フジロック2018、要注目の洋楽アクトは? 小野島大が50組を徹底解説
今年も暑い夏がやってきて、フジロックの季節になりました、タイムテーブルも発表され、最終ラインナップも確定しています。例年通り、洋楽の主な出演者を紹介しましょう。かなり数が多いので注意。
27日(金)
[Green Stage]
N.E.R.D.
今や米国ポップミュージックの最重要人物のひとり、ファレル・ウイリアムス率いるN.E.R.D.の10年ぶり来日はフジロックになりました。2日目のケンドリック・ラマーもそうですが、従来であればサマーソニックで呼びそうなイメージがあるヒップホップ〜ブラックミュージックの気鋭アクトをグリーンステージのトリに抜擢したのは、フジロックの今後の方向性を示していると言えるでしょう。いつまでもロックだけがポップミュージックの王様ではない。そうした世界的なポップミュージックの潮流の中で、当然の判断だと思います。7年ぶりの新作『No_One Ever Really Dies』を引っさげてのステージ。派手に盛り上げてくれそうです。
N.E.R.D & Rihanna - Lemon
Years & Years
俳優としても活躍する美形ボーカリスト、オリー・アレクサンダーを中心とする英国シンセポップ3人組。2015年に発表した1stアルバム『Communication』が全英チャート1位となり、先ごろ3年ぶりの新作『Palo Santo』がリリースされたばかりです。フジロックへの出演は2016年以来2度目。2年前よりもスケールアップした、アイドル性もたっぷりの華やかなステージを展開してくれそう。
[White Stage]
Post Malone
個人的に今回のフジロックでもっとも楽しみにしているひとつが、このポスト・マローン。NY生まれテキサス在住の弱冠23歳。新作『beerbongs & bentleys』が全米チャート3週連続1位、収録された18曲すべてがチャートインするという前代未聞のセールスを上げ、エミネム以来、もっとも大きな成功を収めている白人ラッパーという評価を揺るぎないものにしています。メロディラインの美しさ、声のまろやかさ、フロウのしなやかさで、ポップでメロウでアーベインなR&B/ヒップホップの理想郷を描いています。滑らかなボーカルも、ソフィスティケイトされたアレンジも、完成度の高いトラックメイクも、ディテールまで神経の行き届いた音響デザインも、あらゆる点でレベルが高い。ロックで自己形成した世代が、ロック以外の表現手段を指向している一例でしょう。N.E.R.D.と出番が重ならない主催者の配慮も嬉しいところ。
Odesza
シアトル発の2人組Odesza。各ストリーミングサービスでの再生回数、ライブの動員など、今やThe Chainsmokersと並んで最も勢いのある旬なエレクトロニックミュージックのユニットと言えるでしょう。イケイケのダンスミュージックというより、憂いを含んだメロディアスで広がりと奥行きのある音楽性が特徴。なにより曲が素晴らしいです。新作『A Moment Apart』を引っさげての登場。海外のフェスではメインステージのヘッドライナー級のアクトなので、この規模で見られるのはラッキーかも。20時20分と暗くなってからの登場なので、照明の美しさも堪能できそうです。
Albert Hammond Jr.
