小野島大が本人直撃取材
ART−SCHOOL木下が語る、活動休止と再出発(前篇)「新しいクリエイティヴ・チームを作ります」
「身を削って作ってるんだから(お金を)もらっていいんだ」
ーーでは今後の予定としては。
木下:まずは2/13のライヴですね。そこで得られた収益を元に会社登記をして。それから曲作り、そしてレコーディングに入ろうと思っています。そしてニュー・アルバムを引っさげてみなさんの前に戻ってこられれば。
ーーアルバムに関してのクリエイティヴ面の構想はどうなってるんですか。
木下:決して間違えたらいけないのは、マーケティングだけを考えて作ったらダメだと思う。絶対失敗する。まずは、自分が思う「いいもの」を作る。それは一貫してチームのみんなで同じ目線を持ってると思う。
ーー「いいもの」って何ですか。
木下:自分の感性に引っかかって、なおかつ自信をもって提供できるもの、ということですね。はやりの味を入れてみようとか、相手の顔色をうかがって出すような、そういう自信なさげなものじゃなく、これしかないですよって出せるような、そういうものを作りたい。
ーーそういう意味で、これまで作ってきた作品は納得のいくものでしたか。
木下:これまで自分が作ってきた作品は、すべてがそうです。ただ、「これは売れないかもしれないけど、こういう実験的なこともやってみたい」と思ったときに、メジャーではなかなかできないんですよ。
ーー(スティーヴ・)アルビニのスタジオで作ったやつ(『BABY ACID BABY』2012年)は、そうだったわけでしょ。
木下:ええ。でもあれ以降やらせてくれなくなりましたから(笑)。
ーー(笑)なるほど。これからはそんなことも含めて、これまで誰かに任せていたこともすべて自分たちだけでやっていかなければならない。そのことへの不安などはありますか。
木下:まったくないです。むしろ残るほうが不安。
ーーいきなりハシゴを外されるよりは、先手を打って、自分の足で歩くことが大事。
木下:うん。絶対そうです。10代の、ものすごく音楽の才能がある子に、「どうせ音楽じゃ食えないんだろうなあ」とか思って欲しくないんです。やり方次第で音楽で食べていけるんですよって示したい。そこには価値があるし、身を削って作ってるんだから(お金を)もらっていいんだよってことも言いたい。これから独立して何かをやろうと思ってる人に、ひとつのやり方を提示できれば。オレはこうやったよって。今の若い人は初めから音楽で食べていくことは期待していない。それじゃあまりに夢がなさすぎる。僕たちは夢を与える商売じゃないですか。夢を見るためにソニーから抜けて、新しいクリエイティヴ・チームを作るんです。そして若い子にもっと夢を見てほしいと思ってるから。それが大きなモチベーションですね。
ーーいずれは若い人たちをバックアップしていきたいという気持ちはあるんですか。
木下:あります。今は余裕がなくて自分たちのことで手一杯ですけど、軌道にのったらやりたいですね。
ーー今後が楽しみになってきますね。
木下:そうですね。そのためにも2/13は…一応終わりではあるんだけど、でもチームとしての始まりでもあるんで、ぜひ来てほしいですね。今の状況では、普通に活動していたバンドが突然いなくなっちゃうこともありうるんですよ。そうならないためにも…
ーー自分の好きなバンドはファンの人たちで支えてあげてほしい。
木下:ほんとにそうです。その代わり僕は全力でお返しをします。
【後篇・ART−SCHOOL木下が語る活動休止と再出発(後篇)「戦うんだっていう覚悟はできてる」】
(1月14日・東京にて取材)
(取材・文=小野島大/写真=竹内洋平)