SHIROSE(WHITE JAM)× ジョーブログ対談 動画で1000万PV、二人が考える表現の可能性

伝えたいことがあるのに、伝わらなかったらもったいない(SHIROSE)

ジョー(ジョーブログ)、SHIROSE(WHITE JAM)

ーーWHITE JAMの場合も、「ウソツキ」のMVがYouTubeで広がったことがブレイクのきっかけだったと思います。あのMVではある親子の関係が描かれていて、その内容が多くの人の共感を呼びました。

SHIROSE:でも、僕がやりたいことは、実は「共感」ともまた違うんですよ。僕は「みんな、叫びながら生きてるな」と思うことが多くて、人って「共感したい」とは思っていないんじゃないかな、と感じているんです。あの曲には僕が高校時代に母親が癌になったときの話が描かれていて、お母さんについていた嘘や、家族についていた嘘、それからお母さん自体がついていた嘘をテーマに制作を進めていきました。でも、僕自身はウソをついている自分に病んでいる時期があって……。だから、それに共感してほしいというよりは、「こんな自分でも生きてこれたんだよ」という価値観の提案をしたかったんです。それを世に出すときに、YouTubeが一番いいと思ったということですね。自分にとって意味の強い曲だったからこそ、一度それが多くの人に広がっていくのが嫌になったこともあって、動画を止めて曲自体も歌わなくなった時期もありました。今はもう吹っ切れているんですけどね。

WHITE JAM「ウソツキ」

ーーYouTubeを通してたくさんの人に観られたことで、いい面もそうでない面も経験したということですね。ジョーさんはYouTubeにどんな魅力を感じますか?

ジョー:YouTubeって誰でもはじめられて、誰でも動画を上げられるじゃないですか? それがきっかけで今回のような機会をいただいたり、出会えなかった人に出会えたり、色々な経験が広がっていくところが魅力的だと思います。アップロードする内容も、どんなものでもいい。その制約が少ないので、伝えたいことすべてを本音で言えると思うんです。実際、僕のYouTubeチャンネルは本当にオールジャンルで、旅もディープ・スポットも、エロもお笑いも、実験もある。自分が表現したいことは何でもやるという感覚なんですよ。

ーーひとりの人間に混在している様々な要素を、全部見せるという感覚ですか?

ジョー:そうですね。人って色んな感情を持っていて、病んでいるときもテンションが高いときも、かったるいときも熱いときもありますよね。YouTuberの方々は色々なカテゴリーに分かれて活動している方が多いですけど、僕は「全部出そう」と。「自分の人生の一日一日が作品でありたい」という感じなんですよ。YouTubeはその様子をただ映しているだけなので、僕はYouTuberの間でのトレンドに乗ったりすることもないんです。

SHIROSE:ああ。動画のために作品を用意するのではなくて、「人生自体が作品」だ、と。僕の場合は、音楽を作るのは本当にメモみたいな感じなんですよ。「曲を作る」というと大がかりに思われるかもしれないですけど、高校生の子が授業中にノートに日記を書いているような、あんなテンションで。高校生の女の子が自由帳にメモをしたり、手紙を書いたりするのと同じで、僕の場合はそのツールが音楽だった。そもそも、19歳の頃に音楽を作りはじめたのも日記がきっかけでしたしね。僕は色々な方に楽曲提供もさせていただいていますけど(山下智久、KAT-TUN 、東方神起、MISIA、AAA、Da-iCE他多数)、誰かに楽曲提供をするときも、人の手紙を書くのをお手伝いしている感覚です。

ーーお互いに「毎日自然にやっていること」が世に出ているという意味で共通している、と。楽曲提供の際は、その人が言いたそうなことを形にするという感覚ですか?

SHIROSE:それが僕の得意なことなんですよね。その人が言葉にしきれなかったことを、「これですよね?」と言ってあげる。僕はメロディや歌詞を作るのが得意というよりは、漠然と伝えたいことはあるのに悩んでいる人の考えを形にしてあげる、という感覚です。

ジョー:へええ。それは、その人と喋っていく中で探し当てていくんですか?

SHIROSE:そうです。これはジョーさんにも感じることですけど、天才であればあるほど、自分では何をやっているのか把握していない人が多いと思うんですよ。その人の頭の中に見えている全体像の中の「ここ」と「ここ」という点だけしか言ってもらえない/言えないから、周りの人には伝わらなかったりする。でも、僕はただの一般人だからこそ、それを結び付けて、僕というフィルターを通して人に見せてあげることができると思っているんです。天才であればあるほど、最初は何を言っているのか本当に分からないんですよね。

ジョー:その方が燃える感じなんですかね?

