作詞家zopp「ヒット曲のテクニカル分析」第17回

『関ジャム』出演 zoppが語る、結婚式ソングの作詞法「テクニックはない、というのが特徴」

「嵐の『One Love』は“ザ・普遍ソング”」

――番組では結婚式ソングの目線が、「男→女」だったのが「女→男」、「女→女」と年代によって変わっていったという話がありましたが、今と昔で歌詞に違いはありますか。

zopp:今は昔と違って、結婚適齢期みたいなのもなくなってきている。何歳で結婚するのが普通、とか普通じゃない、というのもないですし。そういう社会の潮流もあって、結婚式ソングの歌詞を誰にフォーカスしていいのかが分かりづらくなっているのかもしれません。普遍的な歌詞や誰もが共感できる歌詞を書くことが難しい時代になったのを感じます。シンガーソングライターは超個人的な歌詞を書けるけど、アイドルは普遍的な歌を歌い続けているので大変だなと思います。最近はA面、表題曲に普遍的な物が少なくて、カップリングで普遍的な歌詞を歌って反応を探っている。昔は逆だったんですけどね。

――そう考えると、10年ほど前ではありますが、嵐の「One Love」は王道で、普遍的ですよね。

zopp:この辺りの時期から嵐が国民的アイドルに変わっていった。僕も仕事で、「○○」という曲を超えたい、とリクエストされる。売上を超えたい、作品の内容として超えたいというのは当たり前だと思うんですけど、歌詞の場合「何をもって超えるのか?」というのが難しいですよね。それでも「WISH」「Love So Sweet」に続いて大ヒットした「One Love」は本当にすごい。“ザ・普遍ソング”です。「愛を叫べ」は「One Love」との差別化も図らないといけないのが大変だったと思います。

――zoppさんなら、どんな結婚式ソングを書きたいですか。

zopp:非現実的なもの。昔観た『卒業』というダスティン・ホフマン主演の映画が、好きな人の結婚式に行って、彼女をさらうという内容で。そういうものを歌詞で表現してみたい。今はアイドルも現実的な歌を歌うようになっていますが、僕は、歌詞は憧れの、夢のある世界を書いている方ががいいなと思います。あとは親目線の歌詞も書いてみたいですね。綺麗事ではない、娘を嫁にいかせたくない父親の目線で。自分の周りで娘がいる人は、娘がどんな男を連れてきても絶対に認めない、って言うことが多くて(笑)。たぶん“お父さんあるある”なんだろうな、と。最終的には周りに説得されたて結婚を認めて祝っているんですけど、心の中では「なにくそ!」って思っている。しかも、自分が結婚する時に、妻の父親にしたことをされる、という。その葛藤を歌詞にできたら面白いと思います。すごくマイノリティな歌なんですけど、書いてみたいですね。男性が歌ってももちろん良いし、逆に女性が歌っても面白そうなので。

――今後の結婚式ソングは、王道の歌詞よりも目線を工夫したものが増えるのかもしれませんね。

zopp:そうじゃないと、これから先に受け継がれていかないような気がします。そもそも音楽以外のコンテンツも増えた現在、なにか大きな改革や分岐点がない限り、一般的なリスナーが90年代や00年代のように音楽に人生や時間を注ぐことはないと思うんです。今回の『関ジャム』のランキングに昔から歌われている曲が多くランクインしていたことからもわかるように、特に結婚式ソングはニッチで開拓しがたい分野だと思いますが、新しい視点を与えたいですね。

(取材・文=村上夏菜)

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