ライブはまさに偶像崇拝 ももクロはいかにして「宗教」となったか

『ももクロの美学~〈わけのわからなさ〉の秘密~』(廣済堂新書)を上梓した東京大学大学院准教授で美学研究者の安西信一氏に、美学的な視点から見たももいろクローバーZの魅力を聞く集中連載第2回目。

第1回目:「ももクロ現象こそ、アート本来の姿」東京大学准教授が美学の視点から大胆分析

――前回、『ももクロの美学』はブログへの投稿をきっかけに執筆されたというお話がありました。どんなことを書かれたんですか?

 ももクロの日本性や、昭和芸能史からの影響などですね。また一つの核となったのは、"宗教性"を帯びているということ。僕自身が心酔しているからそう思うというのではなく(笑)、間違いなく擬似宗教のようなものとして人々に力を与えていると思うんです。ライブも礼拝のような感じがするでしょう。例えば、ヲタ芸である「ケチャ」「ロザリオ」なんかは明らかに宗教からきている。

――宗教性を帯びやすいアイドルのイベントといえば、メンバーの卒業ですよね。早見あかりが卒業したとは言えども、ハロー!プロジェクトやAKB48のように"いつか必ず訪れるイベント"としての卒業がももクロには存在しませんね。

 「国立競技場でのコンサート」などの目標は立てますが、たしかに時限を区切るというファクターはないですね。ももクロの場合は、もう少し本当の意味で宗教的かもしれない。もちろん本物の宗教ではないですが(笑)。

 具体例を挙げると、「行くぜっ!怪盗少女」PVでは巫女のコスプレをしています。『女祭り2012-Girl's Imagination-』の映像を見ると、念仏を唱え、その内容が実現するという演出もありますし、れにちゃん(高城れに)の「幽体離脱ができる」などの発言をする"感電少女"ぶりなど、宗教的なモチーフとしてあらゆるところに取り入れている。

 さらに、ももクロのダンスは、奇妙奇天烈でありながら、彼女たちの純粋さや、厳しい練習に耐える忍耐力と向上心など、内面性が表れているような動きですよね。振り付けもどこか田楽踊りなんかを連想させる、土俗的とさえ言える部分がある。結成当初から振り付けを行ってきた石川ゆみさんも、「すごく心のきれいな子たちなので、それがダンスに表れている......体当たりで全力でやろう、っていう気持ちで踊ってるんです」と語っています。アイドルは「偶像」という意味ですが、そんな彼女たちを応援するという行為や、みながサイリウムを振りコールを叫ぶライブ会場での光景は、まさしく偶像崇拝のような面があると思います。

 ちなみにファンクラブ限定のイベントでは、ファンたちはみんな白いベレー帽を被ったのですが、そういう人たちが大量に会場周辺にたむろしているのは、知らない人にはちょっと新興宗教の信者みたいにも見えたでしょうね(笑)。

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