『Music Factory Tokyo』スペシャルインタビュー

Wienners・玉屋2060%が音楽作家としての“顔”を語る 「普通のことをやって、個性をどれだけ出せるか試したかった」

 

「20歳を超えて、ようやくJ-POPを聴くようになったんです(笑)」

――そこで周りの人を誘ってバンドを結成する、という流れにはならなかったのでしょうか。

玉屋:バンドはいつかやりたいと思いつつも、自分が作った宅録もどきの音源を聴いているので満足でした。「これが何かの機会で世に出たら、絶対売れる。だからバンドを組まなくても、どうせ広まる」と思っていましたから。世の中を知らないが故の強気ですよね。

――そんなパンク一辺倒の玉屋さんが、なせポップスを聴くように?

玉屋:ポップスをいきなり聴くようになったわけではなく、FRUITYがシュガー・ベイブに影響を受けていたことを知ったり、WATTSでヒップホップ文化に触れて、サンプリングやターンテーブルの音が生バンドに入っていく面白さを体感したからなんですよ。それからPlus-Tech Squeeze Boxというユニットに出会って、サンプリングを使ったキャッチーなポップソングのごちゃまぜ感に衝撃を受けました。20歳を超えて、ようやくJ-POPを聴くようになったんです(笑)。

――今まで点になっていたすべての音楽体験が、一本の線で繋がったような感覚ですか。

玉屋:はい。でも、周りを見たときに、それをパンクバンドでやっている人がいなくて。「サンプラーを使ってパンクを表現できないのか?」、「それを生でやれたらカッコいいんじゃないか?」という疑問が生まれ、結果的に自分でやったほうがいいという考えになり、Wiennersを結成しました。これまでやっていたバンドは3ピースでしたが、自分の考えていた音楽は、3人で表現しきれるものではなかったし、パンクという枠に囚われるのもよくないと感じ、「結果的にアウトプットがパンクだったらいい」と思えるようになったんです。ポップス・ロックでも、サンプリングやシンセサイザーを使ってどんなジャンルを食べようとも、肛門がパンクならいいというか(笑)。そういう考えで分け隔てなく音楽を聴くようになったら、徐々に自分の出す音も変わってきました。

――そういう意味ではFRUITYやSCHOOL JACKETSが年月を経て辿り着いたYOUR SONG IS GOODも、ワールドミュージックやスカなど、様々なジャンルを食してパンクにアウトプットしたバンドといえますね。

玉屋:彼らはちゃんと栄養のあるものを食べてアウトプットしているのがわかりますよね。どうしようもないスナック菓子みたいな音楽ばかり食べていたら、ああいう風にはなれないから。僕も何でもアリと思いつつ、ちゃんと栄養素のあるものを取らなければと思っているので、まだ未だにがんじがらめな部分もあるんですけど。

――改めてJ-POPを聴き直したタイミングで、いちばんグッときたのは?

玉屋:サザンオールスターズですね。24歳にしてサザンを初めて聴いて、ユーモアがあって面白いけど、捻りもしっかり効いていて、聴き手がどこか踊らされているという感覚になったんです。でも、桑田(佳祐)さんの歌は人の感情を刺激するし、どこか物語性を感じる。あんなに矢面に立って活動しているのに、どこか“裏の裏”を体現しているように思えるんです。もちろん、アレンジもポップスを突き詰めたものだといえますし。

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