矢野利裕のジャニーズ批評

Sexy Zone「カラフルEyes」に隠された“まさかの展開”とは? 矢野利裕が音と歌詞から読み解く

 初めて明示的に「愛す」と言われるのはサビの「目で愛す愛す愛す」の部分だが、他人の気持ちに鈍感な筆者は、それとて「目で合図合図合図」だと思って聴いていた。「目」でするアクションと言えば「合図」でしょう、と。しかも、さらにニクいのは、サビの2周目、「Colorful Eyes Eyes」の「Eyes」の部分と韻を踏むかたちで、「大好き」の「だい‐sh[無声音]」が挿入され、そのまま「sh[無声音]‐き」と続き、直後にはもう「Kiss Kiss Kiss」となっていることである。つまりここには、「瞳で合図を送られていたと勘違いをしていたら、気づいたときにはもうキスを奪われていた!」という構造がある。しかも、いつのまにか「大好き」と告げられてもいる! 「まさかの展開」というのは、単にキスをされたことではなく、この一連の「展開」すべてを指している。指摘するのも野暮だが、「Kiss Kiss Kiss」のなかに二度の「好き」が入り込んでいることも、もちろん見逃せない(聴き逃せない)。

 最初、なんとなく聴いていたとき、途中の佐藤勝利の「僕も君が好きだよ」というセリフに対して、やけに唐突な印象を受けた。「『僕も』って、こいつ、いつの間に誰に告白されたんだ?」と。まあ、目立つブレイクの部分なので、唐突でもインパクトがあれば良いのだろうと思っていたが、歌詞を確認したのちは印象が変わる。そうか、「いつの間に」どころか、最初から最後まで「愛す」と言われ続けていたのだ。だから、明示されない「愛=Eye」をしっかりと受け取って「僕も君が好きだよ」と応える、というのが、この曲が示す物語なのだ。うむ、趣向が凝らされている。情報量が多くて、演奏と同様、ぜいたくな楽曲だ。

■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。

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