アーティスト キュレーション:早見沙織

Kool & The Gang、Rhye、フジファブリック……早見沙織が明かす“影響”を受けた楽曲

Rhye「Please」

 同じくライブの演出に影響を与えたアーティストが、LAのソウルユニット・Rhyeです。前作の『Woman』から大好きで。ある日、彼らがステージを真っ暗にして、蝋燭の灯りだけでライブをしている映像を見てすごく衝撃を受けたので、前回ツアー時には「雨の水平線」を歌う際、照明をなるべくカットしてもらいました。

Rhye | NPR MUSIC FRONT ROW

 私、歌い方は曲に合わせていることが多くて、曲の雰囲気に引っ張られちゃうタイプなんです。でも、共通した特徴もあって、エッジが効いてマイクにカツンと当たる声じゃなくて、空気感というか、スカスカしている成分が多いので、Nouvelle VagueやRhye、The XXのような「空気に溶けていく歌声」は聴いていても気持ちいいし、歌い手としてもすごく参考になりました。「私の声には、こういうメロディや音との親和性があるんだ」という気付きにもなったりして。自分ではわからなかったんですけど、ディレクターや楽曲に携わってくれる方から「早見さんの曲は音を引き算したほうがいい」と言われていて。そこからずっと、いろんな楽器を詰め込むというよりは、声を引き立たせつつ親和性のあるものを意識するようになりました。

 海外アーティストで現行の方の音楽を聴くときは、気分に合わせてプレイリストを作ってみることも多いです。雨のときなんかは、気分がまろやかになる音楽が聴きたくなって、デヴェンドラ・バンハートの「Für Hildegard von Bingen」やAbsofactoの「Dissolve」、The XX、Balmorheaの『Clear Language』を聴いてみたり。晴れてて体力が有り余っているときは、EDMも聴いたりするんです。みんなからは意外と言われるんですが(笑)。それこそZEDDやPoter Robinson、Madeon、Diploのように、どこかムーディーな感じもあるアーティストも好きですし、なかでもお気に入りはHaywyreですね。クラシックやジャズを嗜んでいるトラックメイカーなので、打ち込みだけどジャジーに聴こえるんです。

フジファブリック「銀河」

 自分で作詞・作曲を行なっていくなかで、最近影響を受けたものも紹介しようと思います。つい先日、昔使っていたiPod Classicを見つけたので、フジファブリックの『TEENAGER』や『FAB FOX』を聴いたんです。この間は一日「銀河」しか聴いていない日もあって。「銀河」、すごくないですか? Bメロで突然、めちゃくちゃ転調して2個キーが上がるんですよ。「今ですか!?」というタイミングの“こんなところで転調”がお気に入りで、現在製作中の曲も、元々あった展開からさらに転調させちゃいました。

フジファブリック (Fujifabric) - 銀河(Ginga)

 日本のバンドでかなり聴いているものだと、やはりキリンジは欠かせません。インタビューでお話したように、今回のシングルのカップリング曲「SIDE SEAT TRAVEL」は「まぶしがりや」とか「代官山エレジー」みたいな楽曲を目指していたところもあったり、リスナーとしては『3』や『Fine』が大好きで。曲は「ここでこうなるのー!?」という展開も多いですし、歌詞も“余白がある”感じというか、独特の雰囲気を持っていますよね。先日、新体制でKIRINJIとしてバンド編成になってからのライブにも足を運んで、ブラスも入ったオーケストラのような編成で楽曲を披露されていて、すごく充実した時間を過ごせました。

美容室で髪を切ってもらうように

 私は、いまだに自分の音楽を模索中で。影響を受けたあの作品をというよりは「この曲のここが好き」ということが多いので、どう取り入れて活かしていこうかという判断が難しくて、最近ようやくできるようになってきました。自分のスキル的にできないとか、どの段階で提案すればいいのかわからないとか、「この曲みたいにしてください」とお願いしていいのかどうかもわからなかったので。

 それって、美容室で髪を切ってもらうときと似ていますよね。写真を持って行って、「この写真のどこが良いと思ったのか」を訊かれて的確に答える術が必要だし、なんだったら自分でしっかり髪を切って、好きな髪型を作れるようになったら理想じゃないですか。これから作る音楽には、そうやって段階的に自分の色をより濃く出していこうと思います。

※記事掲載時、一部アーティスト名に誤りがございました。訂正してお詫び申し上げます。

■リリース情報
『夢の果てまで』
発売日:11月8日(水)
価格:アーティスト盤 ¥1,800+税、アニメ盤 ¥1,800+税、通常盤 ¥1,200+税

<CD収録曲>※全商品共通
1. 夢の果てまで
作詞・作曲:竹内まりや 編曲:増田武史
2. SIDE SEAT TRAVEL
作詞・作曲:早見沙織 編曲:増田武史
3. 夢の果てまで(Instrumental)
4. SIDE SEAT TRAVEL(Instrumental)

<アーティスト盤 DVD収録内容>
「夢の果てまで」MUSIC VIDEO

<アニメ盤 DVD収録内容>
劇場版「はいからさんが通る 前編 ~紅緒、花の17歳~」の映像を
使用したMV

■映画情報
劇場版 はいからさんが通る 前編 〜紅緒、花の17歳〜
公開日:11月11日(土)
※後編『劇場版 はいからさんが通る 後編 〜花の東京大ロマン〜』は2018年公開予定。

<CAST>
花村紅緒:早見沙織
伊集院 忍:宮野真守
青江冬星:櫻井孝宏
鬼島森吾:中井和哉
藤枝蘭丸:梶 裕貴
北小路 環:瀬戸麻沙美
花村少佐:石塚運昇
ばあや:鈴木れい子
牛五郎:三宅健太
吉次:伊藤 静 ほか

<STAFF>
原作:大和和紀「はいからさんが通る」 講談社KCDX デザート
監督(前編)・脚本:古橋一浩
キャラクターデザイン:西位輝実
サブキャラクターデザイン・総作画監督:小池智史
背景デザイン・美術監督:秋山健太郎
色彩設計:辻田邦夫 ※辻は「1点しんにょう」。
撮影監督:荻原猛夫(グラフィニカ)
音響監督:若林和弘
音楽:大島ミチル
主題歌:「夢の果てまで」 早見沙織
作詞・作曲:竹内まりや 編曲:増田武史
アニメーション制作:日本アニメーション
製作:劇場版「はいからさんが通る」製作委員会
配給:ワーナー・ブラザース映画

早見沙織 公式HP

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