1stアルバム『掌の戦争』インタビュー

音楽、映像、ノベル、コミック……nowiseeが発信するJ-POPの進化形「背骨になるのは音楽」

「リスペクトが集中しないとバンドってもたない」(Minimum Root)

——あと面白いのが、普通バンドでいうとライブを軸にするところを、nowiseeではスマホを軸にされているところなんですね。いわゆる、インターネット上でのコンテンツがライブハウス感覚でもあり、物語を展開させていく場所として、フットワーク軽く使われているのがすごいなと。月イチでミュージックビデオも制作というのはかなりハードルを自分たちであげてますよね?

Root:よく残酷tone(Artwork)とも話し合ってるんですけど、メンバーに動画やアートワークをみれる人がいないと無理ですよね。普通に仕事だったらさすがにこれはできないと。残酷tone自身がnowiseeで何かを届けようという気持ちがあるから映像を生み出せていますけど、なかなか大変だと思います。ほんと、ずっと制作してますからね(苦笑)。

——スマホ時代の今、音楽を聴くというより観て楽しんでいる人が増えています。そう考えればアートワーク、映像を生み出すメンバーがバンドにいるのは当たり前かもしれませんよね。

Root:そう思うんですよ。日本でも海外でもリリックビデオをYouTubeでどこでも気軽に楽しめるのが当たり前になってますよね。以前より、テクノロジーの進化で音楽は誰でもスマホで手軽に作れる環境になっています。そして、最近はミュージックビデオもスマホで気軽に作れる環境になりましたよね。そんななか、バンドメンバーにミュージックビデオを作るメンバーがいるのは当たり前のことだと感じています。

——しかもそれが、かなりクオリティーの高いところで勝負されているのがプロフェッショナルの誇りですよね。nowiseeのコミックやノベルなど、設定の緻密さへのこだわりも大きいですよね。原作はどなたが考えられたのですか?

Root:基本的には残酷toneと俺で考えました。実際に文字への書き起こしだったり、最終チェックはコライト(共同制作)をやってくれている人がいます。全員でいっせいに進めないとこのスピードではやれないんですよ。それこそ、物語の大きな枠組みを決めていくのが得意な人がいれば、細かい設定を絞り込むのが好きな人もいるし。仲間が集まれたからこそ生まれた産物なんですよ。

Octave:みんな、ちゃんと愛を持ってやってくれるからプロジェクトへの相乗効果が大きいんです。

Root:仕事だったらこれ以上やらないだろうなってくらいやってくれますね。すごく愛を込めてやってくれているのがわかるんです。そうなると、もちろん自分も妥協せずに良いものを生まなきゃなってチカラになるんですね。

——ちょうど僕と同世代の嫁が漫画アプリ『comico』にハマって。nowiseeをススメられたんですよ。『comico』って今、若い世代にものすごい人気のアプリなんですよね。『comico』と音楽でのコラボという目利き感も新しいなと思いました。無料で楽しめるし、入り口としてものすごく正しいなと。

Root:もともと、良い音楽を作ったり、良い映像を作ることには徹底的に自信がありました。けど、良いものを広げるには最高のスタッフが必要で、今回のプロジェクトでは、その「どうやって広げるか?」を考えるスタッフも集結しています。なので、俺らはクリエイトに集中できるんですね。『comico』のアイデアも、そのなかのひとつなんです。

——漫画とコラボした、新しいタイプのミュージックビデオですよね。なかなか一般的な入り口を作りづらい時代と言われているなか、『comico』を入り口とするアイディアにはやられました。さらに、サウンドへのこだわりとして、世界最高峰のマスタリングスタジオSterlingSoundの、トム・コインにマスタリングを依頼されたことにも驚かされました。

Root:俺が聞いた話だと、去年テイラー・スウィフトとアデルぐらいしか対人マスタリングを受けていないと聞きました。オファーしたら、トムが受けてくれたのはとても嬉しかったですね。

——それは作品の仕上げとしてとても心強いですよね。ちなみにnowiseeって日本のポップカルチャーの集大成みたいなことが裏テーマとしてありませんか? 普通バンドマンだと海外アーティストへの憧れとかわかりやすいんですけど、目標はそこではないですよね。日本ローカルなアートだからこそ、世界レベルのマスタリングを得て、世界グローバルへ発信したいという気持ちが伝わってきたんです。

Root:まさにそのとおりですね。海外に出て行ける日本の文化って今はアニメが大きいじゃないですか? 俺らが音楽を世界の人たちに聴いてもらいたいと思ったときに、アニメーションがあると入り口になるんですね。まずは国内だと思ってますけど、YouTubeの動画説明欄には英語詞を入れたり、海外展開も夢見ています。

——Octaveさんは、最初この壮大なプロジェクトの話を聞いてどう思われました?

Octave:最初は映像と一緒に音楽コンテンツを作るのってどんなだろう??と自分の中では漠然としたものだったんです。一緒にやりはじめたら、どんどん内容が濃くなって(苦笑)。今はアプリ限定で配信している曲もあるのでさらに制作は追い込まれてますね(苦笑)。

Root:そもそも、プロジェクトのスタート前から、2016年8月に出るアルバムの前月の7月ぐらいになると、制作進行的につらいというのは、始めたころからわかっていて(苦笑)。なかなか前準備をきれいにできるわけもなく大変でしたね。しかも、リリースしても止まらずにまだまだ続いていきますから。

——アプリも、月額課金でのサブスクリプションで、ゴールド会員などランクがあるのも面白いですよね。日本では、サブスクでの音楽配信サービスが、いまだ大成功とはいえない状況の中、アーティスト個々のサブスクという座組に興味があるんですよ。それこそ、日本はファンクラブ・システムがものすごくうまくいっていた国だと思うので、それを考えるとnowiseeの考え方は正しくてやれることを全部やられてますよね。

Octave:本編で配信する毎月1曲というのは、毎月シングル曲にできるようなクオリティの高いものをガシガシ作ってるんですけど、いわゆるアルバムにだけ入ってるような流して聴けるような曲はアプリで追加配信してるんです。ファンになってくれた方に楽しんで欲しい曲たちですね。

Root:でも、流して聴けるものではないけどね、だいぶ濃いよ(笑)。nowiseeの楽曲で、アプリでしか聞けない曲は、OctaveがLogicで作っただけのものとか。シングル・レベルの毎月配信には出せなかったけど、曲としては自信のあるもの。あと表曲のアコースティックバージョン。それらを、あまり色づけしないで、歌だけ録り直してミックスをして追加配信していますOctaveの一人世界を堪能できるOctaveCroquisという名前も、メンバーにArtwork担当のtoneがいるから出てきた名前です。

——なるほど。ボーカリストという入り口となるインターフェースとして、Octave さんへの信頼を伺えるコメントですよね。そもそも、RootさんがOctaveさんをボーカリストとして起用したとき、どんなところに魅力を感じられたのですか?

Root:Octaveは、とにかく声が気になっていて。レコーディング後に過去で一番聴き返した人だったんですよ。彼女は歌うべき場所を用意したら大暴れできて成功出来るなって思ったんです。残酷toneもOctaveの声がすごく良いといっていて。Octaveの声じゃなかったらバンド結成には至らなかったと思いますね。リスペクトが集中しないとバンドってもたないんですよ。すごいメンバーが集まっても、俺が俺がってやっていたら絶対バラバラになっちゃうから。この声ありきだよねっていう共有感が、nowiseeには確実にありますね。

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