柴那典がBUMP OF CHICKEN最新作『RAY』をレビュー
BUMP は「壁」を突破した――最新作『RAY』の音楽的チャレンジを分析
BUMP OF CHICKENの7作目となるニューアルバム『RAY』が、3月12日にリリースされる。一足早く聴かせてもらったが、かつてない高揚感に満ちた、キャリア最高傑作と言っていいアルバムだ。 7月31日にはバンド初の東京ドーム公演を行うことも発表されている。スタジアムバンドとしての「第二章」が始まったことを告げるような、壮大なスケール感のある作品になっている。
昨年7月、本サイトがスタートしたばかりの頃に、筆者は【なぜBUMPは『国民的バンド』になれないのか】というタイトルの記事を書かせてもらった。挑発的なタイトルだったこともあって記事は賛否両論含めかなりの反響を巻き起こしたが、あそこで書いたことのポイントは、キャリアを重ね愛されてきたバンドが必然的に立ち向かうべき「壁」について、だった。デビュー以来、沢山の熱心なファンを抱えてきた彼らは、いわば青春の象徴のような存在として愛され続けてきた。一方で、歳を重ねるごとにバンドの音楽性は成熟し、落ち着き大人びたものへと変化していった。そのことは一切責められるようなことではないけれど、ひょっとしたらその齟齬が、知らず知らずのうちに足枷となっていたのではないか。そう思い、一つの問題提起として書いた原稿だった。
「次作でどんなチャレンジを見せてくるか、期待したい」と――筆者はその記事を締めくくったのだが、届いたアルバムは、まさに意欲的な挑戦を形にしたような作品だ。「宇宙」をモチーフにするなど彼らの世界観のあり方は基本的には変わっていない。歌詞や楽曲のテーマに宿る思春期性も変わらない。が、新作を聴いていると、そのことは「壁」や「停滞」の象徴ではなく、改めてみずみずしくフレッシュな衝動の感覚として伝わってくる。その背景には、今のバンドが最先端のテクノロジーを意欲的に取り入れ、オープンになり、守りではなく攻めの姿勢で活動を繰り広げていることも大きく影響しているだろう。
昨年8月に配信限定でリリースされた「虹を待つ人」は、シンセやエレクトロ・サウンドを配して、きらびやかな曲調を実現した一曲。MVには彼らにとって初のスタジアム公演となったQVCマリンフィールドで行われたライヴの模様も収録されている。そのライヴでは次世代型ペンライト「ザイロバンド」や、曲や周囲の状況で色が変わる「チームラボ・ボール」など、様々な演出技術が用いられていた。
そして、アルバム『RAY』のリード曲「ray」も、明らかに新境地を感じさせてくれる一曲。軽やかなリズムとエレクトロニックなアレンジは「虹を待つ人」の延長線上にあるもの。「光線」や「光芒」を意味する曲名のイメージを踏まえ、MVでは360°ホログラムのスクリーンと20,000ルーメン×8台のプロジェクターを駆使した光のプロジェクション・マッピングが行われている。
ニューアルバムには「ゼロ」や「Smile」などこれまで3年の間にリリースされてきたシングル曲も収録されているが、これらの新曲のおかげで、アルバムの聴き応えはとても新鮮なものになっている。