『Collagically Speaking』インタビュー
クリスチャン・スコットに聞く、R+R=NOW結成の経緯 「全員がこの時代のバンドリーダーだ」
「メンバー各人が違った場面でリードしていた」
ーー今回のアルバムの制作にあたり、音楽面で特に留意した点はなんでしょう?
クリスチャン:トランペットの役割をひっくり返そうとしたことだね。僕のつくる音楽ではトランペットがメインの声になるわけだけど、このプロジェクトにおけるトランペットは僕たちがつくる音楽という環境の一部にすぎなかった。そういうなかでトランペットを使う方法を探り出すのがすごく楽しかったよ。いろんなペダルで実験したり、いつもとは違う音のつくり方を試してみたりね。リーダーとして音楽の方向性を決めるのではなく、自分を環境の一部のスペースに身を置くことは、コンポーザーとしてすごく楽しかった。いつもとはまったく違った方法で音楽をつくることができたからね。
ーーR+R=NOWはメンバー全員が優れたプロデューサーでもあるわけですが、実際の楽曲制作はどのようなプロセスで行なっていくのでしょう?
クリスチャン:このプロジェクトのなにが素晴らしかったって、それぞれのメンバーが違った場面でリードしていたってところだ。人によってスキルセットも違えば、なにかをやっているときの快適度も違う。だから、メンバー全員が違った場面でリードしていたんだ。このバンドのメンバーは、全員がこの時代のバンドリーダーだ。僕たちは自分たちのバンドを築き上げ、人々に音楽を愛してもらう環境をつくり出すために、多くの苦労をしてきた。だから、バンドリーダーのモードから一歩離れてただ友達と音楽をつくることができたのは本当に楽しかった。誰もエゴを前面に出すことなく、音楽に取り組んでいたよ(笑)。全員が作品に貢献しようと、お互いに協力しあっていたんだ。だから、バンドリーダーとしての音楽づくりとはまったく違う気分だった。すごく自然なかたちで、メンバー各人が違った場面でリードしていたんだ。
ーーそのなかであなたがリードした曲は?
クリスチャン:僕が作曲した曲が1曲だけあって、それは僕のアルバムにも収録する予定の「The Night in Question feat. Terry Crews」。最初にこの曲を書いたとき、メロディからなにから僕の頭のなかで構想が出来上がっていたんだけど、それをバイブ(曲の雰囲気)だけに留めることにしたんだ。つまり、メロディを入れることなく曲の中心(焦点)をつくろうとしていた。あまり多くの情報を曲に入れることなくリスナーを惹きつけて、うまく感情移入させるにはどうしたらいいかってことを考えていた。すごく楽しかったよ。この曲が僕の次のアルバムに収録されることになったら、まったく違ったものになるからね。ぜんぜん違ったバージョンになるよ(笑)。そもそも、僕のアルバムに入るバージョンの方を先にレコーディングしたんだ。だから、この曲をやる前にどんな音なのかはみんなが知っていた。僕たちは曲の特徴とアイデアを取り入れつつ、それをひっくり返してまったく違った曲(バージョン)に仕上げたってことだね。ここでは前から音楽をリードするのではなく、後ろから音楽をリードしてみた。こういった感じで実験的な演奏をすることができたのが、今回のプロジェクトでいちばん楽しいことだったね。そんな演奏をしていたスタジオにテリー・クルーズがいたっていうのも、僕のレコーディング・キャリアのなかでもすごく愛にあふれる美しい瞬間だったと思う。
ーーテリー・クルーズが参加した経緯を教えてください。
クリスチャン:テリーはロバートと友人だったと思う。彼がどういう経緯で参加することになったのかはわからないけど、ロブのセッションですごく楽しかったのは、スタジオがたまり場になっていたことだね。ドン・チードルが遊びに来たかと思えば、テリー・クルーズやデイヴ・シャペルもやって来たり。誰がスタジオに遊びに来るか、想像もつかなかった。あれは楽しかったな。レコーディングセッションって、人によってやり方がまったく違うんだ。僕の場合は、すべてをシャットダウンしてレコーディングする。スタジオのなかでは、曲を完成させようと常に働いているんだ。今回のように事前に考えていた曲を完成させるためにスタジオに入るのとはまったく違った環境に身を置いて、その場の雰囲気やエネルギーに任せて音楽をつくるのはすごく興味深かったし楽しい経験だった。
ーー今回のアルバム『Collagically Speaking』をつくり上げたことによってあなたが得た最大の収穫はなんでしょう?
