欅坂46はなぜ面白く、新しい? 2ndシングルが表す「変化し続ける自由なスタンス」

 欅坂46が8月10日、待望の2ndシングル『世界には愛しかない』をリリースした。彼女たちのデビューシングル『サイレントマジョリティー』は、女性アーティストのデビューシングル初週売上で歴代最高記録を更新し、YouTubeでのMVの再生回数も2000万回を超えている。グループ結成から1年を待たずして、多くの紙媒体の表紙を飾り、テレビの冠番組が2本、ラジオのレギュラー1本、メンバー総出演のドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』(テレビ東京系)が放送中と、その勢いはとどまるところを知らないし、ここまで2作目へのハードルが上がったアーティストは近年いないのではないだろうか。だが、『世界には愛しかない』も、その勢いそのままに、高くなったハードルを軽々と越える力強い一枚となった。

彼女たちは「世界には愛しかない」と言い切ってしまう

 1stシングル『サイレントマジョリティー』に続く2ndシングルのタイトルは『世界には愛しかない』。1作目が聞き慣れないカタカナ語だったのに対し、今回は何やらラブリーでハッピーなポジティブソングに振り切ったのかと思わせるタイトルだが、そんな想像は表題曲のイントロで早々に覆ってしまう。フィードバックの向こうからやってくる疾走感のあるアコースティックギターのカッティングと、風を切るように踊るピアノの音色は、何かが始まる期待と少しばかりの不安を感じさせてくれる。「サイレントマジョリティー」のイントロのようにいきなり堂々としているわけではなく、まだこれから何が始まるのかはその先に進んでみないと見えてこない。

 そう思うと歌い出しはいきなりのポエトリーリーディング。間奏や大サビ前、アウトロで使われることはあっても、歌い出しからというのはあまり聴いたことがない。このポエトリーリーディングは、この曲の世界にリスナーをグッと引き込むことができるだけでなく、後々ここが「遊び」の部分となって活きてくるだろう。メロディーに縛られずに詞を歌えるため、彼女たちの振り幅が広がれば広がるほどその表現やアレンジが後々効いてくる。そして、意表をついたポエトリーリーディングの印象に劣らない、伸びやかで力強いサビが爽快だ。「サイレントマジョリティー」よりもシンプルな表現だが、そのメッセージを届けるに十分な歌と歌い手たちがそこにある。

 「世界には愛しかない」と大胆に言い切るタイトルは、理想を語る若者の戯言ではない。楽観主義的な空気は詞にも曲にもない。彼女たちは<夕立も予測できない未来>も受け止め、それでも<世界には愛しかない>んだと言い切ってしまう。それが彼女たち若者のリアリティーであり、まさに「サイレントマジョリティー」から続く欅坂46のスタイルだ。

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