04 Limited Sazabysが語る、結成10周年での“原点回帰”と同世代バンドへの意識
04 Limited Sazabysがシングル『My HERO / 夕凪』をリリースする。
メロディックパンクをルーツにライブハウスで支持を広げ、名古屋から全国区に人気を広げてきた彼ら。今年結成10周年を迎えたバンドが新作を作るにあたって意識したことは「原点回帰」だという。
「My HERO」はドラマ『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』(テレビ東京)のオープニングテーマとして書かれた爽快感あふれるツービートのナンバー。「夕凪」はバンドの武器とも言える日本語の響きを活かしたエモーショナルな一曲だ。
動員やセールス面ではいまや同世代のバンドたちのトップクラスとなった彼らは、今、何を見据えているのか。自身のルーツやキャリア、そして世代やシーンについて、語ってもらった。(柴那典)【最終ページにプレゼント情報あり】
「幸せだけど、優勝した記憶がない」
――今年で結成10周年ということですが、一つの区切りのような感覚はありましたか。
GEN:そうですね。10年もやってきたんだなって。でも気付いたら10年経ってたという感じなんで、今年で30歳ということの方が個人的には節目の感じがします。
――みなさん、同い年ですよね。30代に突入するってどういう感慨なんですか。
GEN:時間が経ったなって感じですね。感覚的には始めた頃とあんまり変わってないので。でも、先輩を見ていると格好いい30代の人、40代の人がたくさんいるんで。わりと安心して年をとれるなって思うんですけど。
KOUHEI:自分のTwitterで「今年30になる僕」って打ってみた時に「30ってなんだろう」みたいなことは思いました。よくテレビやニュースで名前のあとに「(30)」ってあるじゃないですか。オリンピック選手を見ても「同世代か」って思うし。「いつまでもガキでおれんな」っていう感じもある。20代はやんちゃしててもよかったかもしれないけど、30代は尖っていてももっと大人にならなければいけないのかなって思ってます。
RYU-TA:ずっと子供の心のままやってるんですよね。仕事であるのはもちろんなんですけど、まだ遊びの気持ちのほうが強いので、そこをこれからどうやっていくのかは考えていかなければいけないなと思います。あと、体力もどんどん落ちていくので、そこは自分で鍛えていかなきゃと思いますし、悩むところも増えてきたかなって。
HIROKAZ:自分も気持ち的には変わらずに生きてきたし、先輩も40代後半になってもみんな意外と変わらないな、って。ただ、自分が想像していた30歳にはまだまだなれてない気がしますね。
――フォーリミは、いい意味で世代感を意識して活動しているイメージがあるんです。同世代ともライバルでもあり共闘している仲間でもある感じある。そういう意識はありますか。
GEN:僕らは意識しますね。同世代が一番リアルに悔しかったり羨ましかったりする感情が芽生えるので。負けたくないって気持ちになりますし、そう思わせてくれるのはすごいモチベーションに繋がることです。たとえば今のバンドの現状でも、昔の感覚だったらすごく満足してたと思うんですけど、満たされないものがある。それはきっとWANIMAやブルエン(BLUE ENCOUNT)、後輩だったらマイヘア(My Hair is Bad)とか、いろんなバンドが活躍しているし、曲もライブも本当にいいからで。そうやって刺激がもらえる存在がいるのは本当に恵まれてると思います。
――人気もライブの動員もどんどん増えているわけですが、満足はしていない、と。バンドの現状はどう捉えているんでしょう。
GEN:なんというか、幸せなんですけど、優勝した記憶がないんですよね。ずっといい感じなんですけど、一度も1位をとってない。何が優勝で、何が1位かはわからないですけど(笑)。
ーーそうですよね。今の時代、別にCDのセールスが1位って言われてもそれがどうしたっていう時代でもあるし。
GEN:だから、模索してるのかもしれないですね。昔だったら何万枚売るとか、何位を取るとか、どこでライブをやるとか、そういう目に見えた目標があった。もうそこじゃないところになってきている感じがしますね。完全に無敵なライブをして、そこで1位になれば僕は満足できると思うんですけど。もちろん自分ではいいライブはしているつもりなんですけど、例えばホルモン(マキシマム ザ ホルモン)とか「くそ、勝てないな」って思わせてくれる先輩もいるし。マイヘアとかもすごくいいライブをしてるんですよ。そういう相手にも僕らが全然勝ってる、無敵だって思えたらちょっと満足できるのかもしれないですけど。でも、負けてるつもりはないけど、勝ってるなんて思えないので。
「10周年だからこそ初期衝動を取り返す」
――そういう現状を踏まえて『My HERO / 夕凪』という新作シングルの話を聞ければと思うんですけど。これはバンドにとってどういう位置づけのシングルになったんですか?