ご存じStorokesのギタリスト。先ごろ4枚目のソロアルバム『Francis Trouble』をリリースしたばかりです。「インディロック」の枠にとどまらない、小細工のないオーセンティックなロックンロールの魅力を堪能しましょう。
Parquet Courts
2014年のフジロックで、初期WIREをさらに激しく、カッティングエッジにしたようなイキのいい演奏が、拾いものだったブルックリン拠点の4人組。レッドマーキーからホワイトステージへ、順調に出世しての登場です。デンジャー・マウスがプロデュースした新作『Wide Awake!』は、ポストパンク〜ローファイガレージ的なスタイルはそのままに、80年代のアメリカのパンク/ハードコアに通じる骨太で泥臭いギターロックへと変化、ファンキーなラテンファンクやダビーなエフェクト、60年代サイケロックなど多様性が増し、アート性の高いオルタナティヴロックへと進化していました。ライブでその成長を確認しましょう。
[Red Marquee]
Mac DeMarco
カナダ出身のシンガーソングライター。3年ぶり新作『This Old Dog』を引っさげての登場です。どことなく細野晴臣にも通じるような、肩の力の抜けたゆるやかな歌と演奏が、暑い夏の日にぴったり。ライブでは性格の良さが滲み出るようなチャーミングなパフォーマンスが魅力です。できれば事前に歌詞を覚えていって、一緒に歌いたいところ。
Tune-Yards
カリフォルニア拠点のメリル・ガーバスを中心とするインディポップユニット。最新作『I can feel you creep into my private life』を引っさげての登場です。抜群のポップセンスと自由奔放な実験精神、ソウルフルで力強いボーカルは魅力たっぷり。個人的には惜しくも解散したCibo Mattoの後継者としても期待したいところ。社会性の強い歌詞も注目です。
Let's Eat Grandma
英国の10代女子によるアートポップデュオ。先ごろ2ndアルバム『I'm All Ears』をリリースしたばかりです。なかなかにフォトジェニックな2人ですが、ただ可愛いだけではなく、どことなくオフビートで、クラシカルでゴシックなニュアンスも感じ取れる奇妙な感覚のアートポップ〜インディポップを演奏します。長髪のアンニュイな美少女2人が並んでのパフォーマンスも見どころ。フジロックをきっかけに、これから日本でも人気が出そうです。
[Planet Groove]
Jon Hopkins
本サイトの新譜キュレーション連載(Oneohtrix Point Neverの新アルバムはボーカルにフィーチャーした傑作に 小野島大の新譜10選)でも新作を取り上げたロンドンのプロデューサー。Coldplayの『美しき生命』に楽曲提供/プロデューサーとして参加したことで知られるようになりましたが、なんといっても彼の評価を決定的なものにしたのが2013年発表の大傑作『Immunity』でしょう。今年になって5年ぶりの新作『Singularity』を発表。絶賛されています。圧倒的なスケールと深度で鳴らされるシネマティックでドラマティックなアンビエント〜ドローン〜エレクトロニカは圧巻。単独公演も決定していますが、深夜の苗場で聴くジョン・ホプキンスは、聴く者をこことは違う別世界に誘ってくれるに違いありません。
Peggy Gou
韓国生まれ、ベルリン在住のDJ/プロデューサー。ディープハウス〜テックハウスで、新旧に偏らない幅広く非常にバランスのとれた柔軟な選曲が持ち味で、場を読む力に長けているので、誰でも楽しめるのではないでしょうか。最近になって<Ninja Tune>からEPも出しています。
HVOB
オーストリアの男女エレクトロニカデュオ。昨年3枚目のアルバム『Silk』をリリースしたばかりで、来日はこれが初めて。ダークでテッキーなミニマルディープハウスですが、ライブではドラムスをフィーチャーしてよりパーカッシブでダイナミックなサウンドを展開しているようです。アンニュイな女性ボーカルがクセになる感じ。深夜のレッド・マーキーにはぴったりな感じです。
[Field Of Heaven]
Marc Ribot's Ceramic Dog
ラウンジ・リザーズに始まり、エルヴィス・コステロ、トム・ウェイツ、カエターノ・ヴェローゾ、矢野顕子など八面六臂の活躍を見せるNYのギタリストのリーダーバンド。先ごろ5年ぶりとなる3rdアルバム『YRU Still Here?』をリリースしたばかりです。御年64歳のベテランとは思えぬエネルギッシュでノイジーでハードコアな『NO NEW YORK』直系のやさぐれたバンドサウンドが強烈にかっこいい。これは絶対ライブが盛り上がるはずです。
