カラスは真っ白・タイヘイ、Yasei Collective・松下…ジャズ新潮流とシンクロする気鋭のドラマーたち
まず、すでに有名ではあるものの、mabanuaの名前は改めて紹介しておこう。現在は活動休止中のOvallのドラマーであり、2008年にソロプロジェクトをスタートさせると、トラックメイカー、プロデューサー、マルチプレイヤー、さらにはシンガーとしても、多岐に渡る活動を展開。これまでCharaやBENIのプロデュースなどを務めてきたが、昨年はGotchのソロツアーにドラマーとして参加し、1月28日に出る大橋トリオの新作には共同プロデュースで参加、4月8日にはAwesome City Clubがビクター内の新レーベル・コネクトーンからリリースするメジャーデビュー作のプロデュースも手掛けるなど、その活動がよりポップフィールドへと広がりつつある。そして、mabanuaとの親交も深い松下マサナオも外せない。大学卒業後に2年間アメリカで武者修行し、帰国後にYasei Collectiveを結成すると、マーク・ジュリアナのようなドラムでの打ち込みの再現を追求。昨年発表した『so far so good』には、ACIDMAN、SPECIAL OTHERS、在日ファンクなどのメンバーが参加し、今後のさらなる活躍を期待させた。
昨年ファーストアルバム『Nostalgical Parade』を発表したEmeraldの高木陽もいいドラマーだ。ネオソウルをはじめとしたブラックミュージックを愛する楽器陣に、元PaperBag Lunchboxの中野陽介がボーカルとして加わるという、その成り立ちはカラスは真っ白にも通じるものがあるが、このバンドはまさに「グラスパー以降」を明確に意識していると同時に、チルウェイヴからインディR&Bへという流れも取り込み、ときにプログレッシヴに展開する楽曲の中で、高木が多彩なリズムパターンを聴かせてくれる。この音楽性にして明確に歌ものというのは、まだまだ日本では稀有な存在だと言えよう。
最後にもう一人、先日YouTubeにジューク/フットワークを生演奏する動画を公開したDALLJUB STEP CLUBのGOTOを紹介しておきたい。ドラムンベースの先駆けとされるLondon Elektricityのアルバムに参加するなどし、2009年からはPendulumのメンバーとして活躍するKJ Sawka、日本におけるロックバンドによるヒップホップの独自解釈の先駆けとも言うべき54-71のドラマーで、現在はくるりから凛として時雨のTKに至るまで、幅広くサポートを務めるBOBOの2人をルーツとし、エフェクトを駆使したプレイで魅せるGOTOのスタイルは、やはりクリス・デイヴに通じる現代的な感性を感じさせる。バンドは結成当初こそビートオリエンテッドな音楽性だったが、一昨年にAlaska Jamのボーカル森心言が加入し、よりポップに進化。今年リリース予定の正規音源に期待が募る。
このように、今の日本には現在進行形のブラックミュージックとシンクロしつつ、ジャンルを越境し、よりポップなフィールドでの活躍が期待されるドラマーが続々と現れてきている。2015年は、彼らのようなドラマーに注目してみてはいかがだろうか?
(文=金子厚武)