米津玄師が「Lemon」に込めた想いとは? ドラマ『アンナチュラル』と特別ネット番組から紐解く

 「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」。これは、ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の主題歌「Lemon」を作るにあたって、米津玄師がドラマの制作サイドからオーダーされたことだという。

米津玄師『Lemon』

 現在、YouTubeにて公開されている特別ネット番組『米津玄師 ████████と、Lemon。』。同番組は、米津玄師と「Lemon」を“究明”するという内容で、ラジオ番組形式の米津へのインタビューが収められている。冒頭の言葉は、同番組内で米津が明かしていた「Lemon」制作秘話。「傷ついた人たちを優しく包み込むような曲」を意識して手がけたものの、出来上がった楽曲は「あなたが死んで悲しいです。という自分の気持ちをただひたすら吐露するだけの4分間になってしまった」ため、最初は「本当に正しかったのだろうか。ドラマの曲として成立するのだろうか。ものすごく自分勝手な曲を作ってしまった」という不安があったと語っている。

『米津玄師 ████████と、Lemon。』

 だが、自身が歌う「Lemon」が組み込まれた『アンナチュラル』を観るたびに、「本当にこの曲しかないんじゃないかな」と思うようになったのだとか。『アンナチュラル』の主題歌は「Lemon」しかない。米津自身がこれほどまでに自信が持てるようになったのは、ドラマ内で「ドンピシャのタイミングで流してくれる」からだとも明かしている。

 3月4日に放送されたラジオ特番『米津玄師×野木亜紀子アンナチュラル対談』(TBSラジオ)では、『アンナチュラル』で演出を務める塚原あゆ子にアンケートを取っていた。そのアンケートで塚原は、「主題歌をどこで流すかというのを、本当に綿密に考えながら編集している」とコメント。この言葉から、「Lemon」はただの主題歌ではなく、セリフのように『アンナチュラル』の一部となっていることがうかがえる。「Lemon」はまるでスパイスだ。物語の中に溶け込んで、絶妙に混ざり合う。そして最終的な味を整え、物語をより濃く彩る。だからこそ、ドラマ内で<夢ならばどれほどよかったでしょう>という米津の声が流れてきた瞬間に、これまで内側に留めていた私たち視聴者の感情は刺激され、外へと溢れ出していくのだ。

 また、米津は「Lemon」のMV内で“ハイヒールを履いている理由”についても説明しており、“二人にしかわからない何か”を表現したかったと話している。「誰にもわからないようなものを、周りの目など気にせずに、100パーセント愛してやるっていう。それがものすごく美しいことだと思った」。だから、MV内で登場する米津は、“目には見えなくなってしまった女性”と同じハイヒールを履いているのだろう。現代の日本では、ハイヒールは女性が履くものという考え方が一般的である。そんな中で、男がハイヒールを履けば、奇異の目で見られることも少なくない。だからこそ、“ハイヒール”はわたしとあなた以外にはわからない特別なもの。ハイヒールというアイテムひとつで、”あなたはもういなくなってしまったけれど、わたしはあなたとの共通する思い出を今でも大切にしています。あなたと共に歩んでいきます。と伝えているのだろう。そう、あなたは今でもわたしの道しるべ。<今でもあなたはわたしの光>なのだ。

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