the brilliant green、“本格再始動”の意義 音楽シーンに変革期は再び訪れるか?

 the brilliant greenが先日、8月20日開催の『2017神宮外苑花火大会』神宮球場ライブに出演し、本格的に活動を始動すると発表した。

 the brilliant green(以下、ブリグリ)は1997年、全編英語で歌われた『Bye Bye Mr.Mug』のシングルリリースでメジャーデビュー。翌1998年、初の日本語曲での3rdシングル『There will be love there -愛のある場所-』がヒットし、「冷たい花」「そのスピードで」などの名曲を90年代後半~2000年にかけて世に送り出した。2001年にはボーカル川瀬智子がソロプロジェクト・Tommy february6を始動させるため、バンド活動を一時休止。2002年には4thアルバム『THE WINTER ALBUM』をリリース後、バンドとしての活動を正式に休止した。その後はギター松井亮の脱退を経て、川瀬のソロ活動を中心に数年に1度のペースでthe brilliant greenを始動しては休止するという動きをみせている。なお、今回の活動はメンバー曰く2013年以来4年ぶりとのこと。90年代後半の音楽シーンを支えたブリグリの再始動を受けて、文芸・音楽評論家の円堂都司昭氏にバンドの功績について話を聞いた。

「『There will be~』は1998年5月発売、『冷たい花』が8月発売だったので、ブリグリは98年に頭角を現したバンドと言えます。90年代に隆盛だった、いわゆる小室哲哉サウンドが勢力を弱める一方、小室的なダンス系のポップスは1996年デビューのSPEEDが受け継いだ。それらのようなテンションの高いサウンドとは対照的なMy Little Lover、Every Little Thingといったナチュラルな女性ボーカル曲が人気を得ている。そういう時代にブリグリは現れました。同時期にお笑い番組発でヒットしたポケットビスケッツとブラックビスケッツが女性1人・男性2人のユニットでしたが、DREAMS COME TRUEに始まりMy Little Lover、Every Little Thing、ブリグリへと続いたメンバー構成の潮流をパロディにした面がありました。3人組の多くはメンバーの脱退で編成が変わってしまったわけですが……」

 当時の音楽シーンを代表する存在であったブリグリは、80〜90年代のイギリスの音楽シーンから強く影響を受けたバンドである。The Jesus and Mary ChainやMazzy Starといったインディー系のギターバンドや、OasisやBlurといったブリットポップの代表的バンドのエッセンスも聴き取ることができる。彼らの作品には「ロックの伝統的な部分が反映されていた」と円堂氏は続ける。

「ブリグリはBlur『Song 2』をカバーしたほか、2014年には60年代的なアレンジでセルフカバーした『THE SWINGIN’ SIXTIES』をリリースしたりしてきました。ブリットポップは90年代の音楽ですが、それらはThe Beatlesをはじめとした60年代のロックをお手本にしていたので、『THE SWINGIN’ SIXTIES』はルーツにまで遡った企画でした。ブリグリはそういったロックの伝統的な部分を含んだ、エバーグリーンなサウンドが持ち味でした。『冷たい花』などにみられる通り、メロディ、ギター、コードなどはオアシスの影響が大きかったですが、あのバンドが粗野な男性ボーカルだったのとは異なり、川瀬智子はちょっと物憂げでアンニュイな印象の女性ボーカル。歌声によってJ-POPに聴こえるけれど、演奏だけ聴くともろブリットポップ。彼女の歌は、My Little LoverやEvery Little Thingのナチュラル感とも違っていました。それがブリグリの特徴であり、“98年ならではのサウンド”だったように感じます。現行の音楽シーンでは同じような音はあまり鳴っていないので、今回本格的に始動するにはいいタイミングだなと思いますね」

 さらに円堂氏は90年代後半に活躍したブリグリの当時を思い起こしながら、彼らの音楽は今のシーンに求められるタイミングでもあると指摘する。

「振り返ると、ブリグリがブレイクした次の年である1999年は宇多田ヒカル、浜崎あゆみ、椎名林檎、モーニング娘。などの活躍で音楽シーンが激変した年でした。ブリグリの音楽は小室全盛期と宇多田以後の間で鳴っていた印象がある。現在も当時と少し状況は似ていて、EDMなどの賑やかなサウンドのブームが少し落ち着き、彼らのような物憂げなサウンドが求められる時代がやってきているとも考えられます」

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