1st配信シングル『ココロ予報』インタビュー
丸本莉子が語るメジャーデビューにかける思い 「自分が楽しまないと、しっかり届かない」
「聴く人に寄り添いたいという思いで歌っています」
――低音域にも広がりのある歌声がとても印象的ですが、自分の声の可能性や特徴に気づいて、歌ってみようと思ったのはいつぐらいですか?
丸本:小さいころから歌が好きで、中学二年生からギターを始めました。でも、声はずっとコンプレックスだったんですよ。お父さんからは「カエルみたいな声」と言われ続けて、自分の声を録音して初めて聴いたときは、本当にショックだったんです。学校の演劇でも一番声が目立つというか、気持ち悪いと思っていて(笑)。でも、音楽活動を始めて「いい声だよね」と言われるようになって、「人と違うからいいのかもしれない」と思えるようになって。曲づくりを始めたのも、考えてみれば、カラオケで私の声に合う曲がなかなか見つからなかったこともあったんです。失恋したときに、自分の思いをピッタリ表現できる歌がなくて(笑)。それで、ギターを弾きながらつくるようになったんですよ。
――インディーズ時代の曲も聴かせていただきましたが、丸本さんの歌には、リスナーに対するメッセージが込められていますよね。
丸本:広島で活動しているときは、恋や失恋の曲が多かったんです。でも、上京してから「地域も私も歌い歩いていく」というテーマを持つ地域活性化プロジェクト“TAN-SU”に参加して、自然と応援ソングが多くなって。けれど、私が偉そうに「頑張れ!」というのは違うな、と感じて、「私も頑張っているし、いろんな人がいろんなことを頑張っている。一緒に頑張れたらいいよね」って、寄り添っていけるような歌をつくりたいと思うようになりました。
――「ココロ予報」のメッセージも、その思いに通じるところがありそうです。
丸本:そうですね。「ココロ予報」は自分自身のことを書きながら、聴く人に寄り添いたいという思いで歌っています。実はインディーズ時代と歌詞が変わっているんですよ。当時は自分のことで精一杯で、本当に自分のことばかり歌っていたんですけど、デビューさせてもらった大切な曲なので、もっとたくさんの人が自分に置き換えて感じられるように、歌詞を作り替えたんです。これからもカッコつけずに、正直に書いていきたいと思います。
――先ほど地域活性化プロジェクトに関するお話がありましたが、全国いろいろなところでパフォーマンスされてきたんですよね。
丸本:本当にたくさんのところを回らせていただきました。埼玉県では自転車の広報キャンペーン、高知県では女子旅、広島では瀬戸内海などなど、いろんなテーマで歌わせてもらって。それぞれの地域にしかないよさがあるんですが、共通して感じたのは人のあたたかさ。故郷がたくさん増えたみたいな感覚で、音楽活動のいいエネルギーになっています。
――見ず知らずの土地に行くのは緊張もするし、最初はその人たちとどう仲良くなるか、難しい面もありそうです。
丸本:そうですね。その土地の良さを知って、それを心から楽しんで、本当にいいと思ったものをそのまま素敵ですと伝えることが大切だと思いました。そうすることで自然と打ち解けて、あたたかく迎え入れていただきました。
――丸本さんの歌を初めて聴くという方もいたと思いますが、その人たちの気持ちをつかむために苦労したこともあったのでは?
丸本:難しかったですね。特にショッピングモールはすごく大変で、心が折れそうになった時はやっぱりあって(笑)。でも、その中でも一人でも聴いてくれる人がいる限り、ちゃんと歌おうという思いで歌っていました。馴れ馴れしくするわけではないですが、こちらから聴いてくれる人に打ち解けていくことが大切だと思っていて。聴いてくださる方もはじめは「誰だこいつ」と力が入っているので、コミュニケーションをちゃんと取るようにしていました。そのためにも、選曲は客層に合わせて変えるようにしていました。それからギター一本で歌ったり、広いところだとオケを使ったり、コールアンドレスポンスをしてみたり、いろんなスタイルで歌ったんです。ライブの後にCDのサイン会もするんですが、歌を聴いて涙を流してくださる方、「初めて聴いて元気が出ました」と声をかけてくださる方。そういう方々と接することは、とても励みになります。
――特に記憶に残っているエピソードは?
丸本:テレビ局の方と一緒に被災した地域、宮城・仙台の小学校を訪れたことがありました。そこで出会った子どもが、最初はとても心の距離が遠く感じたのに、すごく打ち解けてくれて、最後は「ねえねえ、ぼくの夢聞いてよ」と話しかけてくれるまでになりました。「歩いてゆけ」という曲のミュージックビデオにも出てくる、「夢を画用紙に描こう」というプロジェクトをやったとき、最初はすごくガチガチだった子どもたちが、だんだん打ち解けていくというやり取りが一番心に残りましたね。やっぱり、まずはこちらが心を開くということが大事なんだということを学びました。