GEN:10周年って、ベテランとか大御所みたいな感じがするじゃないですか。貫禄でてきたな、みたいな。でもそれもなんかイヤなんですよ。まだ貫禄みたいなもので戦いたくないというか。10周年だからこそ初期衝動を思いだそう、取り返そうというのがテーマですね。
――では、改めて、バンドが始まった頃の初期情動はどういうものだったのかを教えてもらえてますか。
GEN:僕らは10代の頃、いわゆるメロコアと言われている音楽に心を打たれまして。僕だったらlocofrankだったりdustboxを初めて聴いたときにピンときたというか。ここがこうだから格好いいって説明できなくて、本当に瞬間的に「かっけー!」って思わせてくれた。そういうものを今の僕らが今の若い世代たちに思わせたいなって気持ちですね。
KOUHEI:僕もGENと一緒で、locofrankとかdustboxとかOVER ARM THROWとか、ハイスタ(Hi-STANDARD)にもろ影響を受けた世代のバンドに影響されたって感じです。「なんなんだ、この音楽は」っていう感覚で。俺、いまだに覚えてるんですけど、初めてライブに行った時に、最前列で柵にしがみついてずっと立ってたんですよ。普通に考えたらモッシュとかダイブとか手をあげたりすると思うんですけど。全部がヤバすぎて、圧倒されるとこうなるんだ、っていう。思い返すとそういう衝撃でしたね。
RYU-TA:僕も一緒で、ハイスタ、BRAHMAN、10-FEET、ELLEGARDENだったりですね。BRAHMANのライブを初めて大きなライブハウスで観て、その時にお客さんじゃなくてバンドでやってみたいなって。
HIROKAZ:やっぱり似てますね。自分もELLEGARDENだったりGOOD4NOTHINGで。地元にはそういうバンドがあんまりツアーで来ないので、まずは映像で衝撃を受けました。そこから名古屋に行って、ライブハウスに遊びにいくようになって。DVDとは違って、ぐしゃぐしゃになって、汗だくになってモッシュとかして。
――ただ、フォーリミの音楽ってメロディックパンクそのものではないですよね。ライブハウスで熱狂するあの感覚は受け継いでいるけれども、やってる音楽自体は違うものに進化している。そこはフォーリミの面白さというか。独自性、ユニークなところだと思うんですけど。自分たちがそう変わっていった由来はどういうところにあったと思いますか。
GEN:日本語を書くようになったことですかね。メロディックっていう音楽に対して、僕みたいな声が歌っているっていうのもlocofrank的な男らしいメロコアからすると、またちょっと違うなっていうところだと思うんですけど。日本語のハメ方が独特だったのかなって思います。
――ハイスタの世代で言うと、HUSKING-BEEとかeastern youthとかって、パンクに叙情的な日本語を当てはめたやり方をしていたと思うんです。その後の世代でも日本語で歌うバンドはいたけれど、フォーリミの場合はもっと言葉を詰め込んでいて、日本語のリズムを曲の求心力にしている気がする。そういうやり方って、どういうところで掴んでいったと思いますか。
GEN:2013年の『sonor』というアルバムで初めて日本語の歌詞を書いたんですよ。そのあと、数カ月後に『monolith』というミニアルバムが出たんですけど、『monoloth』を出したときに発明した感というか、確立した感覚がありましたね。どうやって覚えたのかは、正直よくわからないです。ちゃんと勉強しなかったから、独特な自分の感覚になったと思いますし。いわゆるツービートに対して、すごく音符が多くて、それを日本語で当ててるっていうのは、誰もやってないんじゃないかって当時は思ってました。
――今回のシングルでも、「夕凪」の方は『sonor』から『monolith』あたりで掴んだものへの原点回帰という感じがするんです。
GEN:たしかにそうかもしれないですね。
――歌詞でいうと<夕凪ゆらり優雅にゆらいで>って、韻をどんどん踏んでいって。しかも言葉の数も、抑揚もそろえている。こういう言葉を連ねていくと発語がどんどんリズムに乗って走っていく。
GEN:そこは本当に感覚だと思います。それこそ全然日本語を書いたことがなかったので。日本語の歌詞を書こうと思ったときに、日本語の歌詞だったら歌い出しから最後までをストーリーがある、物語になっているものじゃないとダメだと思ってたんですよ。でも、『sonor』っていう作品を出したときに、言葉のリズムと韻で歌詞が一気に書けたときに「こういうのでもいいんだな」って思って。物語として筋が通ってなくても、頭の中にあるイメージを言葉にすれば成り立つんだなって。それを思ったときに自信がついたんですよね。今まで認めてくれなかったような先輩も「お前、日本語いいな」って言ってくれたので。
――そこがまさに、フォーリミとマイヘアの対照的なところですよね。マイヘアは物語として筋が通るような歌詞を書いている。どっちがいい、悪いではなく、同じようにメロディックパンクをベースに持っているバンドが、どうやって日本語を音楽に乗せていくかという発想で違うタイプの音楽に進化していくという。
GEN:たしかにそうですね。