村尾泰郎の新譜キュレーション 第14回
アーケイド・ファイアからBSS、モッキーまで……個性豊かなカナダ出身アーティストの新譜5選
英米に負けないほど、個性豊かなミュージシャンを生み出しているカナダ。今回は、カナダ出身のアーティストの新作をまとめて紹介していこう。
まずは、『The Suburbs』でグラミー賞を受賞して、いまやカナダを代表するバンドとなったArcade Fire。英米チャート1位に輝いた『Reflektor』から約4年振りとなる新作『Everything Now』は、Daft Punkのトーマ・バンガルテルやスティーヴ・マッキー(Pulp)が参加。エレクトロニックなサウンドを前面に押し出して、ダンサブルなビートが際立っている。力強いグルーヴで突き進むアルバムの前半から、歌をしっかりと聴かせる後半へ。各曲が密接に繋がったドラマティックな構成も見事で、アルバムのスケールは一段と増している。
一方、カナダのインディー・シーンの顔役、Broken Social Scene(BSS)が、7年振りの新作『Hug of Thunder』を発表。ケヴィン・ドリューとブレンダン・カニングを中心にして結成されたBSSは、カナダのインディー・シーンで活動するアーティストが集結したバンドで、作品ごとに参加メンバーが変化する。今回はFeist、エミリー・ハインズ(Metric)、エイミー・ミランとエヴァン・クランレー(Stars)といった古くからのメンバーが勢揃い。ジャム・セッションをベースに作り上げられた曲は、躍動感溢れるバンド・サウンドと、ダブやエレクトロを織り交ぜた大胆なスタジオワークが融合。アルバムに混沌としたエネルギーが渦巻くなか、曲ごとにボーカルが変わり、次々と新しい風景を見せてくれる。
そのBSSのメンバーでもあるチャールズ・スピーリンやオハッド・ベンチェトリットを中心にしたバンド、Do Make Say Thinkも8年振りに新作『Stubborn Persistent Illusions』を発表。インストを中心にして雄大なサウンドスケープを生み出す彼らのポストロック的なサウンドは、レーベルメイトのGodspeed You! Black Emperorと比較されることも多いが、重厚なゴッド・スピードに比べると、ぐっと軽やかでロックンロールの疾走感に貫かれている。静と動を織り交ぜながら、アルバム一枚で大きな世界を生み出してリスナーのイマジネイションを刺激する音作りは、円熟味を増してきた。兄弟バンド、BSSの新作と併せて楽しみたいアルバムだ。