米米CLUBの功績を今こそ振り返る エンタメ性と音楽的探求はどう共存してきたか

 バブル景気と呼ばれた80年代後半は、生活感の薄い無機的なモノがステータスとされていたことがある。そんな都会派感覚とシニカルなニヒリズムを独自の享楽主義で華々しくセンスを開花させ、90年代に国民的バンドにのし上がったバンドがいる。ファンク、ニューウェーヴ、ロック、ムード歌謡……、ごった煮の音楽を奏でながら、コント、寸劇、落語まで網羅する得体の知れない超個性派エンターテインメント集団・米米CLUBである。ジェームス小野田とカールスモーキー石井という相反する二人のボーカリストによる怪しいキャラクター性など、かつては“イロモノ”バンドと呼ばれたこともあった。しかし、そこに終わらなかったのは、高い音楽スキルと卓越したセンスがあったからに他ならない。

 デビューからちょうど30年目にあたる2015年10月21日、そんな米米CLUBの名作と迷作を含むオリジナルアルバム全16作がリマスタリングされ、Blu-Spec2とハイレゾ配信で蘇った。iTunes Music Store、Apple Musicでも“iTunes Remastered”として配信されている。結成当初から「エンターテインメントショーのメインが音楽」「二度と同じステージはやらない」を掲る米米の真骨頂はライブにあり、音源だけで魅力を知るのは困難なことでもある。「ライブとレコードは別モノ」とアレンジが異なることも多いが「家で繰り返し聴く」ことを前提とした聴きやすさと親しみやすさ、何よりも魅力溢れる楽曲と作品としてのクオリティの高さは特筆すべきところである。

<初期> “米米クラブ”期

米米CLUB オリジナルアルバム全16タイトル再発 特典映像ダイジェスト(1)

 米米CLUBの根幹にあるのは、キッド・クレオール&ザ・ココナッツ(Kid Creole and the Coconuts、ファンクとラテンを融合した“ファンカラティーナ”の元祖バンド。93年6月には米米曲をカヴァーしたアルバム『KC2 PLAYS K2C』をリリース、共演も果たす)とPファンク(Parliament Funkadelic)であるが、初期はトーキング・ヘッズやキャバレー・ボルテールをフェイバリットに挙げており、ニューウェーヴ、ニューロマンティックの色が強い。有頂天と対バンすることも多く、ナゴムレコードに誘われたこともあるとか。元ホーン・スペクトラム(のちのスペクトラム)の中村哲プロデュースによるデビューアルバム『シャリ・シャリズム』(1985年)は特にその傾向が強く、新人とは思えないまとまりのあるサウンドに仕上がっている。メンバーが後年に「納得が行かなかった」と発言しているものの、統一感と完成度は申し分ない。対して、2nd『E・B・I・S』(1986年)はセルフプロデュースであり、少々粗削りな印象もあるが、遊び心も多く、楽曲バリエーションの豊かさも魅力的な作品だ。

 『KOMEGUNY』(1987年)は初の海外、LAレコーディングである。ひたすら“二枚目”路線に徹しており、ファンの中でもとりわけ人気が高い。あの「浪漫飛行」も収録されているが、シングルカットされミリオンヒットを出すのは3年後の話。当時はこのようなファンタジー作風のポップスはまだなく、当初より「航空会社のCMソングを狙って作った」という異色な楽曲でもあった。

 初期米米サウンドの核となっていたのは、博多めぐみ(Gt)だ。スカートをなびかせながら繰り出す、エフェクティブとテクニカルが共存するアバンギャルドなギタープレイと、実は“女性ではなかった”という衝撃の事実に、驚きを隠せなかったファンも多かったはずである。

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