PassCodeの新たな挑戦作『Ray』はなぜ生まれた? 南菜生と大上陽奈子に聞く

PassCode、挑戦作『Ray』を語る

 PassCodeが、5月23日に約1年ぶりのシングル『Ray』をリリースする。同作の表題曲は、これまでのヘヴィでラウドな音楽性を保ちながら、疾走感のあるギターロックサウンドも取り入れ、アニメ『TO BE HEROINE』のオープニングテーマにも起用。あらゆる点において“挑戦”の楽曲に仕上がっている。

 リアルサウンドでは今回、南菜生と大上陽奈子にインタビューを行い、『ZENITH』や『Locus』といったアルバムから『Vans Warped Tour Japan 2018』といった大型フェスの出演など、前作シングル『bite the bullet』からの1年間と最新作について、じっくりと語ってもらった。(編集部)

「もっと、色んな人に好きになってもらえそう」(大上) 

ーー今回の『Ray』は、約1年ぶりのシングルですね。前回シングルの『bite the bullet』は、ホンジュラスでの配信ランキング1位が話題になるなど、PassCodeの海外進出における足がかりを作ったともいえる作品でした。

南:たしかに、海外のチャートでここまで聴いてもらえるようになったのは「bite the bullet」くらいからでしたね。当時はなんでこんなに色んな国で聴いてもらえてるんやろ? と不思議に思ってたんですけど。

大上:みんなで「タイトルに惹かれて聴いてもらったのかな?」って言ってたんですけど、『ZENITH』(2017年8月発売メジャー1stアルバム)も『Locus』(2018年2月発売再録ベストアルバム)もしっかりチャートに入ってたので、しっかりPassCodeというグループ自体が知られてるんだと嬉しくなりました。

ーーそうやって自分たちの音楽が国境を越えて聴かれるようになってくると、PassCodeとして目指していくものも変わったりしたんじゃないですか?

南:いえ、チャートに入って変わったというよりも、『ZENITH』を出したことが、グループにとって大きな変化だったと思います。

ーー『ZENITH』はガッツリと重たいミクスチャー/ラウドなロックが展開された、すごいアルバムでした。

南:PassCodeらしい、その時できたことを全部詰め込んで作ったのが『ZENITH』なんですけど、ツアーを回ると、やっぱりこのアルバムの曲がしっくりくるんですよ。改めて『ZENITH』はPassCodeらしさの塊みたいな作品なんだと実感しました。

ーーツアーはかなり熱量の高いものでしたが、あのアルバムを馴染ませていく過程は苦労したのでは?

南:アルバム自体、今までのインディーズ作がおもちゃ箱みたいな、色んな楽曲を詰め込んだ作品だったので、ここまで統一された音楽性で大丈夫なんだろうかと、発売まで不安ではあったんです。でも、結果的にグループはより強くなって、平地(孝次/サウンドプロデューサー)さんはそこまで見据えて作っていたのか、と驚きました。

大上:あと、ここまで長い期間をかけてアルバムの曲をやるという経験も初めてだったので、新鮮で濃い期間だったと思います。

ーーいち観客として見させてもらっているなかで印象に残ったのは、『ZENITH』の曲が入ってフロアの熱狂度がぐんと上がったことで。音楽の重さに合わせてフロアの熱さが上がったというか。

南:嬉しいです。『ZENITH』は楽曲自体もクオリティが高いですし、振り付けも全部ELEVENPLAYのKOHMEN先生にやってもらっていて、大きなステージ向けに仕上げてくれているんですよ。あと、セットリストの組み方も変わりましたね。フェスとかでも、ただ有名な曲をやるだけでなくて、全体のクオリティ重視でセットリストを組んだり、トータルで見たときのかっこよさとか、自分たちらしさを最優先するようになりました。

大上:『ZENITH』の曲は全曲自分たちで歌ってたり踊ってたりして、「PassCodeやってるぞ!」という気持ちがすごくあるんです。自分たちを象徴できる曲にも思えてくるんです。

ーーで、そのモードに合わせるように、『Locus』ではインディーズ時代の楽曲をハードなバンドアレンジで復活させたわけですよね。

南:『ZENITH』に合わせたというより、ライブでやってることに近づけた、というほうが正しいかもしれません。今まで出した音源とライブの間にあったものが埋まった感じといいますか。

