兵庫慎司が自腹で行ってきた

くるり主催『京都音博』全ステージレポート 9回目を迎えた同フェスの「得難さ」とは?

 2007年から毎年開催、今年で9回目の開催となったくるり主催の『京都音楽博覧会 IN 梅小路公園』が、9月20日(日)に行われた。今年の出演はくるり、木村カエラ、高野寛、indigo la End、Cosmo Sheldrake、八代亜紀、Antonio Loureiro、ましまろの8組。

 まず毎年恒例の開会宣言、着物姿の岸田とTシャツ姿の佐藤が登場。例年この時は着物姿であることが多いので、「なんで普段着やねん」と岸田が佐藤につっこんだりしつつ、あと会場に隣接していた梅小路蒸気機関車館が閉館になったので(来年京都鉄道博物館として再オープン予定)このフェス恒例の「ポーッ」という汽笛音が今年はないこと(去年まで演奏中も関係なく何分かに1回のペースで鳴っていた)などにも触れつつ、あいさつと、感謝の言葉と、産休中のファンファンからのメッセージ(スマホに届いたものを読み上げる)のあと、1組ずつ出演者を紹介。

1 高野寛

高野寛

 「中学の時空手部やったんですけど、練習をしながらずっと彼の曲を口ずさんでいました」という岸田の言葉に続き、登場。スタンディングでアコースティック・ギター弾き語り。1曲目からいきなり自身最初のヒット曲「虹の都へ」(90年)でスタート。次は、「犬の一生はあっという間で、犬の1年は人間の7年にあたるそうです」と曲の趣旨を説明し、昨年リリースの最新アルバム『TRIO』の1曲目「Dog Year,Good Year」を歌う。そしてボブ・ディランの「時代は変る」に安保法制問題についての日本語詞を付けてカバーしたあと、「僕の曲で一番有名な曲をちょっとだけ」と、CMソング「グリーンダカラちゃんのうた」を歌って会場をわかせる。くるりのトリビュート・アルバム(09年)に提供した「ワンダーフォーゲル」、「虹の都へ」に次ぐヒット曲「ベステンダンク」と続け、『TRIO』でセルフ・カバーした「確かな光」でしめくくった。

2 Cosmo Shalerake

Cosmo Shalerake

 マニュピレーター的に機材を操作しつつ歌う、というライブ・パフォーマンスを行う、ロンドンの25歳のアーティスト。これまでに音源リリースしているのは『ペリカンズ・ウィーEP』(7曲入り)のみだが、その日本盤に岸田は「突如現れた“普通の天才音楽家”」「ヴァンパイア・ウィークエンド、ハドソン・モホークが目指した越境的サウンド作りをいとも簡単にくつがえす最近の英米アーティストの中で最先端の越境的サウンド」「きっと英米シーンは彼を中心に変わっていくことでしょう」と、推薦コメントを寄せている。なお、この岸田のコメントはCDパッケージに貼られているが、インナースリーブには佐藤とファンファンの推薦コメントも載っている。歌ものを志す人がなんでこんなトラックを? こんなに自由なトラックを作る人がなんでわっかりやすい歌ものを? という驚きに満ちた全5曲。という意味で、音楽手法やジャンルは違うが、本質的にくるりのやっていることに近いかもしれない。

3 木村カエラ

木村カエラ

 自身のバンドは連れてこず、くるりとのセッションでステージに立つ……いや、全員座って演奏し歌っていたが、とにかくそういうスペシャル・ライブ。白いノースリーブシャツにふっとい青ジャージ(サイドに白線)、という衣裳で登場、アコギを弾く岸田とふたりで最新シングル「EGG」からスタート。2曲目で岸田以外のくるり&そのサポートメンバーが全員登場、「Sun Shower」をプレイ。終わると岸田、「ええ曲やな、これ。よかった」「めちゃ緊張してたけど、すごい楽しくなってきた」と漏らす。「今日はくるりがバックやるんですけど、(カエラの)曲、すごい演奏難しいんですよ」と開会宣言の時に言っていたので、相当の気合いを持って臨んだのだと思われる。「Butterfly」と、自身の代表曲を続けて披露。「Butterfly」では間奏でBOBO(オフィシャルサポーターとして開演前の会場紹介映像でレポーターを務めたりしていた)が乱入、タンバリンを打ちつつ踊る。ラストは再び岸田とふたりで、カエラが大好きなくるりの曲であり、8月2日のROCK IN JAPAN FESTIVAL出演時にも岸田とふたりで披露した「奇跡」でライブをしめくくった。

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