三浦大知&星野源のシンクロは必然だった? 二人を繋ぐ“3つのキーワード”を考察

 まず、2人の共通のルーツとして挙げられる“マイケル・ジャクソン”。4月17日の『星野源のオールナイトニッポン』でも三浦が選曲した「Black or White」の話題から「英語とかもわからず、ジャンルもわからず、なにもわからない子どもの自分に「なんてこれは楽しいんだ」とか「意味はわからないけどとにかくかっこいい」とか、そういうエンターテインメントの理屈じゃない部分を教えてくれたアーティスト」(三浦)「音楽でもそうだけど、ダンスでも本当に世界中の人をワクワクさせて楽しませて。で、いま聞いてもワクワクするっていう。すごいことだなと」(星野)と語っていたが、20世紀のエンターテインメントの歴史を塗り替えてきたアーティストに対するリスペクトの視線、および単なる憧れにとどまらずそれを自分なりの表現としてアップデートしていこうという姿勢に重なる部分は多い。

 次に、“様々な要素を咀嚼して、日本らしい音楽を作り上げる”というスタンスについて触れてみたい。星野は自身の音楽を“イエローミュージック”という言葉で形容し、海外のブラックミュージックをベースに日本の芸能・音楽の要素を取り入れた世界を展開している。そしてそんな彼が三浦大知の「飛行船」を“まさにイエローミュージックだ”と評価していたように(7月10日『星野源のオールナイトニッポン』より)、三浦にも日本語を大事にしながら日本ならではのダンスミュージックを生み出そうという気概がその根底にある(「僕はすごく日本語が好きで、日本語の音楽がもっと世界で聴かれるといいなと思っているんです。」(参考:三浦大知が語る、ソロデビュー13年の変遷と未来 「日本の音楽の面白さが世界に伝わったら」))。「ユニーク」「オリジナル」といった表現は手垢のついたものだが、「これまでの歴史を踏まえて新しいものを作る」「そしてそれが商業的にも評価される」というケースは必ずしも多くはない。同じ時代に困難な取り組みに果敢に挑戦している2人は、それぞれにとって同士のような存在に見えているのではないだろうか。

 最後に言及しておきたいのが、彼らの“キュレーター”としての自覚である。自身のラジオ番組で様々な音楽を積極的に紹介する星野源と、「これはKREVAさんにも言っている話なんですけど、「こいつめちゃくちゃいいんですよ」って自分の後輩をKREVAさんに紹介できたらそんなに嬉しいことはないなと思っていて。自分の大好きな先輩と大好きな後輩がつながっていて、それをつなげたのは自分、ってほんとに素晴らしいなと」(前掲インタビューより)と活動を通じて才能の出会う場を作りたいと考えている三浦大知。それぞれの作品においても、星野源「アイデア」でSTUTSを全面的にフィーチャーし、また三浦大知もSeihoやCarpainterの関わる楽曲をシングルとしてリリースするなど、自分の活動そのものをある種のメディアとして活用しながら新世代のミュージシャンを世に引っ張り出そうとしている。彼ら自身が多くの人から受けてきたフックアップをシーン全体に還元するかのような動きから垣間見えるのは、2人の日本の音楽に対する深い愛情である。

 いくつもの共通項を持ったこの2人が深く響き合うのは、ある意味では必然的なことだったのかもしれない。今後さらなるコラボレーションにつながっていくかは現時点では未知数だが、三浦大知と星野源の同期する活動は日本のポップミュージックの未来に大きな刺激を与えている。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題になり、2013年春から外部媒体への寄稿を開始。2017年12月に初の単著『夏フェス革命 -音楽が変わる、社会が変わる-』を上梓。Twitter(@regista13)

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