デヴェンドラ・バンハート×never young beachが語り合う、自分だけの音の作り方「自分に正直であるかどうか」

デヴェンドラ・バンハート×never young beach特別対談

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「日本人としてできることを日本人の目線でやるしかない」(安部勇磨)

――日本の音楽に共通する感覚をどこに嗅ぎとることができますか?

デヴェンドラ:西洋の音楽の影響はもちろん受けてるよね。細野晴臣だってそうだよ。でも、それこそカンジ(漢字)のように、キッチリ、しっかりしている印象なんだ。ノグチ・イサムの彫刻のように整っているっていうか。たぶん……これは僕の私感だけど、日本発祥のものじゃなくて、他の国から取り入れた要素や文化でも、日本人はとことんつきつめてパーフェクトなものにする傾向があると思うんだ。でも、そのプロセスで何かがきっと失われるわけだよね。もしかしたら、そうやって失われたものに対する意識とか働きかけがどこかにあるから、ただパーフェクトなだけではないものになるんじゃないか?って気がするよ。ものごとが完璧かどうかは主観でしかないよね。だから、最終的に行き着くところ、あるものがあるべき姿でそこにある、ということを受け入れるしかない。そういうことを日本人はわかっているんじゃないかな。それが日本の音楽にも表れているという気がするな。

安部:日本人には日本人のルーツがあって、いくらアメリカの音楽が好きで、そのルーツをとりいれようとしても、どうしたって難しいところがあると思うんです。となると、日本人としてできることを日本人の目線でやるしかないし、その方が結局は日本以外の人たちにも伝わると思っているんです。だから僕は日本語で歌いたいし、英語で歌っている日本人アーティストでもいいものはあると思うんですけど、やっぱり日本語で歌った方が伝わるんじゃないかなって。

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デヴェンドラ:英語で歌っている日本人アーティストの曲も知ってるし、英語と日本語が混じってるのでも好きな曲があるよ。それはそれですごくクールだ。それこそ他国のカルチャーの影響をうまくフィルタリングしてとりいれてるって感じるからね。それが結果として新しいものになっていくなら、僕はそれでも面白いと感じるよ。それより、そのまま真似っこみたいにしているのが一番つまらない。たとえ日本語で歌っていても、昔の日本の音楽をそのまま真似しただけのものだったらやっぱり面白く感じないと思う。しっかり消化して自分のものにして発信さえしていれば、ね。ホンモノであるかどうかより、自分に正直であるかどうか。そこが分かれ目じゃないかな。もちろん、日本語で歌っている音楽でも歌詞にすごく興味を持てるものもある。細野さんもそうだし、さかな(ポコペンと西脇一弘によるユニット)とかも大好きだ。彼らの歌詞はすごく抽象的でぶっとんでいるんだけど、そこがすごく面白い。日本人の友人に、さかなの歌詞について聞いたんだけど、説明に4時間くらいかかっちゃった(笑)。

安部:なるほどね。確かにそうだなあ。じゃあ、僕らの歌を聴いて、歌詞に興味を持ってくれたりしますか?(笑)

デヴェンドラ:うん。だって、君たちの音楽をLAで車走らせながら聴いたりしてるんだけど、何歌ってるんだろう?って気になって日本人の友人に訊ねたこともあるよ。どんなこと歌ってるの? 曲によって違う? それとも全体を通して何かテーマがあるのかな?

安部:1stアルバム(『YASHINOKI HOUSE』)は、まだ作るのが楽しくて楽しくて仕方ない時だったから、「天気がいいだけで気持ちいいね!」「髪が伸びてきたからカットしよう!」とかって感じの歌詞が多いですね。というのも、日本の音楽の多くは重かったり暗かったりして、そういう音楽は嫌いじゃないけど聴いていて疲れたりするんですよ。僕、実はもう両親共に亡くなっているんですけど、今はバンド・メンバーが家族みたいな感じになっていて、セカンドではそういう新しい家族とも言える今のこのメンバーとツアーに出たり、たくさんライブをやったりしているハッピーで充実した気持ちを歌にしています。

デヴェンドラ:なるほどね。歌詞の英訳ってない?

安部:今はないけど……送る!(笑)

デヴェンドラ:ハイ、アリガト。やっぱりいいなと思えるものは理解したいと思うんだ。もちろん、映画や文学もそうだけど、内容を説明されても理解するのが結構大変だったりはする。僕は日本の映画も好きで、例えば仲代達矢が出ている『切腹』とか、『子連れ狼』とか『服部半蔵』とか、あと北野武の『座頭市』とか勝新太郎の作品も大好きなんだけど……まあ、アメリカでいえばフランク・シナトラの世界みたいなものかもしれないけど……その世界を理解するのはやっぱりなかなか容易いことじゃない。でも、それらの作品はモノマネじゃない日本の文化としての良さがある。僕はそういう日本映画を字幕なしで観るんだ。もちろん、日本語がわからないから理解できない。そうやって観続けることで日本語がわかるようになるかもしれないし、ひいては、その真髄や文化に触れることができるかもしれない。そう思って観ているんだ。君たち、見てないならぜひ観た方がいいよ(笑)。あと、アメリカにツアーで来るといいよ。

安部:いやあ、行きたいんですけどねえ……どうやったら実現するんですかね(笑)。

デヴェンドラ:なんとか僕もかけあってみようか?

安部:ホントですか! ホントにホントですか! それを励みに頑張りますよ!

デヴェンドラ:あまり期待されても困るけどね(笑)。

(取材・文=岡村詩野/写真=松木宏祐)

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■リリース情報
デヴェンドラ・バンハート
『エイプ・イン・ピンク・マーブル』
発売:2016年10月19日
価格:¥2,400(税抜)
1. Middle Names / ミドル・ネームズ
2. Good Time Charlie / グッド・タイム・チャーリー
3. Jon Lends a Hand / ジョン・レンズ・ア・ハンド
4. Mara / マラ
5. Fancy Man / ファンシー・マン
6. Fig in Leather / フィグ・イン・レザー
7. Theme for a Taiwanese Woman in Lime Green / ライム・グリーンの服を着た台湾の婦人のテーマ
8. Souvenirs / スーベニール
9. Mourner's Dance / 哀悼者の踊り
10. Saturday Night / 土曜日の夜
11. Linda / リンダ
12. Lucky / 幸運
13. Celebration / 祝福
14. Eviction Party / エヴィクション・パーティー(Bonus Track)

■デヴェンドラ・バンハート来日公演情報
5月8日(月) Billboard Live OSAKA
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30

5月10日(水) Billboard Live TOKYO
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30

http://www.billboard-live.com/

never young beach
『fam fam』
発売:2016 年6月8日
価格:¥2,300(税抜)
1. Pink Jungle House
2. Motel
3. 自転車にのって
4. fam fam
5. なんもない日
6. 雨が降れば
7. 夢で逢えたら
8. 明るい未来
9. お別れの歌

■オフィシャルサイト
デヴェンドラ・バンハート
http://wmg.jp/artist/devendrabanhart/

never young beach
http://neveryoungbeach.jp/

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