『EDP2016』が証明した、プラットフォームとしての“音ゲー”が持つポテンシャル

 

 イベントが中盤に差し掛かったころ、スクリーンに「1999年に発表されたこの曲は、日本のハードコアテクノシーンを一変させた」という文字が映し出され、L.E.Dが「HELL SCAPER」を披露。ここでL.E.Dの同曲に憧れて音楽を始めたDJ TECHNORCHIがステージに登場し、彼の手によりアレンジされた「HELL SCAPER-Last Escape Remix-」を流し、2人はここからエモーショナルな雰囲気のまま、次々と楽曲をドロップした。パート最後の「真 地獄超特急 -HELL or HELL-」が終わると、「今日 すべての夢がかなった」「そして、今のDJ TECHNORCH君の存在そのものが、私が遥か昔に語ったささやかな夢を叶えてくれているんだよね」というテロップ(『beatmania IIDX 23 copula』の楽曲コメント)が読み上げられ、その後2人は熱い抱擁を交わし、涙する観客も多くみられた。

 

 ライブ後半は、DJ YOSHITAKAとSota Fujimoriによるユニット・VENUSからスタート。「FUJIMORI-祭-FESTIVAL」や「Wow Wow VENUS」などで明るく会場を盛り上げると、「恋愛観測-VENUS Mix-」では原曲Ver.を歌うNU-KOと、PONが登場。NU-KOのボーカルで原曲らしさを見せながら、曲間に「High School Love」を挟むという「-VENUS Mix-」ならではの演出もみられた。

 

 その後、SOUND HOLICやU1-ASAMIのプレイがあり、wacとPONがステージへ。wacが「付き合いの長い人を呼びましょう」と語り、常盤ゆうを呼び込むと、長い音楽ゲーム史のなかでも、トップクラスの人気曲「murmur twins」を披露。この光景に、感動を隠し切れないファンの姿が多くみられたが、この流れはまだ続く。同曲にいちリスナーとして強い感銘を受け、最新作で常盤をゲストボーカルに招聘したOSTER projectの「ラブラドライト」にも、彼女が登場。その光景に、先人が切り拓いた音楽ゲームという舞台とジャンルが、次世代へと託された瞬間を垣間見ることができた。

 

 終盤に突入したライブは、HH×MM×ST から、Ryu☆、Dai、Mayumi Morinaga、Xceon(Starving Trancer)を加えた5人からスタート。彼らにとってユニット第一弾の楽曲「Follow Tomorrow」や、Ryu☆名義の「Din Don Dan」、『beatmania IIDX 23 copula』収録の「Everlasting Last」などを披露した。

 

 本編ラストパートは、Ryu☆、dj TAKA、kors Kという『beatnation』の中心人物たち。まずは「The Wind of Gold」と「中華急行」のマッシュアップを披露したり、Ryu☆のリミックスコンテストで最優秀賞を受賞した、TAKU1175 feat.かなたんによる「Din Don Dan(Fusion Remix)」と、しーけーによる「The star in eclipse」を発表。そこから「Smooooch・∀・2014」や「ABSOLUTE(Ryu☆Remix)」、「I’m so Happy(STARLiGHT Remix)」と、次々に人気曲をプレイし、最後は3人にHH×MM×STを加えた「朧(dj TAKA Remix)」で締めくくった。

 

 歓声に応えて行なわれたアンコール前には、スクリーンに『SOUND VOLTEX』の選曲画面が表示され、「She is my Wife」が選択されると、SUPER STAR 満-MITSURU-が登場。しかし、彼が歌いだそうとしたところで“すーぱーアイドル☆ミツル子”に出番を奪われ、そのまま全員が登場。ライブはエンディングを迎えた。

 

 Ryu☆はステージ上で「みなさんの目が『次<beatnation>10周年じゃね?』という目をしている!」と語ると、dj TAKAも「次やりましょう!」とこれに応え、会場から歓声が上がった。また、DJ YOSHITAKAは「『SOUND VOLTEX』を作ってからの、一つの夢が叶った。ステージで『SOUND VOLTEX』のみなさんに囲まれて演奏する。TAKAさんと俺はね、これがやりたかったんだよ!」と熱くコメントし、この日のイベントは終了した。

 同人音楽や動画サイト発の音楽など、様々なジャンルを飛び越えながら、クリエイターのプラットフォームとして機能し続ける音楽ゲーム。その歴史を作ってきた先人たちと、今後継承していくであろう若手が一堂に会した今回のイベントは、まだまだこのプラットフォームにポテンシャルがあることを証明したのではないか。

(取材・文=中村拓海)

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