2ndアルバム『世界各国の夜』リリースインタビュー

VIDEOTAPEMUSICが提示する、時空を超えたサンプリング術 「検索不可能な誰かの思い出にロマンを感じる」

「坂本さんはすごく好きですし、「共感した」っていうと偉そうですけど、「こっちに行ってもいいんだ」って、後押しをしてもらったような気持ちです」

―それでは『世界各国の夜』についてお伺いしたいのですが、僕がアルバムを聴いて連想した別のアーティストの作品と紐づけながら、話をしていければと思っています。まずはやけのはらさんの『THIS NIGHT IS STILL YOUNG』で、やけのはらさんとはお互いの作品に参加するなど交流が深いと思うのですが、あのアルバムはやけのはらさんがフロアをDJ目線で見つめながらラップした作品だったと思うんですね。『世界各国の夜』も、フロアを見つめるVIDEOさんの視点から、「夜」とか「ダンスミュージック」というテーマにつながっているのかなと。

VIDEOTAPEMUSIC:やけさんと一緒に深夜のイベントに出る機会も増えたので、それは今回のアルバムに密接に関わっていると思います。かといって、僕が見たことをそのまま音楽にするわけではなく、今僕が体験してるパーティーの現場も、今僕が50年前の映画のナイトクラブのシーンにエキゾを感じるように、50年後にはエキゾな夜の景色になるかもしれないとか、そうやって今と過去を俯瞰しながら作った感じです。

――フロアの光景をそのまま描くのではなく、そこでの熱量だったり、そこで起きるロマンスだったりを、他の国や年代の風景に置き換えたというか。

VIDEOTAPEMUSIC:今のクラブの現場を体験したことで、昔の日本映画のナイトクラブのシーンだったり、アメリカの青春映画のプロムパーティーだったり、そういったものに対する想像力も広がりました。映画の中の過去でしかなかった人たち、今とは全然違う格好で、全然違う音楽で踊ってる人たちにも、今僕に起きてるようなドラマが一人一人にきっとあったんだろうなって。

――やけのはらさんの存在が作品自体にも間接的に関わっていると言えますか?

VIDEOTAPEMUSIC:制作中もよく一緒にライブをしてて、今回アルバムに入ってる曲はずっとライブでやってた曲も多いし、現場で感想をもらったりもしていたので影響はあると思います。やけさんとクラブに行って、「もっとダンスミュージックっぽい曲作りなよ。4つ打ち作んないの?」とか言われて、「でもなあ」って思ったり(笑)。クラブの現場に合う曲を作りたいけど、自分のスタイルもあるし、攻めたいけど守りたいっていうせめぎ合いの中で、ラテンっていうのが出てきたんですけど。

――そこに関してまた別の作品を挙げさせてもらうと、坂本慎太郎さんの『ナマで踊ろう』と近いフィーリングを感じました。いわゆる4つ打ちのクラブミュージックではない、違う形でのダンスミュージックの提案というか。

VIDEOTAPEMUSIC:坂本さんはすごく好きですし、「共感した」っていうと偉そうですけど、「こっちに行ってもいいんだ」って、後押しをしてもらったような気持ちです。

――アルバムには「ミスハトヤ」という曲もありますが、坂本さんはご自身の作品について「ハトヤのハコバンみたいな感じ」ともおっしゃってますよね。

VIDEOTAPEMUSIC:実際、僕ハトヤでもやりましたしね(2014年の「ライヴ・イン・ハトヤ2014」)。ダンスミュージック特有の、演奏者側の自我がない感じというか、お客さんが主役という感覚に惹かれるのも、ホテルのハコバンみたいな雰囲気に通じるんですよね。空間と、そこに来る人が主役っていう感じは、ダンスミュージックにも、昔のハコバン的なムード歌謡やラテン歌謡にもあると思うし、坂本さんがそういうフォーマットを使ってやろうとしている事は、自分のやりたいことをすごく後押ししてくれましたね。

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