『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』特集第5弾

“音楽×映像”はライブ体験をどう拡張する? DAOKO、Kezzardrix、backspacetokyoに訊く

 

「より体感を意識させるようなライブにしたい」(DAOKO)

ーーいろいろなクリエイターとコラボすることで、自分の中で音楽との向き合い方に変化が生じたりはしますか?

DAOKO:コラボすると自分の新たな一面が垣間見れることはありますね。それは、コラボしてみないと開けられない蓋だったりするんですけど。でも、コラボ相手がいなくっても自分でそういう蓋を開けれるようになりたいとも思います。例えば、ギターを弾いてみるとか、出会いの中から自分の新しいところ発見できる。

ーーライブへの向き合い方も、デビュー当時から変わりましたか?

DAOKO:映像演出って、確かにDAOKOの一部として機能していると思うんですけど、やっぱりライブの一番の醍醐味は、体感だと思うんですよね。サウンドのクオリティやボリューム、耳の気持ちよさとか視覚的な楽しさ。そういう体感を突き詰めていくと、やっぱりお客さんとの距離感はよりフラットな状況のほうがグルーヴが生まれる。だから、紗幕を使いながらも、お客さんとコミュニケーションをとる方法はいつも探っています。ワンマンの時に、紗幕を上にあげて私が前に出ていったりすると、すごい盛り上がってくれる。そうやって場面を切り替えることも大切な演出だと思っていて。やっぱり、ライブは鮮度が大事だなと思います。

ーー最近ライブを見て興味を持った映像を使ったアーティストはいますか?

DAOKO:サマソニで観たRadioheadはステージの上の楽器以外の機材量もすごく多くてびっくりしました。日本ではまだ見たことのないようなライティングや機材があって勉強になりました。あとはやっぱり、リオオリンピックの閉会式の『トーキョーショー』ですね。椎名(林檎)さんと中田ヤスタカさん、MIKIKOさん率いるELEVENPLAYのダンサー、Rhizomatiks Researchなどでチームを組んでいて。最先端の技術と最先端のメンバーで作った、あれこそ本当の総合芸術だと思いますし。それぞれのクリエイターが妥協なく全力で向き合って、あのクオリティの高さまで持っていけるというのは本当に感動しました。

ーー今回コラボするKezzardrix、backspacetokyoも、今注目を集めている気鋭のクリエイターですよね。


DAOKO:実はKezzardrixさんは、今回のコラボレーションすることになって初めてお名前を知ったんですけど、作品を見ていたらぼくりりくんのMV(ぼくのりりっくのぼうよみ「Newspeak」)のモーションを担当していたりして。前々から面白いなと思っていたので、あっ、この方だったんだとなりましたね。そのMVの中では、歌詞が浮かび上がったり消えたり、ダンサーの動きとも連動していて、私のライブでの歌詞の見せ方と似ている部分もあるなと思いました。今、私の映像を作ってくれている監督さんは、メジャーデビュー当初からずっと一緒にやっている方で、他の方とコラボすることはほとんどなかったので。今回そこに新たな要素が加わることで、どんな化学変化が起こるのかは自分でも期待してます。リアルタイムでのモーショングラフィックス、モデリングは、私もずっとやってみたかったけど、なかなか実現できなかったので。今回夢を叶えてしまいました。

ーーステージの上でのDAOKOさんの動きに合わせてVJも変わっていったら、セッションのような感じもあって面白いですよね。

DAOKO:私も最近、より体感を意識させるようなライブにしたいなと思っていて。セットリストはもちろんですし、サウンド的にも踊らせるというか、体の動きを大切にしています。リズムや体の動きに合わせて、映像も一緒に同期してくっていうのはよりフィジカルで新しいと思います。今Kezzardrixさん、backspacetokyoさんとも打ち合わせをしている最中なんですけど、ある程度は演出を決めつつも、ライブ中に「じゃあ、こうやってみよう」って即興でやっていくのも面白そうですね。

ーー今回の「SOUND & VISION」のテーマは、“MUSIC×CREATIVE”ですが、音楽といろんなクリエイター、カルチャーが交わることは、アーティストとしてもクリエイティビティが刺激されるんじゃないかと思います。

DAOKO:そうですね。映像ももちろんですけど、私はライブが面白くなるためなら何でもしたいくらいの気持ちで。音楽と映像だけではなくて、ダンサーとか生楽器をを入れたりとかいろんなこと試してみたいなと思います。今はやっぱりテクノロジーも進化していて、とても面白い時代に音楽活動ができているなと思いますし、DAOKOっていうキャラクターを使いながら、その最先端のところで戦っていきたい。最近、視界がクリアになってきたというか、ライブでも、私がこう動いてこう語りかけたら、お客さんはこういう反応するだろうって考えられるようになってきて。自分のパフォーマンスに対してしっかり向き合えるようになりました。

――DAOKOさんは去年は『TOKYO MUSIC ODYSSEY』の『NEW FORCE』の方に出演し、ニューカマーなアーティストとして登場していましたが、今年はより、DAOKOさんのアーティスト性を発揮させることのできるステージですよね。

DAOKO:この1年は本当にいろんな経験をして、フェスに出演したりいろんなアーティストとも共演して、現場に出てライブを重ねました。なのでこの1年間で積んできたものを見せるのがDAOKOの今最大限できるパフォーマンスにつながるのかなと思います。開催は3月3日ですが、私、誕生日が3月4日なんですよ。

ーーそうなんですか! じゃあこのイベントが19歳最後のステージになるんですね。

DAOKO:そうなんです。19歳の締め括りにふさわしいライブにしたいなと思います。

(取材・文=若田悠希/撮影=竹内洋平)

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