SEKAI NO OWARI『情熱大陸』で心情を吐露 「1人でもいなくなると、空中分解してしまう」

 Fukaseは普段、自転車を乗り回している。多いときは一日6時間も自転車に乗り、曲が出てくるのを待っている。ある日の寒い雪の夜、自転車から降りたったところで、Fukaseは生々しい心情を吐露する。中学生の頃に集団リンチにあい、ほぼ学校に行かなくなってしまったこと、アメリカンスクールに通うもパニック障害を起こしてしまい入院することとなったこと。Fukaseにとって世界は終わっていた、だからバンドを「SEKAI NO OWARI」と名付け、そこから這い上がっていこうと決めたというのだ。

 20歳の時に4人で作ったライブハウス「Club EARTH」。ここが4人の出発点であり、共同生活の始まりだった。当初予算を6万円しか持っていなかった彼らが、理想のライブハウスを実現するために生活を切り詰め、最終的には約500万円をつぎ込んだ。当時のことを「6万円を70万円にするビジネスチャンスだと思ってたけど、考えが甘かった」と語る。初ライブの観客は15人。そんな場所から現在まで這い上がってきたのだ。

 番組後半では、Fukase以外のメンバーの過去も語られた。Saoriは中学時代にいじめを経験したという。当時、彼女にとっての逃げ場は読書だったことを、書店で落ち着く彼女の映像とともに紹介。いじめにあっていた時期に、幼稚園から知り合いだったFukaseが話しかけてくれ、救われたのだそうだ。現在の活動については「自分には才能がないから必要ないんじゃないかとずっと思っていて、でも必要とされたくて頑張っている」と語った。

 今やその手腕を買われ、他のアーティストへの楽曲提供も担当するNakajinも「常に何かと闘っている。このバンドに自分がいらなくなる時が来るんじゃないかと思う。」と、つきまとう不安を拭い切れないと話す。Fukaseが3人を必要とするように、3人もまたFukaseを必要としていることが語られた。

 新曲『スノーマジックファンタジー』の歌入れにも密着。上手くいかずにイライラするFukaseをSaoriとNakajinが説得し、無事に歌入れを終わらせる。メンバーに感謝するFukaseの顔にはあどけない笑顔が戻っていた。

 自宅で落ち込んでいるFukaseのもとに集まるメンバーの様子も放送。カードゲームをし、互いに些細なことで笑いあう。そうやって過ごすことでお互いを救い合うシーンが「4人だから成り立っている関係性」を表している。番組の最後には、Fukaseが卒業した中学校を訪問。過去に向き合えるようになった彼の姿と「自分を変えたいけど変えられないというのが一番苦しい。必要とされるプレッシャーにつぶされるんじゃないかとたまに思うけど、必要とされない寂しさに比べたら、屁でもない。だから必要とされるためには、いくらでも頑張る」とメッセージを残し、番組は幕を閉じる。

 音楽シーンにおける彼らは、まさに破竹の快進撃を続けている。その背景にある生々しいメンバーの心情が明かされたことで、彼らがいかに多くのリスナーの心を掴んでいるか、その一端を見ることが出来たのではないだろうか。

(文=松下博夫)

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