SHINee「Good Evening」振付は“余白”がポイント? 感情のうねりを表現する菅原小春の手法
MVに愛らしいキツネやメンバー以外の謎の人影が登場するなど、ファンタジックかつ意味深な世界観が話題を呼んでいるのが、4人体制となってカムバックしたSHINeeの新曲「Good Evening」。この曲での椅子を使った特徴的なダンスは、世界で活躍する日本人ダンサー/振付師・菅原小春によるものだ。26歳の若さながら、過去にもさまざまなK-POPアーティストの振付を手がけている菅原。今回はそのキャリアを振り返りつつ、彼女の振付の特徴について考察してみた。
ダンス修行のために渡ったLAから帰国後の2013年に、やはりダンサー/振付師である仲宗根梨乃やJae wonと共作したのが、少女時代の「Love&Girls」だ。髪を洗ったあとに手を洗う一連の仕草をキュートに再現した振付が“シャンプーダンス”と呼ばれ親しまれた。
2013年の同時期に単独で振付を手がけた2NE1の「FALLING IN LOVE」は、曲調に合わせたレゲエダンスの動きや、2NE1が得意とするセクシーなウェーブダンスの動きを盛り込んだもの。近年の菅原のダンススタイルに比べるとかなりポップだが、現在にも共通するボディラインを強調するような大きめのムーブが、すでにこの頃から見られる。
ちなみに先述の仲宗根梨乃(少女時代、SHINeeほか)やs**t kingz(東方神起、EXOほか)らK-POPアーティストとコラボしている日本人の振付師も多いが、これは人気アーティストを多く抱えるSMエンターテインメントが、欧米を含む海外の振付師とのコラボに意欲的なことが関係していると思われる。
そんな中でも菅原の、感情のうねりを特定のジャンルにとらわれないダンスで表現するスタイルは早くから注目されており、少女時代のバックダンサーとして活躍していた経歴も。菅原とシングル「Unrock」(2015年)MVやライブでも共演経験があり、彼女とともに『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日、2017年10月29日放送回)に出演した三浦大知は、そのスタイルを「感情表現を100%乗せるダンス」だと語り、リスペクトしていると話していた。
そんな彼女のスタイルに共鳴したのが、SHINeeのボーカル/リードダンサー・テミンだ。2人は、テミンのソロアルバム収録の「さよならひとり」(2016年)で初コラボ。インタビューでは菅原の振付は「精神的な部分での集中力が普通よりすごく必要」だったと語っていたが、難易度の高いその振付をしっかりと踊りこなしている。
この曲を皮切りにテミンは「Flame of Love」「MOVE」(ともに2017年)で菅原とコラボ。シャヲル(SHINeeファンの愛称)にとってはおなじみの存在となったが、満を持してSHINeeの振付を手がけたのが「Good Evening」なのだ。この曲については、自身のラジオ番組『SUGAR WATER』(J-WAVE、6月15日放送回)で、ダンススキルの高いSHINeeが踊りまくる振付も悪くはないが、“メンバーが自分たちに向かって何かを問いかけながら、SHINeeがSHINeeに向けて踊るようなものにしたかった”と解説。さらに端正なビジュアルの彼らは“座っているだけでも絵になる”ことから、座ったり動きの少ないパートを含めたという。