欅坂46、2年目の『欅共和国』で見せた圧倒的な進化 荻原梓がスケールアップした演出を徹底解説

スタイリッシュな黒スーツでクールに決める「後半」

 「東京タワーはどこから見える?」で再び欅坂46のターンに戻る。タイトな黒スーツでスタイルの良さが際立つ土生瑞穂や、髪を染めたことでより一層目立っていた鈴本美愉、しなやかな佐藤詩織のソロダンスなど、見どころは書き切れない。「エキセントリック」「AM1:27」「語るなら未来を…」とクールなダンスナンバーを畳み掛けることで観客の目線はステージに引き込まれていく。そして「風に吹かれても」の間奏明け〈風に吹かれても何も始まらない ただどこか運ばれるだけ〉で大量の紙吹雪が風に舞うと、会場のテンションは最高潮に。休みなくラストスパート5曲を踊り切り、締めの”集団行動”のパフォーマンスを経て本編が終了。夏の野外、日の暮れかけた会場は興奮と熱気で渦巻いていた。

 さて、今の欅坂46を語る上で触れないわけにはいかないのが平手友梨奈についてだ。年始に右腕の負傷が発表されて以降、グループ活動から距離を置いていた彼女が、このイベントで半年ぶりにファンの前で完全復帰した。正直に書くなら、3日間を通して彼女はベストのパフォーマンスを見せなかった。見せなかった、見せられなかった、どちらなのかは本人に聞かなければ分からない。しかし、彼女の状態は日を追うごとに改善され、最終日には非の打ち所のないものとなっていた。

 彼女が踊ると途端に会場はひとつになる。熱狂的にコールに励んでいたファンも、徐々に食い入るように動きを止めて、やがて釘付けになっている。彼女の表情がスクリーンに映し出されると、現場にうねりが起きる。彼女の表情ひとつひとつの変化に、我々は目が離せなくなっている。

暗闇の中で光を巧みに用いながら魅せる「終盤(アンコール)」

 アンコール。「二人セゾン」から「キミガイナイ」「もう森へ帰ろうか?」と欅坂46の楽曲の中でもピアノが美しく鳴り響く3曲が披露される。辺り一面が真っ暗闇の中、天然リバーブの施された透明感のあるサウンドと青白い照明は、夜冷えした森林に溶け込み幻想的な空間を作り出していた。彼女たちはそこで、過去最高のパフォーマンスを見せる。スカートがひらりと宙に浮くシルエットすらも美しく、音とステージと彼女たちのダンスとが完全にリンクし、夜風に花びらが舞っているかのようだった。その後に平手がひとりで踊る時間がある(実際には映像だけが流される)。約2分間。ピアノとストリングスが鳴り響く中で見せた平手の柔らかな舞に、会場全体が息を呑んだ。反抗やロックなアイドルとして語られることの多い欅坂46のもうひとつの一面。すなわち、今にも消えてしまいそうなほど脆く儚い蝋燭の火のような表情を覗かせる彼女たちの姿だ。そんな欅坂46が、このアンコールの間は、存在した。月の光を受けて彼女たちは、やさしく輝いていた。

 一転して、「ガラスを割れ!」ではロックな一面を見せる。平手不在の期間中にグループを支えたメンバーたちと、キレッキレなダンスを踊る平手。最後の力を振り絞っている様子が画面越しに伝わる。会場はもう一度ここで最高潮を迎え、曲を終えるとメンバーたちは颯爽と舞台から捌けていき、ライブ終了。最終日にはサプライズで8月15日に発売予定の7thシングル『アンビバレント』をお披露目し、『欅共和国 2017』のDVD/Blu-ray化も発表された。”出国”していくファンたちの満足感たっぷりな表情がとても印象的であった。

 野外ならではの演出の数々、意図を持った楽曲選び、両グループの共演、様々に表情を変化させるステージング……。実に多くのことに挑戦した『欅共和国 2018』は、その場に居合わせたファンにとって忘れられない思い出になったに違いない。

課題点はある

 ただし、課題がないわけではない。例えば、3日目の「エキセントリック」で長濱ねるが呟く決めゼリフ〈もう、そういうの勘弁してよ〉でハウリングが起きてしまった。観客の意識が一点に集中する箇所なだけに非常に惜しいミスであったが、おそらく彼女の声の小ささを見越してPAがマイクの音量を必要以上に上げてしまったために起きたのだと考えれば、(あくまでメンバーの個性やライブでの表現を重視した上で)”声量”や”音響面”は今後の課題と言えるだろう。

 また、”初日の完成度”も課題と言えそうだ。1日目は映像の乱れ、衣装トラブル、体力面などが目に付いた。徐々に改善されていったポイントなだけに、初日に足を運んだファンには公平さの欠ける出来であった。

 もう一つ。今回、けやき坂46の出番の少なさについて残念がっていたファンも少なくない。両グループが揃う『欅共和国』というイベントそのものの意義について考えたとき、1年間で大きく成長を見せた彼女たちが昨年とほぼ同等の扱いであったことには、少し物足りなさも感じてしまった。

 8月には全国アリーナツアーが控えている彼女たち。そして来年も『欅共和国』を”開国”するのであれば、こうした課題点を修正しながら、今まで見せなかった新たな一面を見せてもらいたい。

(写真=上山陽介)

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

欅坂46公式サイト

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