西廣智一がリトグリの魅力を解説
新星ボーカルグループ・Little Glee Monsterの魅力は“生”にあり 洋楽・歌謡曲に通じる音楽性を読む
本気で音楽と向き合う姿勢が生み出すニュースタンダード
そんなリトグリが早くも2ndシングル『青春フォトグラフ / Girls be Free!』を3月4日にリリースする。デビュー曲「放課後ハイファイブ」と同じ布陣で制作された「青春フォトグラフ」はブルーグラスやモータウンのテイストを感じさせる、春にピッタリのポップチューン。2014年を代表するヒット曲となったファレル・ウィリアムス「ハッピー」の影響下にある「放課後ハイファイブ」、そして今回の「青春フォトグラフ」やファンク色を取り入れたアップチューン「Girls be Free!」にも共通して言えるのだが、リトグリの楽曲からはいわゆるJ-POPの枠を超えた世界観が感じられる。歌われている歌詞そのものは彼女たちの年代にピッタリな内容だが、その音楽性は(特にバックトラックに注目してもらえばわかりやすいかもしれないが)かなり洋楽チックなものばかりだ。それもかなりスタンダート色の強いもので、流行は取り入れつつも芯にあるのは60〜70年代のポップス黄金期を支えてきた名曲たちと共通するものが多い。彼女たちの実力を活かそうと、制作陣も本気で音楽と向き合っていることが伺えるのではないだろうか。
その「古き良き時代の音楽を大切に」という精神は制作陣のみならず、昭和歌謡を愛好する15歳のアサヒや、ビートルズ好きを公言する14歳のmanakaといったようにリトグリの中にも根付いている。1stシングルではジャクソン5の代表曲「I Want You Back」を原曲に忠実に再現した彼女たちは、今作でも海外の名曲カバーに挑戦した。それが韓国出身のJ-POPシンガーKとのコラボ作「SEASONS OF LOVE」だ。この曲はミュージカルや映画で知られる作品『レント』で歌われる楽曲で、リトグリも以前からレパートリーとしてライブで披露してきている。実は昨年秋、リトグリとKはソニー・ミュージックレコーズのYouTubeプログラム『ソニレコ!暇つぶしTV』で同曲をコラボしており、これがきっかけとなり昨年11月のリトグリ単独ライブで再び共演が実現した。
今回収録された音源はそのライブの際に録音されたテイクで、ライブならではの緊張感と同時に、Kが奏でるピアノをバックに気持ちいいハーモニーを聴かせるリトグリの楽しげな様子も感じられる好テイクとなっている。
現在彼女たちは本作のプロモーションとして、全国各地でミニライブイベントを敢行している。リトグリの魅力を理解するには、まずなによりも生でそのパフォーマンスを体験することが一番手っ取り早い。もしお住いの地区近隣に彼女たちがやってきたなら、迷わずイベントに足を運んでほしい。「歌うま」とかそういう修飾がどうでもなるくらい、「音楽って楽しいものなんだ!」というごく単純なことを思い出させてくれるはずだから。
■西廣智一(にしびろともかず) Twitter
音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。