欅坂46 平手友梨奈、「夜明けの孤独」に秘めた可能性とは? 歴代ソロ曲の傾向から分析

 そして与えられた曲が「自分の棺」。<偽りだらけのショーウィンドウ>から始まるこの楽曲は、アニメ『タイガーマスク』のエンディング曲「みなし児のバラード」をはじめとした、昭和アニメでよく見かける、ヒーローものとは思えない葛藤を描いた暗い曲を思い出させる。<私の終わり消えてしまおう><一人きりで地獄へ落ちろ><心少しずつ死んでゆく>といった平手にしか歌えない闇深い歌詞に関して、『Quick Japan vol.135』で秋元は、「平手はよく『この場からいなくなりたい』と言う。見ていて思ったのは毎日過去の自分と決別していているんですよ。決別とは再生なんだよってこの曲を通して彼女にメッセージしたかもしれない」と語っているから、面白い。

 そして今回の「夜明けの孤独」は、「僕の、不可避」というコスメブランドのキャッチコピーをもとに、「命とはなんなのでしょうか?」と問いている。CMのロングバージョンで平手は「大人が作った世界に従うの?」と、街の人波から逆走し、道を外し、森を抜け、叫びながら草原へと駆け出す。今までのソロの楽曲が一つのストーリーだとすると、まるで大人のルールに従っていた少女が、ついにそこから脱し、自由へと走り出す姿を具現化しているようだ。

 欅坂46というグループは、かつての映画にあったスターシステムのように、平手という主人公が固定され、それに合わせて毎回ストーリーが変わっていく。欅坂が映画だとすると、平手のソロは、物語の中の主人公ではなく、それを演じている女優・平手友梨奈個人の魅力が詰まっている。だからこそ、欅坂の中でアイドルの概念を覆していく平手は、実はソロ曲にこそアイドルとしての可能性を秘めているのではないだろうか。

(文=本 手)

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