クリスチャン:僕たちは全員、すごくタフでハードな男たちだ。それなりの苦労や経験を重ねてきた僕たちを見て、アメリカ出身のハードなブラックガイズって印象を持つのは簡単だと思う。こうした環境を築き上げながら音楽をやろうとしている僕たちを「ハード」って言葉で片付けるのは簡単なことだけど、ミュージシャンがここまでたくさんの「愛」をこめて演奏している音楽的な環境は珍しいと思うよ。全員が6フィート以上の黒人男だけど、その愛と敬意の量はハンパじゃない。お互いに対してだけでなく、音楽に対しても愛と敬意を持っているからね。スタジオで生まれた愛、僕たちの心のなかで生まれた愛こそが、僕にとってはこのプロジェクト最大の収穫だったと思ってる。アイデアを分解することでまた新しいアイデアをつくり上げて、さらにそれを美しいものにするのは素晴らしいことだったよ。そんなふうに音楽をつくることができて本当に楽しかった。みんなお互いに学び合うことができたしね。15年前に学校は卒業してるから(笑)、こうした学びの環境に身を置くことができてよかった。それもこのアルバムに参加したことで得た収穫のひとつだね。
(取材・文=高橋芳朗/アーティスト写真撮影=Todd Cooper)
■来日公演情報
・ビルボードライブ東京
2018年8月28日(火)
1st ステージ 開場17:30 開演18:30
2nd ステージ 開場20:30 開演21:30
billboard live公式HP
・ビルボードライブ大阪
2018年8月29日(水)、30日(木)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
billboard live公式HP
・第17回東京JAZZ
R+R=NOW 出演日:2018年9月1日(土)
場所:NHKホール
※詳細は下記にてご確認ください
東京JAZZ公式HP
■リリース情報
R+R=NOW『コラージカリー・スピーキング』
発売日:6月15日(金)
価格:¥2,700(税込)
CD
iTunes
Apple Musicアルバム・トレイラー動画
〈収録内容〉
01. チェンジ・オブ・トーン Change Of Tone
02. アウェイク・トゥ・ユー Awake To You
03. バイ・デザイン By Design
04. レスティング・ウォリアー Resting Warrior
05. ニーデッド・ユー・スティル feat. オマリ・ハードウィック Needed You Still feat. Omari Hardwick
06. カラーズ・イン・ザ・ダーク Colors In The Dark
07. ザ・ナイト・イン・クエスチョン feat. テリー・クルーズ The Night In Question feat. Terry Crews
08. リフレクト・リプライズ feat. スターリー Reflect Reprise feat. Stalley
09. 彼女=現在 feat. アマンダ・シールズ HER=NOW feat. Amanda Seales
10. レスポンド Respond
11. ビーン・オン・マイ・マインド feat. アンバー・ナヴラン Been On My Mind feat. Amber Navran
12. リフレクト・リプライズ - MC Rob G ヴァージョン / Reflect Reprise - MC Rob G Version ※
※日本盤のみボーナス・トラック
■関連リンク
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■R+R=NOW:プロフィール
R+R=NOWのメンバーは、『ブラック・レディオ』でジャズに革命をもたらせたロバート・グラスパー、ケンドリック・ラマーのグラミー受賞作『To Pimp A Butterfly』などを手掛けジャズとヒップホップを繋ぐ現代最重要プロデューサー/サックス・プレイヤーのテラス・マーティン、ロバート・グラスパー・エクスペリメントやブルーノート・オールスターズのメンバーでもあるデリック・ホッジ、エスペランサのバンドで活躍しロバート・グラスパー・エクスペリメントにも起用されたジャスティン・タイソン、カリスマ・トランペッターの/チャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー、そして「Don’t Worry, Be Happy」で有名なボビー・マクファーリンを父に持ち、DJ、ビートボクサーからプロデューサー、シンガーと多彩な顔を持つテイラー・マクファーリンという、豪華6人。
バンド名のR+R=NOWとは「Reflect+Respond=NOW」を意味しており、「時代を反映させることはアーティストの責務である」というニーナ・シモンの有名な言葉にインスパイアされて生まれた。この新グループについてグラスパーは、「全員それぞれのサウンドは全く異なるが、俺たちは皆、同じコンクリート・ガーデンからやってきた。とても誠実で、流動的なサウンドになる。ヒップホップ、EDM、ジャズ、時にはレゲエも聴こえるような。お互いをとてもリスペクトしているから、俺たちは常に相手にパスを出すことができるんだ」とコンセプトを説明している。
アルバムには俳優からラッパー、DJ、ヴォーカルなど多彩なゲストも参加している。
(ゲスト・メンバー)
オマリ・ハードウィック:Omari Hardwick(俳優:50 cent製作総指揮の米TVドラマ『POWER/パワー』主演など)
テリー・クルーズ:Terry Crews(元NFLアメリカン・フットボール選手、現俳優:米ドラマ『ブルックリン・ナイン-ナイン』、映画『エクスペンダブルズ』などに出演)
スターリー:Stalley(ラッパー:リック・ロスに見出されたラッパー35歳)
アマンダ・シールズ:Amanda Seales(コメディアン、女優、DJ)
アンバー・ナヴラン:Amber Navran(ムーンチャイルドの女性ヴォーカル)
ゴアペレ:Goapele(女性シンガーソングライター)
ヤシーン・ベイ:Yasiin Bey (fka Mos Def)(ヒップホップ・アーティスト、俳優、モス・デフ)