大上:そう。『Locus』を発売する前は、インディーズの時の曲と、メジャー以降の曲をライブで並べてやるときに、楽曲の雰囲気に差が生まれたりして、結構悩んでいたんですけど、それが解消されて、セットリストの組み方も幅広くなりました。

ーーそれを対外的にドンと見せつけたステージが、先日の『Vans Warped Tour Japan 2018』だったわけですか。

南:ライブ前日は、「ロックバンドのお客さんばかりだから、かなり冷めた目で見られる」と思ってたんですよ。PAさんとも「あまりいつもみたいにガツガツ攻めずに、じっと見てもらうことを考慮したセットリストがいいんじゃないか」と話していたりして。でも、思っていたのとは真逆で、めちゃくちゃ盛り上がってくれたんです。多分私たちのことを初めて見たであろう人たちも、手を挙げたり声を出してくれたりしていたので、「これは攻めないわけにはいかない!」と思って、3曲目以降にギアを上げたら、どんどんお客さんが増えてきました。

大上:そうですね。後ろから来てくれる人が増えるたびに、「もっといけるぞ!」と思ってました。

ーーKORNにLimp Bizkit、ANDREW W.K.にSUICIDAL TENDENCIESなど……、ラインナップだけ見るとかなりアウェイに思えるようなメンツですけど、しっかりステージで自分たちの力を証明することができた何よりの証拠ですね。TwitterにはANDREW W.K.やZebraheadとの写真もアップしていましたが、彼らのような大物アーティストから何か感想をもらったりしましたか?

南:ANDREW W.K.さんには「ダンスがすごく良いね!」と言ってもらえて嬉しかったです。でも、みんな英語が喋れないので、通訳の方がいないと話しかけられても何を返していいかわからなくて……ひたすら「イェーイ!」って言ってた気がします(笑)。

大上:もう少し英語を話せるようにならなければ、と思いました(笑)。

ーーそんなライブも経て、「Ray」がリリースされるわけですが、現段階では表題曲しか上がっていないので、この曲についてじっくり掘り下げたいと思います。正直、聴いた段階ですごくびっくりしたというか、表題曲やアルバムのリード曲では、一切やってこなかったテイストの楽曲ですよね。ゴリゴリのハードロック/ラウド的なサウンドではなく、疾走感のあるギターロックですし、メロディもかなりキャッチーで。

南:いやー、最高ですよね。シングルの表題曲に持ってくるだけあって、強い楽曲ですし、何よりサビのメロがめちゃくちゃ良いんです。最初に聴いたとき、「平地さん天才!」と思いました。

大上:私も、最初に聴いてすぐに「早く歌いたい!」と思いました。あと、この曲は今までよりもっと、色んな人に好きになってもらえそうな気がしています。今までPassCodeの曲を聴かなかった人も、好きになってくれるんじゃないかなと。

南:シャウトも入ってるけど、そんなに重くないですよね。たしかに、ラウドが苦手だなと思ってる人でも入りやすいというか、聴いてみようかなと思ってもらえるかもしれませんね。

PassCode - Ray

ーーシャウトは歌メロと混ざり合っていて、すごく良い具合にマッチしているなと思いました。しかも、3分40秒くらいの尺なんですけど、あっという間に終わったと感じるくらい、スピードがあって。

南:ですよね。私はDメロがお気に入りで、私とひなこちゃんが歌っているところのメロディが、すごく良いんですよ。あと、この曲、PassCodeにしては珍しく、1番と2番の展開が同じなんです。

ーーたしかに。PassCode楽曲のほとんどは、2番で別の曲に切り替わったかと思うくらいの展開を用意してますよね。

南:だからこそ聴きやすさも生まれてるんだと思います。だけど、今回の楽曲で方向転換をしました、というわけではなくて。カップリングは『ZENITH』の路線ともいえるくらい、激しい曲なんです。

ーーそのあたり、平地さんからA面に「Ray」を持ってくる理由みたいなものは聞いたのでしょうか。

南:いや、リリースが決まったときには、もう「この曲」って言われました。

大上:めっちゃ前からありましたよ。だって、『ZENITH』ツアーの途中にはもうデモを貰ってましたもん。

南:ツアー中から「これがめちゃくちゃ良い」とメンバー内で話題にはなっていて、『Locus』に入るのかなと思ったんですけど、そこのタイミングでは音源化されなかったので、こうしてシングルとしてリリースできて嬉しいです。

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