オリラジの「PERFECT HUMAN」なぜ流行? ダンスミュージックとお笑いの“合流地点”を読む
本人たちが意識したのかどうかは不明だが、確かにオリラジは自身のネタに『Party Rock Anthem』を取り入れていた過去などもあり、LMFAOに親和性を感じていたのかもしれない。同氏はさらに、「PERFECT HUMAN」のヒットには日本人とお笑い、そしてダンスミュージックの関係性が影響していることを指摘した。
「LMFAOはアメリカでは一発屋的な扱いで、2012年にはすでに活動休止しています。ユーモラスなエレクトロはすでに下火といった状況ですが、日本ではパーティーEDMのブームが根強く人気です。その背景には、90年代のビッグビートから00年代のエレクトロ、そして2010年代のEDMと常に軽薄なパーティー・ダンス・ミュージックのDJとして第一線で活躍してきたFatboy Slimの功績もあるかもしれない。特にこのジャンルとお笑いには、『M-1グランプリ』の第一回から出囃子にFatboy Slimの『Because We Can』が使用されているという接点もある。あくまで一つの仮説としてですが、日本のお笑いファンは『Because We Can』を通してパーティーEDM的なダンスミュージックが刷り込まれていたからこそ、『PERFECT HUMAN』が浸透したのではないでしょうか」
最後に柴氏はこれまでに挙げてきたダンスミュージックを総括しながら「PERFECT HUMAN」についてこう述べた。
「K-POPの音楽性にはR&Bやヒップホップ、エレクトロニック・ダンス・ミュージックなど、アメリカのメインストリーム・ポップの潮流をトレースしたものが多い。そこにユーモラスな要素を入れ込んだPSYの『GANGNAM STYLE』が世界的にヒットした結果、LMFAOの“悪ふざけエレクトロ”が本国で下火になった後も東アジアには長く根付くことになった。ここまで言うと誇大妄想的ですが、オリラジはLMFAOからPSYを経由してアメリカの黒人音楽が“悪ふざけダンスミュージック”に接続されて東アジアに根付いた歴史と、日本の『オッペケペー節』からはじまるお笑い音楽史、その壮大な流れの合流地点に存在しているグループと言うことすらできる。だからこそ今回のようなスマッシュヒットに繋がったのではないでしょうか」
テレビ朝日系『検索ちゃん』やフジテレビ系『ENGEIグランドスラム』で披露したのがブレイクのきっかけといわれている「PERFECT HUMAN」。今後、後を追うようにリズムネタにダンスミュージックの波が大きく到来するのかどうか、引き続きその動向を追いたい。
(取材・文=渡辺彰浩)