CUBERSのサウンドの面白さとボーイズグループのこれからを考えるーー高橋諒×高橋芳朗対談

CUBERSの魅力紐解くW高橋対談

 CUBERSが、10月4日に2ndEP『マゼンタ』をリリースした。CUBERSは、“聴けるボーイズユニット”をコンセプトに掲げる5人組。2015年のCDデビュー以降、高い楽曲性が各所から評価され、アイドルファン以外にも早耳な音楽ファンを中心にじわじわと注目を集めはじめている。新作『マゼンタ』には、CUBERSの真骨頂とも言えるソウルやファンクを取り入れたサウンドが光る全6曲を収録(FC東京コラボ盤のみ全7曲)。今回リアルサウンドでは本作のリリースを機に、彼らの音楽的な魅力を紐解くべく、CUBERSにゆかりのある2人の“高橋”を招いたW高橋対談企画を行った。

 1人目の“高橋”は、CUBERSの多くの楽曲でアレンジ・作曲を務める高橋諒。BOYS AND MENなどの男性グループの楽曲から、自身のプロジェクト・Void_Chordsとして人気アニメ楽曲までをマルチに手がける気鋭の音楽作家だ。2人目の“高橋”は、1stアルバム『PLAY LIST』からライナーノーツを寄稿している音楽ジャーナリストの高橋芳朗。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材や、マイケル・ジャクソンや星野源などのライナーノーツを担当。TBSラジオではパーソナリティや選曲も手がけている。

 CUBERSの音楽を生み出す、また伝える役割を果たしてきたミュージックラバーの2名が考える、CUBERSのサウンドの面白さや男性アイドル/ボーイズグループのこれからとは? また、取材に同席していたCUBERSのマネージメント・楽曲ディレクションを担当する堀切裕真にも途中から会話に参加してもらった。(編集部)

80年代のシティポップやブラコンを志向した新鮮な驚きがあった

ーー諒さんと芳朗さんは、CUBERSの楽曲を最初に聴いた時の印象はいかがでしたか。

高橋諒:僕はCUBERSのことをアレンジのお仕事をいただいたタイミングで知って。音楽的にすごく冒険していて面白いな、という印象でした。もともと僕自身、ソウルやファンクなどのちょっと跳ねたサウンドが好きなので、僕のアレンジャーとしてのカラーを知って声をかけてくれたのかなと。いただいた曲もデモの段階でソウルやファンクな雰囲気があったので、存分に自分を出していいんだなと安心して作品作りに臨みました。

高橋芳朗:僕も恥ずかしながら『PLAY LIST』のライナーノーツ執筆のオファーをいただいたことでCUBERSの存在を知りました。いまの男性アイドルのサウンドの傾向というとEDMやアーバンポップのイメージが漠然とあったんですけど、CUBERSは80年代のシティポップやブラックコンテンポラリーを志向していて新鮮な驚きがありましたね。第一印象としては、90年代に海外の一流ミュージシャンを起用してアルバムをつくっていたころのSMAPみたいだな、と。ブラックミュージックを中心に執筆活動をしている僕に声をかけていただいた意図も音源を聴いてすぐに理解できました。

ーーソウルやファンクといったジャンルは、これまでもジャニーズを中心とした男性アイドル曲に見られた王道的なサウンドではありますよね。

高橋芳朗:90年代のSMAPは海外のフュージョン/ブラックミュージック系のスタジオミュージシャンを積極的に起用することで、よりそういう部分を強調していた印象がありますね。そこまで視野に入れていたかはわかりませんが、彼らが打ち出していた音楽性は当時のクラブシーンを賑わしていたフリーソウルとも相性が良かったし、時代の気分にもうまくフィットしていました。当時のSMAPのアプローチがおもしろいと思ったのは、本来ブラコンやシティポップってアーバンな大人な音楽じゃないですか。でも、ああいうサウンドに彼らの拙くも誠実なボーカルが乗ると、ささやかな理想を歌った歌詞もあいまって大人っぽさよりもむしろ爽やかな青さが立ってくるんですよね。CUBERSはそういう90年代のSMAPの良さをうまくすくいあげているなと思いました。

ーー2016、2017年ごろから再びブラックミュージックやシティポップのブームが巡ってきたタイミングで、“聴けるボーイズユニット”としてCUBERSが登場しました。これまでのCUBERSのリード曲はどれも諒さんの楽曲ということで、サウンドの核となる部分を担われています。

