乃木坂46 3期生『プリンシパル』はただの“原点回帰”ではないーーグループの「演劇性」はさらに深化

 

 しかし、乃木坂46の1・2期生から多方面にパフォーマーが輩出され、グループとして強いブランド力を作り上げている現在、その先達が経験してきた通過儀礼的なイベントとして『プリンシパル』をとらえることもできる。たとえば、過去の『プリンシパル』で目覚ましい活躍を見せてきた生田絵梨花や若月佑美らが、ミュージカルでもストレートプレイでも活躍の場を広げていることで、演劇公演の経験値として『プリンシパル』に大きな価値を見出しやすくなる。だからこそ、『3人のプリンシパル』で見せる3期生の躍動に対して、将来の活躍をより具体的に投影することもできる。それは、草創期の『プリンシパル』にはなかったものだ。

 また、3期生のみによる公演であった点を考えるとき、所属メンバーの活躍の機会をいかに作っていくかを再考する場として、『プリンシパル』を見直すこともできる。現在、特に乃木坂46の選抜常連メンバーは、個々のタレントとしてのバリューも大きくなっている。このことは乃木坂46の順調さを示すものだが、同時に、他のメンバーが活きる場をどのように確保していくかという課題が鮮明にもなっていく。1・2期生とは違う別働隊のようにして公演期間を過ごした3期生の『プリンシパル』は、その現状に新鮮な視点をもたらした。ひとつの円熟期を迎えているゆえに、グループが一定の形に収まりやすい現在の乃木坂46に、新しい物語を走らせるための有効な武器として『3人のプリンシパル』は機能したはずだ。

 『プリンシパル』シリーズの復活は、グループの原点をあらためて振り返ってみせるものである。ただし、『3人のプリンシパル』は単なる原点回帰ではなく、現在のグループに対して新たな機能や意味付けを見出す公演になっていたといえるだろう。

(写真=(C)乃木坂46LLC))

■香月孝史(Twitter
ライター。『宝塚イズム』などで執筆。著書に『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』(青弓社ライブラリー)がある。

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