欅坂46「不協和音」は「サイレントマジョリティー」を超えるか 楽曲構成の“新しさ”を徹底分析

 2016年、デビューから8カ月で紅白歌合戦に出場したことで、今までにも増して注目が集まる欅坂46。その最新シングル『不協和音』を聴く。

 冒頭のピアノのフレーズはサビのメロディを模したもので、やがて訪れるサビへの布石として機能する。同じくピアノソロから始まった2ndシングル表題曲「世界には愛しかない」とはまるで異なるスタイルだ。叙情的・感傷的な始まりの「世界には愛しかない」とは違い、今回の「不協和音」は、聴き手の脳裏にその旋律を焼き付けるタイプの始まり方である。

 特筆すべき点は、そのメロディの“同音の連続”の長さだ。サビの最初、<不協和音を僕は恐れたりしない>の<れ>あたりまで音程は上下せずずっと一定を保ち続け、<たりしない>でようやく溜まっていた感情を吐き出すようにメロディを動かしている。小節にして1.5小節分、拍にして6拍。ここまで音程が動かないと、ともすれば歌として成立しなくなるところを、この曲はリズムに変化を加えることでオリジナリティを獲得している。この音程の長尺のキープからは“固く強い意志”を感じ取ることができるが、このようにワンフレーズの前半はステイさせ後半に動かす特殊な形状のメロディは<ここで同調しなきゃ裏切り者か>、<殴ればいいさ>、<人はそれぞれバラバラだ>など曲中で何度も登場するうえに、これ以外の多くのフレーズもこの法則に倣った形で展開しているため、曲の全編に渡って「内に秘めた感情の爆発」のようなもの感じ取ることができる。また(これはMVの印象に引っ張られている側面が多分にあるが)、<軍門に下るのか>や<君はYesと言うのか>のように問いかける詞がこの旋律の”群れ”に乗っかることで、複数の登場人物が議論を交わしている風景が浮かび上がる曲にもなっている。

 全体的なサウンドの印象はハードなシンセと重いビートが主体のダンス・ナンバーで、刺々しく好戦的なシンセの音色や、ソカやレゲトンのようなカリブ海周辺の雰囲気を若干漂わせているAメロ~Bメロのリズムには野性的でエネルギッシュなパワーがある。が、この全体的な曲調そのものには、さほど目新しさがあるわけではない。とりわけ歌詞にある自己主張を促すようなメッセージ性については、ここ最近の日本の流行作品の常套句ーー言うまでもなく「サイレントマジョリティー」もそれに該当するーーのレベルを超えない。では、「不協和音」はただの二番煎じとして片付けられるものだろうか? 答えは、ある部分ではYesであり、またある部分ではNoである。

 まず、曲の持つメッセージ性の領域において「不協和音」はデビュー曲の焼き直しである。が、製作陣はそうしたテーマにあえて取り組むことで自らに高いハードルを課したと考えられる。同じテーマに挑むことで変化を炙り出すことが狙いなのだ。そしてその成果として現れているのが彼女たちのパフォーマンスの面だろう。パフォーマンスについては百聞は一見に如かずで、評を読むより映像を見てほしい。では、この楽曲の“新しさ”とはなんだろうか。それを読み取るために今一度、同グループのこれまでのシングル曲を振り返りたい。

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