オーラル、ブルエン、フォーリミ……ライブハウスと“地続き”の場所としての日本武道館

ライブハウスと“地続き”の場所としての武道館

 1966年のThe Beatles来日公演以来、ロックバンドの聖地と呼ばれてきた日本武道館。約1万人というキャパシティのため、若手バンドにとっての登竜門的な場所としても長年の間親しまれてきた会場だ。

 この1、2年でもそういう意味合いを持って武道館に臨んだバンドは多いが、その一例として挙げられるのが、2016年10月のBLUE ENCOUNT、2017年2月の04 Limited Sazabys、そして今月16日にその舞台に立つこととなるTHE ORAL CIGARETTESだ。昨年夏には『ONAKAMA 2016』と題した共同企画ライブを開催した仲であるこの3組だが、武道館ワンマンに向かう姿勢にも二つの共通点があった。一点は、地元でひとつ成果を上げていること。そしてもう一点は、全国各地のライブハウスを対バン形式でまわるロングツアーを開催していることだ。

 BLUE ENCOUNTはメンバー3人の地元が熊本であるにもかかわらず長らく凱旋ワンマンを行ってこなかったが、2016年7月、ツアーファイナルを熊本B.9 V1で開催した。武道館前に熊本ワンマンの開催を決めたのは、上京以来帰ることがなかったという故郷に対する「来れなかった」「逃げ続けていた」というメンバー自身の意識(参考:『BLUE-BOMB for LIVERS!! BLUE ENCOUT FIRST OFFICIAL BOOK』)に決着をつけるためだったのではと推測することができる。そして同公演の直前、2016年3~6月には、全国32公演の対バンツアー(『TOUR2016 THANKS~チケットとっとってっていっとったのになんでとっとらんかったとっていっとっと~』)を開催している。

 一方、04 Limited Sazabysは、2016年4月、愛・地球博記念公園(モリコロパーク)にて『YON FES』を開催。同年夏にメンバーは既に上京しているが、全国各地で出会ったバンドを地元に連れて帰るという形で成立しているこのフェスはフォーリミにとってのホームのような存在になっているようで、今年4月の『YON FES 2016』ではGEN(Ba/Vo)が同フェスのことを「どこにも属せなかった僕たちがやっと見つけた居場所」なのだと語っていた。さらに、2016年9~11月には全国31公演の対バンツアー(『eureka TOUR 2016』)を開催。BLUE ENCOUNTと同様、地元と向き合い、全国各地のライブハウスを回り終えてから武道館ワンマンに臨んでいることになる。

 このたび武道館ワンマンに挑むTHE ORAL CIGARETTESに関しても、2016年4月に地元・奈良にて初のホールワンマン(『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ~故郷に錦を飾りまSHOW!!~』)を開催したり、同年10~11月に全国14公演の対バンツアー(『唇対バンTOUR 2016~キラーチューン祭り巡業行脚の巻~』)を開催したりと、2組と同じような動きをとっている。特に後者に関しては、対バンツアーを開催するために「2016年12月に武道館を」というスタッフサイドの提案を断ったという経緯があり(参考記事)、メンバーの意思も固かったようだ。

 この3組の武道館ワンマンを「飛ぶ鳥を落とす勢いの若手バンドがその勢いに乗って武道館に挑んだ」と捉えている人も多いかもしれないが、BLUE ENCOUNTや04 Limited Sazabysに関していうと、インディーズデビューをしてから武道館に立つまで、2組とも約6年半かかっている。そしてTHE ORAL CIGARETTESはその間3年10カ月と、先述の2組よりも早いスピード感ではあるが、デビュー当初はキュウソネコカミやKANA-BOONら関西出身の同世代バンドに対する「遅れをとってしまった」意識がメンバー自身に働いていたこと(参考記事)、さらに山中拓也(Vo/Gt)のポリープ摘出などバンドを取り巻く大きな事件があったことが例として挙げられるように、彼らも道のりも決して平坦なものではなかった。

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