矢野利裕のジャニーズ批評
SMAPが『Otherside/愛が止まるまでは』で体現した、“新旧ロック”におけるボーカルの違い
このように、こなれないSMAPのボーカルは、逆説的にJロックの進化(?)を体現しているようである。というか、「Otherside」における木村のノリノリのボーカルとの差! BPM自体はそんなに変わらないが、言葉が詰めこなれていないぶん、みんなのびのびと歌っていて、木村も「ホウ!」とかシャウトしている。「愛が止まるまでは」では違和感のあった息のこもったボーカルも、こちらではとても自然に馴染んでいるし、微妙な歌い分けすらもおこなっていて、とても楽しそうだ。
ロック成分の強い両A面シングルは、はからずも新旧のロックにおけるボーカルの違いを示しているようで興味深かった。どちらも悪い曲ではないので、両曲のあいだに甲乙はつけがたいのだが、もしカラオケ(接待カラオケではなく)で歌うのなら「愛が止まるまでは」かな、と思う。楽曲に対する言葉の詰め込み具合は、もうあのくらいでないと物足りない。
■矢野利裕(やの・としひろ)
批評、ライター、DJ、イラスト。共著に、大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸『村上春樹と一九九〇年代』(おうふう)などがある。