1stアルバム『ななみ』インタビュー
ななみ、1stアルバムに込めた“人生の感情”を語る 「たぶん一生、愛を叫んでるんだろうな」
「やっぱり私は音楽以外なかった」
――ではここからは、それぞれの曲について聞いていきますね。アルバムは、前回お話を聞いた「I’ll wake up」で幕を開けて、2曲目は「去れ負け犬よ」。以前からライヴでもやっている曲ですが、この歌詞は自分自身に向けていますね。
ななみ:そう、自分に言ってますね。これを書いた当時は引きこもりだったり、ヤンキーだったり、そういう自分が本当にイヤだったんでしょうね。でも最近、この歌に助けられることが自分自身にあって……。たとえば全国で弾き語りでライヴしてると、聴いてくれる人が全然いなかったり、お客さんがいても、私のことを知らないから携帯いじってたりするんですよ。そういう自分が負けそうな時に歌いますね(笑)。お客さんだって、みんなが自分が勝ち犬だとは思ってないと思うし。「人に言うけど自分にも言う」みたいな感じで今は歌ってます。
――<結局人は簡単に裏切るし/どうせなら最初から 疑おうと思ってしまう>という歌詞はななみさんらしいと思います。人間観が出ていますね。
ななみ:(笑)そうですね、ヒネくれてますかね? ここの歌詞が一番気持ちいいですよ。ライヴを観てくれないお客さんの顔見て「お前だよ!」みたいな感じで歌うと、携帯をしまって「ごめんなさい!」みたいな感じで聴いてくれる人もいて(笑)。でもそこからファンになってくれる方も多かったので、ぶつからないとダメだなと思います。
――たくましいですね(笑)。次の「約束を果たすその日まで」は別れの場面を描いた、かなりグッと来る曲ですけど。これはきっとこういう場面が本当にあったんじゃないかと思いながら聴きました。
ななみ:そうですね。17歳の、まあ、ヤンキーの時に、結婚してもいいかなというぐらい好きな人に出会えたんですよ。それで「もしかしたら音楽をやらずに、この人と結婚して家庭を築いて……」とか考えだしちゃったんです。その時はオーディションとかも受けてたけど、先が見えなかったので、ほんとに未来について一番悩んでて。で、結局「音楽をやりたい、でもこの人と付き合いながらはムリだ、別れよう」という話をこっちから切り出して、別れたんです。そのあとにMusic Revolution(ヤマハの全国大会のグランプリ)を獲れたので、「あの時のさよならがなかったら今の自分もないんだろうな」って思いますけど……その時、「あんなに素敵な人と別れたんだから、絶対夢を諦めちゃいけない」って思えたんですよ。だからこれは「いつか夢をかなえて約束を果たすその日まであなたには会わない」っていう曲なんですけど、ただデビューできた今、向こうはもう結婚して、子供もいるんですね(笑)。夢を目指してる自分と恋をしたい自分がいて、そこで何かを選ばなきゃいけない時ってあると思うので、そこを共感してもらえたらなと思いますね。
――そうですね。ただ、17歳でそこまでの決断を迫られる人って、あまりいないと思います。
ななみ:うーん……やっぱり私は音楽以外なかったんですよね。だって自分で決めたのに、「あなたと結婚したから私は夢をかなえられなかった」とか言いたくないじゃないですか(笑)。わかってたんですよ、恋なんて一瞬だって。でも夢は、音楽は永遠だって思ってたから、そっちを選びましたね。
――4曲目は「I live for love」。これもタイトルに愛があります。
ななみ:これはあとで話す「悲しみはありがとう」の次の曲だな、という気がします。誰かにキズつけられて、誰も人を信じられない。キズを負うのが怖い。でも「誰かを愛することって素晴らしいんだな」と気づけた気持ちというか。私からすればファンの人だったり、最後まで見放さなかった家族だったり、そういう存在なんですけど。
――つまり、広い意味での愛なんですね。
ななみ:そうですね、うん。電車とかスクランブル交差点とか、人が多いところで、イヤホンで聴いてほしいと思います。うるさいところだからこそ静かな曲を聴いて、考えてほしいですね。いろいろ。
――続いては「愛してる」。これもバラードですね。
ななみ:これは、さっきの人と違うんですけど、ある人と別れた時のことで……その時はその人の幸せを願えないじゃないですか? 「ほかに取られたらどうしよう」とか「こんなに愛しているのに!」と思って別れたんですけど、でも「それって愛じゃないな」って気づいたんです。別れてから半年ぐらいまでは「新しい彼女できたかな」と思ってFacebookを調べたり、「どんな日常を送ってるのかな?」とか、気になったりしません? そのうちは全然愛じゃないんだな、自分を愛してるんだな、と思って。
――ああ、執着してるうちは?
ななみ:うん。でも2ヵ月、3ヵ月、半年経った時に「もうどうでもいいや」と思ってきちゃうじゃないですか。で、ひさしぶりに電話来てもうれしいわけでもなく、「元気? 幸せになってね」って、ほんとに言えるようになってからが愛なんだなって。それが男女じゃなくて、人間としての愛……相手の幸せを願えることが愛と呼べるのだろうな、という歌です。
――歌詞の一番最後の<この穏やかな気持ちを/『愛』と呼ぶのでしょう>というところですね。
ななみ:そうです。歌を入れる時も、最後は笑顔で唄って、ちゃんと出口に向かえるようにしました。ただ、この曲みたいに、自分のイヤなところがわかりながらも手放せないという女の子の気持ちを、世の中の男性には気付いてほしいですね(笑)。