映画『orange』主題歌で好調 『未来』はコブクロの新たな代表曲となるか

コブクロ『未来』と映画『orange』の関係性

 昨年末にリリースしたコブクロの27枚目のシングル『未来』が好調だ。発売から1ヵ月を迎えようとしている現在でも「歌ネットランキング」では年明け前と同じく3位をキープ、レコチョク着うた/着うたフルのランキングでもトップ10位圏内を推移し、配信でも強さを見せつけている。本作は現在公開中の映画『orange』 の主題歌として書き下ろされたもの。累計発行部数が310万部を超える人気コミックの実写映画化、さらには昨年のNHK朝の連続テレビ小説『まれ』での夫婦役も記憶に新しい土屋太鳳・山﨑賢人がW主演とあって、こちらも昨年12月12日(土)の公開以降、並み居る大作を押しのけ興行成績4位とヒット中(1/12現在)。映画のロングランも、『未来』の勢いをますます加速させそうだ。

 ブレイクのきっかけともなった代表曲『桜』(2005)や、自身初のレコード大賞にも輝いた『蕾』(2007)など、これまで数々のヒット曲を生み出してきたコブクロ。中でもバラードは彼らの最も得意とするジャンルのひとつであり、ファンからの支持も熱い、言わば鉄板の楽曲だ。今作『未来』は、彼らの持ち味でもあるソングライティング力と歌唱力が遺憾なく発揮された王道の1曲。ピアノとストリングスだけの静かなイントロを経て、小渕健太郎・黒田俊介ふたりの織りなすハーモニーは序盤からすでに盤石の構えだし、抑えていた気持ちがほとばしるようなメロディアスなサビは、コブクロ史上屈指の出来栄えと言ってもいい。

 また、今作ではぜひ詩世界にも注目を。『orange』は、10年後の自分から手紙を受け取った高校生の主人公が、思いを寄せる男の子(10年後の世界ではすでに亡くなっている)を救うため、友人たちとともに運命に抗うべく奮闘する物語。制作にあたり、きちんと原作を読み込んで臨んだというふたりは、主人公がさまざまな局面で直面する選択肢を、詞の中に「枝」という言葉で取り入れている。加えて、原作の読者またはすでに映画を観た方ならお分かりかと思うが、本作は一貫して主人公の目線で描かれた楽曲。〈君が 心折れそうな時 この肩にもたれてくれたら 抱えていた 大きな荷物も 大切に運ぶから〉〈こんなにか細く 折れそうな枝の先にも 君の未来が生まれてる〉という一節など、ヒロインの口にできない想いを詞の中で見事代弁している。

 リリースに際し、ふたりは「たとえ、思いは叶わずとも、愛する人のそばにいたい。届けられなくとも、今、そばにいたい。そう願う、か細い気持ちにも、きっと強い「命」が宿っています。映画を通して流れるこの楽曲で、忘れていた何かを思い出してくれたらいいなと思います」とコメントを寄せている。観客の心の中に映画の感動や余韻が一層深く残るように、楽曲そのものに映画の世界を投影する。これは、映画にとって最も幸せな主題歌のあり方だと私は思っている。

 そして実は本作は、名曲『桜』への密かなオマージュでもあるという。『桜』のリリースがちょうど10年前であること、劇中に<10年>や<未来>というテーマが登場することを受け、『未来』のジャケットには、桜の木のイラストが描かれたのだ。これは10年分成長し、さらに"未来"へと歩み続けるコブクロを表現したデザイン。『桜』同様に、この曲が多くの人の心に残り、愛し続けてもらえるような楽曲になってくれれば、という願いの表れでもある。映画の主題歌である以上に、『未来』にはコブクロの強い想い、そして覚悟が込められているのだ。

 すでに映画を観た観客からは、『未来』について、「ストーリーとハマりすぎていて感動した」「曲を聴くたびに『orange』を思い出して涙が出る」など反響が続々到着。むしろ映画を観てしばらく経ったあとのほうが楽曲の良さに気づけるという声もあるほどだ。『orange』という映画との幸せな出会いから生まれた『未来』が、コブクロにとって新たな代表曲となる日も近いかもしれない。

(文=板橋不死子)

■リリース情報
映画「orange-オレンジ-」主題歌
発売:2015年12月16日
価格:¥555(税抜)
【収録楽曲】
01.未来
02.未来(Instrumental)

iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/wei-lai-single/id1057566203?app=itunes

レコチョク
http://recochoku.jp/song/S1002431671/

■オフィシャルサイト
http://kobukuro.com/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる