フィロソフィーのダンスは今、転換点に立っている　3rdワンマンから見えたグループの目指す先

　「ベスト・フォー」は、一転してソウルフルなサビを持つ楽曲。そして、「ミスティック・ラバー」で再びファンク濃度を上げていく。「ドグマティック・ドラマティック」では、ミラーボールが回転して会場を照らしだした。「ドグマティック・ドラマティック」では、メンバーのボーカルの歌割りもよく考えられており、サビを十束おとは、日向ハル、佐藤まりあ、奥津マリリという順番で歌いあげるのも実に心地良い。フィロソフィーのダンスが、ガールズ・ダンス＆ボーカル・グループとして成長していることを実感した1曲でもあった。

　MCを書くつもりはなかったが、「ドグマティック・ドラマティック」後のMCで十束おとはが、新衣装で腋が見えることについて「みんな見る、そういう生き物だから」と発言したことは、この世の真理を突く名言として記録しておきたい。

　そして、新曲「夏のクオリア」はメロディの開放感も心地良いサマー・ナンバー。宮野弦士編曲によるサウンドには、1980年代AORの感触も。振り付けは竹中夏海によるものだ。

　ファンクの「VIVA運命」は、多数のライブで歌いこまれてきたことにより、サビでの日向ハルのボーカルの強度が非常に高い状態へと到達していた。

　かと思うと、「ソバージュ・イマージュ」では、ジョルジオ・モロダーが手がけたディスコ・ナンバーのようなサウンドに。テクノなトラックと歌のコントラストが鮮やかで、意外なほどライブ映えする楽曲だ。

　本編ラストはファンキーな「ライク・ア・ゾンビ」。歌い終えると同時にステージの幕が閉じた。

　そしてアンコールを受けて再び幕が開くと、ステージにはキーボードが。松本ジュンのキーボードの生演奏とともに「ジャスト・メモリーズ」が歌われた。「ジャスト・メモリーズ」はこの日から会場限定CDの販売がスタートしたが、その記念すべき日にふさわしい演出だ。そして、4人で歌い上げる瞬間のカタルシスも強烈なものだった。

　アンコールの2曲目は「すききらいアンチノミー」。宮野弦士のギターリフが冴えわたるナイル・ロジャース歌謡だ。ライブではトラックの間奏が長くなり、メンバーが「フィロソフィーの？」と呼びかけると、ファンが「ダンス！」と叫ぶ、おなじみにしてやや不思議なコール・アンド・レスポンスも健在だ。

　さらにダブルアンコールでは、Tシャツ姿のフィロソフィーのダンスが、2017年10月7日に渋谷クラブクアトロで4回目のワンマンライブを開催することを発表。そして、最後に歌われたのは「アイドル・フィロソフィー」だった。ファースト・ワンマンライブの1曲目である。イントロや間奏でファンもシンガロングして、大合唱となった。

　ヤマモトショウ作詞による「アイドル・フィロソフィー」の歌詞は非常にメタ的なので、この楽曲で大合唱が起きてライブが終わることは、ある種アイロニカルな光景にも映った。私たちはまだまだフィロソフィー、つまり哲学を探究しなくてはならない。フィロソフィーのダンスとともに。

　フィロソフィーのダンスは、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2017』の最中である2017年8月6日にようやく2周年を迎えるグループだ。日向ハルが「いつかはバントセットでやりたい」と発言していたように、まだやっていないことも多いし、ライブがショーアップしていく余地もあるだろう。10月7日のワンマンライブがどのようなものになるのか、あえてハードルを高くして期待したい。

■宗像明将
1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイドルに関しての原稿執筆も多い。Twitter

■セットリスト
01.オール・ウィー・ニード・イズ・ラブストーリー
02.告白はサマー
03.はじめまして未来
04.好感度あげたい！
05.パラドックスがたりない
06.バッド・パラダイム
07.アイム・アフター・タイム
08.アルゴリズムの海
09.熱帯夜のように
10.コモンセンス・バスターズ
11.DTF!
12.ベスト・フォー
13.ミスティック・ラバー
14.ドグマティック・ドラマティック
15.夏のクオリア
16.VIVA運命
17.ソバージュ・イマージュ
18.ライク・ア・ゾンビ
EN1.ジャスト・メモリーズ
EN2.すききらいアンチノミー
W-EN.アイドル・フィロソフィー