作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第18回

作詞家 zoppに聞く、“泣き歌”の歌詞に欠かせないこと 「絶対に取り返せない喪失感が大事」

「“泣き歌”はシンガーソングライターの特権」

ーーzoppさん自身が泣ける歌詞を書くときに意識していることはありますか。

zopp:僕は女性リスナーに焦点を当てた歌詞を書くことが多いのですが、“絶対に取り返せない喪失感”が大事だと思います。そういう意味では「死」が一つのテーマで。あとは失恋の場合も、どれだけハードルが高い失恋なのかによって喪失感の深さが違う。一方で「3月9日」や「ひまわりの約束」もそうですが、男性の場合、感謝と恩返しが感動するポイントになることが多い。実は「青春アミーゴ」(修二と彰)もサウンドにも歌詞にもノスタルジックな感じがあって。恩返しや感謝まではいかないですけど、今住んでいる都会と地元、故郷が対照的になっている。久々に地元の友達と会ったり、ふるさと感があると懐かしくなって泣きそうになると思うんですね。

ーー先ほど、職業作詞家が個人的すぎる歌詞を書くのは難しいという話もありましたが。

zopp:今回の『関ジャム』のランキングでは「M」が唯一、ボーカルの岸谷香さんではなくて、バンドメンバーの富田京子さんが書いているくらいで、ほぼ全てその曲を“歌っている人”が歌詞を書いています。おそらくその方が、“その人の言葉”として受け止められやすいのでは。僕ら職業作詞家が書いた歌詞だと、そのアーティストが書いている歌詞ではない=そのアーティストが思っていることではない、という先入観が、無意識にリスナーの内にあるのかもしれません。そう考えると、僕の作詞の仕事で、「泣ける歌を書いてください」というオーダーは少なくて。ただ、結果的に聴いてくださった方が、感情移入して泣いてくれることはあるんですけど。そう考えると、アイドルと「泣き歌」は距離があるかもしれません。

ーー最近のzoppさんの歌詞では、「題名の無い物語」(Hey! Say! JUMP・髙木雄也)がグッときました。

zopp:あの曲は髙木くんが実際に見た夢を歌詞にしたものです。彼の想いが詰まっている歌詞で、結構泣ける歌詞になったな、と思います。夢の中で見て、顔は覚えてなくて、でもすごく好きな人で……という究極の片思いで、やっぱり“喪失感”がテーマですね。実はあれは一度も直しが入らなかったんですよ。今までも色々なグループのソロ曲を書いてきたんですけど、一発OKはなかなかなかったんで、相当ハモったのかもしれませんね。

ーーアイドルの中でも、テゴマスの歌詞は他のグループと少し違う印象です。

zopp:テゴマスの曲は、家族サイドと恋愛サイドの歌詞がありました。家族の話を書いた歌詞は、みなさん、恋愛の歌詞とは違う共感をされていたのが面白かったですね。毎回1%か2%は自分の経験などを歌詞に含ませるんですが、実は「ミソスープ」は自分と“ニアリーイコール”な歌詞なんです。恥ずかしいですが、自分で聴いても、セリフ調の歌詞とかはやっぱりキュンとするな、と思いますね。とはいえ、職業作詞家が「泣き歌」を書くチャンスはなかなかないので、「泣き歌」はシンガーソングライターの特権なのかもしれません。

(取材・文=村上夏菜)

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