SHIROSE:いや、悩みます(笑)。天才の人は伝えようという気持ちも強いし、言葉も強いですけど、周りの事柄を含めた輪郭を伝えるのは上手くないですよね。それを伝えるために僕も色々と考えるんです。

ーー「輪郭が分かる」というのは、確かにSHIROSEさんの楽曲の特徴だと思います。

SHIROSE:伝えたいことがあるのに、伝わらなかったらもったいないと思うんですよ。その際、言いたいことがそのまま伝わるのであれば、そもそもいいメロディをつける必要もないと思う。それでは伝わりにくいからこそ、頭にあるものを音楽にして取り出してあげるというか。結局、僕がそういうものを映し出してアウトプットするのが好きなのは、「誰かの居場所を作っている」ということなんだと思います。形が違うだけでジョーさんも一緒ですよね。お互い「こうでもいいんだよ」と人の居場所を作っているのかな、と。あと、僕は『ドラえもん』がすごく好きなんですよ。どこでもドアが行きたいところにどこでも連れて行ってくれるように、ドラえもんがポケットから出す道具は、普通に考えると現実的なものではない。でも同時に、ドラえもんってすごく普通の生活の中に溶け込んでいると思うんです。僕はそういう作品を作ることができたらいいな、と思っていますね。

ジョー:SHIROSEさんがそう言うのは、すごくしっくりきます。話を聞いていても、ドラえもんっぽいなぁと思うし(笑)。僕の家にも来てくださいよ。

SHIROSE:(笑)。(ドラえもんの道具のように)僕は価値観を発明したい。誰もが使う言葉で、「こんな生き方をしてもいいんだな」という選択肢を伝えたいというか。

ーー価値観や選択肢の幅を提供する/広げるということですね。

ジョー:分かります。僕も「人生を散らかせ」とよく言うんですよ。僕自身、今まで結構散らかった生き方をしてきているんですけど、今って特に職業も生き方も多様化している時代だと思うので、「何でもやっていいし、どんな生き方でもいいんだよ」ということが伝えたい。僕はよく「空気は読むもんじゃない。吸うものや!」と言っているんですけど、今の10代の子たちは情報が多い中で育ってきて、逆に気にしぃの子が増えていると思うんです。そういう子たちにも、それを伝えたいので。あと、僕はYouTubeを拠点に活動してますけど、リアルを大事にしている人間なんですよね。たとえば旅をするにしても、今って行く前に調べると「この場所はこんな風に危険だ」とか、色んな情報が出てくるじゃないですか。でも、実際に行ってみると、現地にはものすごくハッピーな家族がいたりもする。それは自分が見たリアルでしかないですけど、行ってみないと分からないことがあると思うんです。だからYouTubeでも「観てるだけじゃあかんぞ。もし何か感じたら、自分で行動を起こしてほしい」と言っているんです。自分で動いて、自分を本音で開いてこそ、人と本気で分かり合える瞬間がくる。旅もそうですけど、自分が開かないと何も始まらないですから。

SHIROSE:ああ、なるほど。ちょっと人前で言うのは恥ずかしいですし、初めて言いますけど……僕は「世界一歌が上手くなりたい」というのがひとつの目標なんです。まるで『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィみたいですよね(笑)。「上手さだけがすべてじゃないよ」みたいなことってどんなことにも言われますけど、「それは上手くなってから言おうよ」と思うんです。だから、世界一歌が上手くなってから「上手さだけがすべてじゃない」って言いたい(笑)。

ーー(笑)。WHITE JAMとしては、どんな目標がありますか?

SHIROSE:WHITE JAMの場合は、メンバーのNIKKI(Vo)がすごくスケジュールを組むのが上手い子なので、実はもう10年ぐらい先までスケジュールが組まれているんですよ(笑)。だからどうなりたいというより、そうなるという感じです(笑)。もちろん、細かい部分はそのときの状況に合わせて変わっていくんですけどね。

ジョー:もはやスケジュールのレベルを超えている……(笑)。僕なんか一カ月先のことぐらいしか分からないですよ。「一日一日を面白く生きよう」という感じなので。ただ、普段は点で生きている人生がまとまったときに、映画のようであってほしいとは思います。それが予想外であればあるほど、自分で観ても楽しいと思うので。目標というニュアンスではないですけど、自分の場合はそれが10年後も続いているんだろうな、と思いますね。

 

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