈フラミンゴ〉部分で見せる、アニメーションダンスなどで使われる階段式の重心移動も、アイソレーションと基礎筋力がなければキマらない。米津は「LOSER」を発表した2016年のインタビューで「今年の夏にダンスのレッスンをしたんですけど、それに伴って筋トレ的なこともしたんですよ。そうしたら身体の形が変わってきた。筋肉も付いて、それに伴って精神的なところも変わってきたんです」(参考:cakes 米津玄師インタビュー)と自覚しているが、トレーニングを重ねたことが「Flamingo」でのボディコントロールを可能にしているのは言うまでもない。米津玄師のダンスは、天性のセンスだけでなく鍛錬を重ね進化していることを証明してみせた。

 作詞・作曲、イラストにダンスまで。あらゆる角度から独創的才気を発揮している米津玄師。表現ジャンルの垣根が低くなりつつある昨今において、最も現代的であり、かつ最もポピュラリティを獲得しているアーティストが、今後どんな身体表現で魅せてくれるのが楽しみなところだ。

■鳴田麻未
1990年東京都生まれ。ライター、編集者。2009年に都立工芸高校グラフィックアーツ科を卒業。同年夏から2016年まで7年半にわたって音楽ニュースサイト「音楽ナタリー」編集記者として、ニュース記事執筆、特集制作、企画、営業を行う。2017年1月より独立。5歳からダンスを始め、クラシックバレエ、ヒップホップ、ジャズ、チア、バトントワリンクを習う。ダンサーとしての実績に、第11回全日本バトン選手権大会出場、ONIGAWARA「ヒットチャートをねらえ!」ミュージックビデオ出演などがある。
Twitter:@naruta_mami

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