GLIM SPANKYが見据える“普遍的な音楽”「要らないものは削ぎ落とし、何をしたいかをハッキリ言う」

GLIM SPANKYが見据える“普遍的な音楽”

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「自分たちのスタイルの中で上手く盛り上げる方法や楽曲を探していきたい」(亀本)

――では、5曲目の「夜明けのフォーク」のストリングスについてはどうでしょう。

松尾:私たちにとっては、ストリングスはロックと最高に合う楽器なんですよ。ビートルズやオアシスのような、UKロック的なものってそういうイメージがあって。楽曲自体、ブリティッシュなサウンドにしたいというイメージが強かったので、そこに忠実になった結果としてストリングスに行きついたんです。

――変化球というより王道という意識だったと。あと、今回のミニアルバムでは「夜明けのフォーク」だけ、大学生時代に作った曲なんですね。

松尾:大学2年生のとき、映画学科の先輩に「自主映画を作るから、大切な人が死ぬということを題材に主題歌を書き下ろしてくれ」と言われて作ったものです。当時は自分なりに頑張って想像したものの、私の身の回りでは誰も亡くなった友だちがいなかったからなのか、あまりリアリティがなかったというか……本当の完成ではないような気がして、ライブではあまり歌ってきませんでした。

――ではなぜこのタイミングで?

松尾:2014年に私がすごく尊敬していて、仲も良かった同じミュージシャンの友人が自殺してしまったんです。私自身、その子の才能をすごいと思っていたし「この子の歌は絶対に世間に届く」と信じて応援していたので、本当に悲しかったし、トラウマみたいになってしまった。だからこそ、自分の悲しさや亡くなった子の友だちの背中も押せるような曲を作らなきゃと思って「夜明けのフォーク」の歌詞をもう一度書き直すことにしたんです。もちろん、先輩の映画があって生まれた曲だから、以前の歌詞の内容を全部なくさないようにして。シンプルに、自分が思ったように書けたという感じですね。

――松尾さんにとっては「今歌うべき曲」だったんですね。ミニアルバムのタイトルはルー・リードへのオマージュでもあるわけですが、「ワイルド・サイドを行け」を表題曲にした理由は?

松尾:5曲入りのミニアルバムを作るのに、すでにほか4曲のデモが出来上がったとき「リードトラックは疾走感のあるものがいい」という話になりました。あと、GLIM SPANKYとしては1stアルバムを経ての作品なので、最初は、今までの楽曲と全然違うテイストに挑戦しようと考えていましたが、同時に「今の時代、同じことを何回か世間に訴えかけないと認識してもらえないのかも」と思って。ここ数回のシングル表題曲である「褒めろよ」と「リアル鬼ごっこ」は疾走感のあるロックだったので、もう一発強気に攻めようということで「ワイルド・サイドを行け」を書き下ろしたんです。

亀本:レミさんの言ったことに補足すると、今いるファンの方々も大事だけど、まだまだ新しい人たちに知ってほしいし、「GLIM SPANKYってこういうバンド!」みたいなイメージをある程度植え付けたかったんです。

松尾:「どんな曲を歌ってもファンは付いてきてくれる」という確信をもって、これからも挑戦し続けるバンドでありたいという決意表明みたいなものですね。

――ファンといえば、取材前日にはサザンオールスターズの桑田佳祐さんがラジオ『桑田佳祐のやさしい夜遊び』で年間邦楽シングルランキングの2位にGLIM SPANKYを挙げていましたね。彼も数度にわたってラジオで紹介しているGLIM SPANKYファンの一人です。

松尾:その話を聞いて本当にビックリしちゃって(笑)。日本の音楽シーンを引っ張っている方に、公共の電波のうえで褒められるのは本当にうれしいですね。ほかにも年末になって、いろいろな方がラジオで、GLIM SPANKYの名前を出してくださっていて、年代やキャリア、ジャンルなんて全く関係ない届き方をしたという事実が嬉しい反面、まだ届いていないという実感もあるんです。だから2016年は、もっと良い意味での裏切りをしていきたいですね。

――届けていくリスナーについても、ライブを見ている限りではさらに若いファンを開拓していけるのではないでしょうか。

亀本:そうですね。だからこそ今回の作品で「ワイルド・サイドを行け」や「NEXT ONE」「BOYS&GIRLS」のように、ライブを意識した曲を入れたという部分が大きいです。桑田さんのような方がいらっしゃるJ-POPと、若い子が聴くロックバンドのシーンは違う世界みたいになっているし、後者はフェスありきみたいな部分もあるじゃないですか。でも、僕らと違うことをやっているバンドに合わせるわけじゃなくて、自分たちのスタイルの中で上手く盛り上げる方法や楽曲を探していきたくて。今はその武器が整ってきたと実感しています。

松尾:フェスで統一した動きをしている人たちも、ほかのノリ方を知らないから、そうなっているだけだと思うので、私たちが「こういうロックもあるんですよ、こんなノリ方があるんだよ」って提示していきたい。今のバンドシーンも素晴らしいですが、徐々に“ロックバンドの音楽”と呼ばれているものの土台が狭くなってきているとも感じていて。だからこそ、世界を目指す私たちや同じ目標を掲げる若いバンドがそこを少しでも広げて、新しいロックの夜明けを作るべきだと思っています。

――「同じ目標を掲げる若いバンド」と言いましたが、歌詞でも今回の作品は特に「仲間」を意識した言葉が多いと感じました。GLIM SPANKYはどのあたりのバンドを「仲間」として意識しているんですか?

松尾:私たちはホントに友だちが少ないのですが(笑)、例えばそれが全く同じジャンルじゃなくても、新しいカルチャーを作りたいと思っているバンドはまだまだいっぱいいるはずで。a flood of circleの佐々木亮介さんも、常にライブで「俺はロックンロールが好きなんだ、ブルースを伝えてやる!」って言っていますよね。そういう人たちがつながれば、絶対面白い時代が作れると思うんです。

亀本:ほかにも、同世代で海外のロックに強く影響を受けているバンドたちには、共鳴することも多いですね。対照的にポップカルチャーの畑だったとしても、「新しい時代を作るんだ!」って意気込みの人に共感できることもあります。

松尾:でも、私たちを含め、若者ってなかなか心を開かないじゃないですか(苦笑)。だから、自分たちから言っていかないとダメだなと思って、この曲を書いたんですよ。

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