高橋諒:当初から「CUBERSは音楽性が存分に高いものを本気でやりたいんだろうな」ということはすごく感じました。なので、楽曲の全体像としてはスタジオミュージシャンの玄人感が出るようなものを目指しましたね。加えて、そこに打ち込みのパリッとした感じが入るのがアイドル音楽っぽさだとも思っているので、打ち込みだからこそできることと、ベースを弾いてちょっと尖ったエッジーな感じを出すというさじ加減、サウンドの塩梅は意識して作るようにしました。

高橋芳朗:単なる過去の焼き直しではないですよね。

高橋諒:例えば「Samenaide」(『PLAY LIST』収録曲)なんかでも90年代のサウンドのモノマネもやろうと思えばもっとできたと思うんですよね。でもあえて良い塩梅でとどめておこう、というのはありましたね。

CUBERS「Samenaide」

堀切:あくまで主観ですが、CUBERSのファンの方もサウンドを聴く力がどんどん上がっていて。音楽面でもグループを楽しんでくれている印象です。『マゼンタ』に収録されている「君に願いを」を初披露した時も「CUBERSっぽい」という反応があったり、8月にJZBratで開催したフルバンド編成でのワンマンライブの後には「September」(Earth, Wind & Fireのカバー)が良かったという感想を聞いたり、単純に嬉しいです。制作側の根幹には、常にマスを意識して、大衆に向けてより濃いもの、高度なものをやっていきたいという思いがあります。

高橋芳朗:「君に願いを」はサウンドだけじゃなく、リスナーをシンプルに肯定してあげる歌詞からもSMAPイズムみたいなものを感じましたね。

CUBERS「君に願いを」

堀切:会えない時間を音楽で埋めるように、そばにCDを置いてもらえればと思いながら作りました。「君に願いを」は諒さんに作曲していただいたのですが、ブラックミュージックにのせながら、「会えない時間の寄り添いかた」といったテーマを表現した楽曲です。

高橋芳朗:ただ、サウンドのかっこよさはもちろんなんですけど、CUBERSの音楽的イメージを決定づけているのはなんだかんだいって彼らの歌だと思うんですよ。歌唱力自体は拙いところもありますけど、朴訥な人柄が伝わってくるというか、このひたむきなボーカルがあってのCUBERSサウンドなんでしょうね。歌詞の言葉選びもそんなメンバーのキャラクターに応じてすごくソフトで繊細で。

CUBERS(左からTAKA、優、春斗、綾介、末吉9太郎)

高橋諒:男性アイドルの場合、尖った感じや雄々しい雰囲気が大事にされる傾向がある。でもCUBERSの場合は、プロフィール写真を見てもそうですけど、柔らかさがあるというか。

堀切:良い意味でどこか隙があるのがCUBERSの良いところかもしれません。あと、歌う言葉のセレクトは注意するようにしています。基本的には「愛してる」「君が好き」みたいなフレーズを使わないようにしてきました。今回「カラフルにしよう」のDメロで初めて「愛してる」という言葉を使ってみたんですよね。

高橋芳朗:でも単に「愛してる」とストレートに思いを打ち明けるのではなくて、あくまで「〈愛してる〉と口にするのは 照れるから」とワンクッション入るんですよね。そういう歌詞の柔らかさと、メンバーの健気な歌唱との相性が抜群にいい。男性アイドルの王道をいくようなキザな振る舞い、男臭い振る舞いからは意識的に距離を置いてる節がうかがえます。

堀切:メンバー選考の時には特に意識していなかったのですが、実はCUBERSのメンバーには似ている声質が1人もいなくて。音域がちょうど5人縦に揃うので、ユニゾンが綺麗に収まるんです。

高橋芳朗:あのユニゾンの心地よさはそういうところからきてるんですね。そういえば、今回のEPでは初の試みとして中盤にインタールードの「いつか忘れられるさ」が収録されています。アイドル作品でこういう構成がとられるケースってめずらしいんじゃないですか?

堀切:インタールードは1曲目ではなく、途中に入れたいという思いがありましたね。インストがあるからこそ、ビートが効いたバラード「今日はどんな日だった?」が沁みるのではないかと思いまして。

高橋諒:そういった流れを経てTHE・アイドルソングといった雰囲気の「ボクラチューン!!」で終わるのもいいですよね。

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