The Teskey Brothers
オーストラリアの6人組。昨年1stアルバム『Half Mile Harvest』をリリースしたばかり。実にオーソドックスでオールドスクールなサザンソウルスタイルを演奏します。世界各地のフェスで腕を鍛えた実力派。ボーカルがかなり強力で、言われなければ20代の豪州白人青年とは思えないディープで渋い音楽をやっています。いかにもフジロックらしい選出。同日深夜のクリスタル・パレス・テントにも出演。
Esne Beltza
スペインはバスクの9人組。2009年にデビュー、同年フジロックに出演しており、今回はそれ以来の来日です。エネルギッシュで哀愁あふれるミクスチャーミュージックを演奏します。ライブで盛り上がらないはずがないストリートミュージックの最高峰。28日のホワイト・ステージにも出演します。
[CRYSTAL PALACE TENT]
Nathaniel Rateliff & The Night Sweats
ミズーリ出身のナサニエル・レイトリフ(Vo/Gt)率いる8人組。フォーク、R&B、ブルーズ、ゴスペルなどルーツアメリカ音楽に根ざしたベーシックなロックを演奏します。むさくるしい風貌ですが音は良い。最新作は名門<Stax Records>から出た『Tearing at the Seams』。PVを見れば、このバンドがどこに支持基盤を置いているのかよくわかると思います。28日のフィールド・オブ・ヘヴンにも登場。
[苗場食堂]
Interactivo
キューバの大所帯バンド。キューバ伝統音楽にファンク、ジャズ、R&Bなどをミクスチャーしたご機嫌なダンスバンドです。年寄りが伝統音楽を型通りにやっているようなものではなく、もっとビビッドで開放的。不定形でそのつどメンバーが入れ替わるあたりは「キューバの渋さ知らズ」というところ。果たして苗場食堂の狭いステージに何人載るんでしょうか。29日のフィールド・オブ・ヘヴンにも登場しますが、苗場食堂の方が客席と近い分盛り上がりそうです。28日のジプシー・アバロン、29日のクリスタル・パレス・テントには、このバンドのメンバーによる、よりキューバ伝統音楽に根ざしたプレイをする別バンド、Cubana Fiestaも出演します。またメンバーのロベルト・カルカセースはトリオ編成のバンドで28日カフェ・ド・パリ に出演。
Hothouse Flowers
なんとびっくり、アイルランドの至宝Hothouse Flowersが苗場食堂に登場です。通算6作目、12年ぶりの新作『Let's Do This Thing』を引っさげ、17年ぶりにフジロックに登場。デビュー30年、U2のボノに「世界一のホワイトソウルシンガー」と評されたリアム・オ・メンリィの一向に衰えぬソウルフルなボーカルと、情熱と誠実と知性に溢れる演奏は、さらに滋味とパワーを増しています。苗場食堂では庶民のストリートバンドとしての彼らの底力を堪能できるでしょう。もっとゆっくり見たいという人は日曜日のフィールド・オブ・ヘヴンで。31日火曜日には東京で単独公演もあります。
[木道亭]
Nick Moon
UKのポスト・ロック/エレクトロニック3人組Kyteのフロントマンがソロ活動を開始。アルバム『Circus Love』を引っさげてのフジロック登場です。歌、演奏、レコーディングからミックスに至るまで、すべてがニック1人の手によって作られた同作は、Kyteの作品よりもダンサブルでポップで軽快で明るく開放的な作風でした。メランコリックでドリーミーでエモーショナルなメロディとサウンドは健在。ASIAN KUNG-FU GENERATIONの全国ツアーに同行し、日本文化をたっぷり吸収した直後のフジ登場。しかも木道亭の出演とは面白い。フジはここにしか出ないので、ファンには見逃せないライブになりそうです。
[PYRAMID GARDEN]
Ray Barbee
カリフォルニア在住のプロスケーターであり、フォトグラファーであり、ギタリストでもあるレイ・バービー。米西海岸文化を象徴するような人物です。何度も来日していて日本にもなじみ深い人ですね。13年ぶりのアルバム『Tiara for Computer』を引っさげての登場です。チルアウトしたライトなインストジャズを得意としますが、トミー・ゲレロやTortoiseのメンバーも参加した同作は、ロック〜エレクトロニカの要素の強い作品でした。長い日本ツアーの最後にフジロックに出演します。
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