2ndアルバム『Alley』リリースインタビュー

Keishi Tanakaが考える“歌を届ける意味” 「ポップな音楽で、ポップな言葉を言うのは面白くない」

 

「僕は言いたいこととストーリーを考えているだけ」

――今作は『Fill』よりもR&Bやブルー・アイド・ソウルの要素をより色濃く感じます。

Keishi:そこはすごく嬉しいというか、狙っている部分でもあるんですよ。自分の中のメロディーや曲調はいろいろ変えてるし、あまりジャンルに関しては固定しないようにしています。ギターの手癖と同じようなものがメロディーにもあって、もちろん毎回同じようになっちゃ面白くないですが、ある程度は生かす。僕の場合、それがソウルに近いメロディーだと思うんです。だから曲調がどうであれ、ちょっとソウルなメロディーを感じてもらえれば、結構曲的には満足というか、やりたいことが出来ている感じがあります。演奏の部分のジャンルというのはあまりこだわっていなくて、それがもしかしたら白人っぽいのかもしれませんね。黒人的なソウルの土臭さを僕はあまり意識していないので。

――ちなみに、Keishiさんの中にあるソウル的な要素は、どの年代のものが染み出ていると思いますか。

Keishi:僕はだいたい60年代、70年代の曲ですね。どちらかというとノーザン・ソウルやモータウン、フィリー・ソウルなどが好きです。ブルー・アイド・ソウルだとラスカルズとか、黒人だとビリーポール、ウィスパーズとかはDJでよくかけます。今の年代のソウルの人でも好きな人はいます。ハー・マー・スーパースターとか。あと、ジョン・レジェンドとかもすごく好きですが、それはいま僕がやりたいこととは少しずれている気がします。

――国内外で若手や中堅どころが、こぞってソウルやR&Bの色が感じられるポップス作品をリリースしてくるなかで、Keishiさんが『Alley』を作ったことは良いタイミングだと思っているんですが、周辺のアーティストと交流はありますか?

Keishi:例えば、Lucky Tapesのメンバーは今もサポートしてもらってるし、Special Favorite MusicやAwesome City Clubを自分の企画に呼んで共演したこともあって、少し若い世代にも仲間がいます。彼らがどう考えているかはわかりませんが、若い時は届ける層が限定しているくらいでもいいと思っていて、少し尖った部分がカッコいいんじゃないかと思う。今の僕はそういうことを続けながらも、昔から曲を聴いてくれている人たちと一緒に年を取って、10年後に40歳になっても聴ける音楽をやりたいと思っています。そう考えると、今回のアルバムはいま40歳の人にも届くような気がしてる。どちらかというと若者に向けて音楽をやっているけど、結果的に広い年代に届けば嬉しいですね。

――幅広い層に届けるということは、それだけポップとして強度を要することだと思うのですが、Keishiさんは自身の曲に対してどこまでポップという意識をもって作っているのでしょうか。

Keishi:ポップなものを作ろうという意識はあまりありません。それよりも今の僕を表すことが重要だと思っています。あまりマイナーなコードで歌うタイプではないと思いますが、ポップな音楽で、ポップな言葉を言うのは面白くないし、儚い部分が出てくるのはそのまま残したいとも思っています。でも、今後逆のチャレンジもしてみたいとも思うんです。自然なメロディーや歌にちょっと引っかかりを作るのはもともと好きなので、そのバランスを考えながら次の作品を作っていこうと思います。

 

――Keishiさんが考える引っかかりとは?

Keishi:たとえば、歌詞の中に楽曲の印象と真逆の言葉を使うとか。しっかり違和感を入れないと、ただの聞き流せる音楽になってしまうので、コードの展開とか転調なども入れこむけど、聴いてて疲れる音楽は作りたくない。そのバランスは難しいですが、上手くやれれているとは思います。

――ちょうど歌詞の話が出ましたが、バンド時代からソロキャリアにおいて、Keishiさんの歌詞って“僕”とか“君”というワードが頻発しているなと思っていて。主観で見ているものが多いなと感じるんですが、ご自身では書いたものを見返したりした際にどう思っているのでしょうか。

Keishi:あまりどの目線で書くかというのは意識してなかったんですが…。リディム時代と比べても無意識に多くなってるんですかね。もしかしたら日本語だからというのもあるかもしれません。僕としては聴いた人が“僕”になれたらいいと思うし、僕が書いている所の“君”にそのままストレートに自分を当てはめてもらってもいいし、それはその時の状況によって変わっていくでしょうから。僕は言いたいこととストーリーを考えているだけなので、実際に感じる人がどの所に立つかっていうのは、各自のタイミングで楽しんでもらえれば嬉しいです。ちなみに「Foggy Mountain」とか、「It's Only My Rule」とかは、僕の目に映ったものを書いているので、主観的です。

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