テレビ音楽番組はバラエティトーク型優勢に? バナナマン・バカリズムら起用の背景

 テレビ業界は春の改変期を迎え、音楽番組もそのなかで少しずつ変わりつつある。

 今期スタートする番組のなかでとくに注目度が高いのは、『NHK紅白歌合戦』の副音声『ウラトークチャンネル』での活躍も記憶に新しい、バナナマンと久保田祐佳アナウンサーのペアがMCを務める『バナナ♪ゼロミュージック』(NHK総合)だ。

 同番組は、MCの3人が“にわか音楽通”を目指す音楽トークバラエティーで、ゲストとの軽快な掛け合いや、音楽に対する視聴者のピュアな疑問に答えつつ、パフォーマンスを楽しむというもの。ほかにも、今期以前にスタートしたものとして、バカリズムとマギーが司会を務める『バズリズム』(日本テレビ系)や、森高千里と渡部健(アンジャッシュ)による生放送音楽番組『水曜歌謡祭』のペアが深夜帯に移り、トークをメインに放送するようになった『Love music』(フジテレビ系)など、芸人が司会を務める音楽番組は増加傾向にある。

 一方で『MUSIC JAPAN』が終了するなど、ライブ型からトーク型へシフトしつつあるように見えるテレビ音楽番組。これらの傾向について、『中居正広という生き方』や『紅白歌合戦と日本人』の著者で、リアルサウンドで『ジャニーズとテレビ史』を連載に持つ社会学者の太田省一氏は、以下のように解説する。

「現在の音楽番組を取り巻く状況は、1990年代中盤と非常に似通っているといえます。『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』などの長寿歌番組が終了した後の音楽番組に、その頃スタートしたダウンタウンが司会を務める『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系/以下『HEY!HEY!HEY!』)、そして石橋貴明(とんねるず)と中居正広(SMAP)がMCに就任した『うたばん』(TBS系)が、新しいトレンドを生み出しました。両番組は、歌がある意味脇役に見えてしまうほどトークの比重が高いという、歌番組としては異例のスタイルを確立しました。視聴者は自分の好きなアーティストやアイドルが、いかに芸人と絡み、個性を発揮してくれるのかを期待し、楽しむようになりました。そこから20年経って、もう一度そのサイクルが巡ってきたといえるのが2016年のこのタイミングだといえるのかもしれません」

 さらに太田氏は、ライブ型音楽番組が一時期よりも減少している理由をこう分析する。

「音楽業界全体が、CDのセールスよりもライブなどの興行に重心を移し、アーティストやアイドルのファンも現場志向になった現在、わざわざテレビでもライブを見るというよりは、好きなアーティストやアイドルが普段見せない一面をテレビで知ることに、重きが置かれているように感じます。それもあって、トーク型の番組が再び増えてきたのかもしれません。そして、SNSなどが発達し、テレビを通さずとも自身のパーソナリティを発信することができるようになったため、芸人がわざわざイジってキャラクターを発掘しなくてもアーティストやアイドルの方で自らのキャラクターを立てることも上手くなりました。その結果、バナナマンやバカリズムといった、強めに相手をイジるよりは、フレンドリーに接するタイプの芸人との相性が良くなっていることも、彼らを起用した一因と予想できます」

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