ターボ向後『9nine Dream Live in 武道館』レポ
9nine、武道館公演で見せた「ガールズポップの本質」とは? 自由奔放なユニットの個性を追う
その光景に、張りつめていた会場の空気がどっと弛緩していくのを肌で感じながら、筆者は何故か号泣してしまった。僕等は、そしてもしかしたら制作者の方々や彼女達自身も、武道館をこういうステージにしたかったかもしれない。そうだ、この空間こそが9nineじゃないか。
武道館公演の前までに起こった数々の“進化”は、推測するに9nineという表現者に新しい物語を付け加えようとする施策だったかもしれない。しかし、ガールズポップアーティストとは本来「物語の担い手」のような社会化された存在ではないと思う。企画書上の物語を軽々と越えてしまうのが「ガールズポップ」の本質であり、9nineは初めての武道館公演という大舞台でも、予測不可能で大胆不敵な「女の子」のままだった。
もちろん吉井香奈恵のボーカルでの表現力は格段にアップしていたし、村田寛奈のダンスパフォーマンスはキレを増し、西脇彩華のファンと9nineを繋ぐ共感力は、この武道館で最高潮に達していた。しかしそれを凌駕していたのは、9nineというパフォーマンスガールズユニットが持つ究極の個性であり、そこには楽曲やパフォーマンス、そして男子が頭を絞って考えてしまう物語性を超える素晴らしさがあった。そういったグループのあり方が初の武道館公演といった大舞台でもいかんなく発揮されたこと。それこそが9nineというグループの最大の意味なのではないか。
武道館公演を体感した今、「9nineの魅力を一言で的確に表現せよ」という難問に対し、筆者はこう答えるだろう。「9nineとは究極のパフォーマンスガールズユニットであり、僕が求めている"女の子"そのものだ」と。それが今の9nineの「リアル」であり、「答え」なのだ。
■ターボ向後
AVメーカーとして史上初「映像作家100人 2014」に選出された『性格良し子ちゃん』を率いる。PUNPEEや禁断の多数決といったミュージシャンのMVも手がけ、音楽業界からも注目を集めている。公式Twitter