5代目「パジェロ」劇的復活 ラリーレジェンド・増岡浩は語る「パジェロは私の分身だ!」
令和8年9月2日。このナンバーはクルマ好きにとって記憶に残るものとなるだろう。そう、三菱自動車の精神的支柱とも言うべき四輪駆動車「パジェロ」が、高らかに5代目復活を告げた記念日だからだ。そして会場に駆け付けたのはパジェロや登壇した経営陣だけではない。三菱自動車のラリーレジェンド「増岡浩」氏も当然臨席。リアルサウンドテック編集部は発表会場で増岡氏にアタック! 新型パジェロに寄せる率直な気持ちを取材した。
この記録は、三菱自動車のラリーカーをそのドライビングで数々の栄冠に導いたレジェンドドライバーにして、車両の開発にも関わってきた増岡浩氏のパジェロに対する並々ならぬ想いである。
「私は1979年からラリードライバーとしてハンドルを握ってきました。三菱自動車傘下のラリーアートへの入社は1982年と、奇しくも初代パジェロ誕生と同年。以降三菱自動車のドライバーとして1987年から2009年までパリ・ダカールラリーに参戦し、2002~2003年には総合優勝をすることができました。パジェロとはこれ以上ないほど濃い関係を築いてきたことになります」(増岡氏)
そんな増岡氏ゆえ、いったんパジェロの歴史に幕が下ろされてからの劇的復活については、感慨が深いはずだ。
「約7年ぶりの復活となる今回の5代目発売ですよね。『パジェロ復活!』って、こんな嬉しいニュースはないし、実際にハンドルを握った経験から言っても、本当に素晴らしいクルマと評価して間違いないと思いますよ!」と手放しで、さながらデキのいい我が子をほめるように目を細める増岡氏。
パジェロと言えば「クロカンの王者」と言われてきた。クロカンとはクロスカントリー、つまり国をまたぐほどの道なき道を、長距離にわたって走ることができるクルマという意味合いになる。
5代目パジェロはむろん、悪路をものともしない四輪駆動システムである。むろん衝撃にビクともしないラダーフレームである。そしてミッションはオートマチックながら、ハイブリッドでももちろん電動車でもない、ディーゼルエンジンの一択であるというのもまた、三菱自動車が得意とする東南アジア地域での利活用実態を反映した、現状最適な選択なのだろう。
「初代が登場した1980年代には現在のSUVというくくりはなくて、こういうクルマはクロカンとかRV(レクリエーショナル・ヴィークル)と呼ばれていました。では5代目パジェロはどうなのか? と考えると、そうですね……やはりジャンルとしてはSUVでしょうね。敢えて付け加えるなら“最強のSUV”と言っていいんじゃないでしょうか」(増岡氏)
初代パジェロはアウトドアと日常の垣根を超える新ジャンルのクルマとして、日本を代表する四輪駆動車の歴史を紡いできたが、5代目ではより快適に、上質に進化を果たしている。おそらく初代当時のコンセプトは「日常使いもできるジープ」的なものだったのだろうと想像(妄想⁉)できるから、44年の歳月は、パジェロをよりシックに、大人に成長させたということになろうか。といって、ドロんこ遊びを避けるようになったことはまったくない。それは2代目以降久しぶりの採用となるラダーフレームを見ても明らかだ。
「クルマという道具として新型パジェロの特長を端的に言うと“天候や路面に左右されないクルマ”ですね。ドライバーに運転のストレスを与えることがなく、また天候路面をまったく気にせず走れるのは強調したいポイントですね。たとえるなら「地球の隅々まで走れるクルマ」(増岡氏)
もちろん、移動にまつわる快適性や荷物の積載量など実用性・汎用性の高さは言うまでもありません。わたしも三菱自動車の開発者の一人として、無事に新型パジェロを世に送り出せたこと、そして若手エンジニアに対し、運転方法や車づくりのアドバイスができました。今はもう「大仕事を終えて、安堵感・安心感でいっぱい」という心境です」と、増岡氏は胸をなでおろした。
そして、長年にわたりパジェロと共に歴史を紡いできた増岡氏にとって、パジェロとはどのような存在なのだろう?
「パジェロはわたしの分身といっていい存在ですし、パリ・ダカールを始めとする多くのラリーを共に戦ってきた戦友と、そのような表現に尽きるのではないでしょうか」(増岡氏)
一般ユーザーがけっして日常的に行わないであろう、いや行う必要がないであろう過酷なドライビングを長期間、長時間にわたって実施してきた増岡さんの「パジェロとの時間」だが、これはひとりの男がそっと胸に収めるべき冒険の記録ではない。なぜならそれは、最終的にユーザーにメリットをもたらす“クルマの信頼性にまつわる根幹情報”だからだ。
「単に復活したのみならず、劇的に良くなって復活したのがポイントです。この進化のメリットをもっとも受けられるのは、買ってくれるユーザーの皆さんです!」という増岡氏のコメントからも、それは明らかだ。
余談だが写真撮影の合間、増岡氏は、「ボディカラーは個人的にはホワイトが好みです。これをベースに、ラリーカーのようにステッカーを貼ってデザインしたらもっともっとカッコよくなりますよ!」と、ここだけは作り手側ではなく、いちクルマ好きとして、少年のような笑顔でコメントしてくれたのが印象的だった。
ちなみに発表会時点で価格は未公開。10月1日より予約受付を開始するとしている。リビングレジェンドが戦友と呼び、最強SUVと称するパジェロ、まさに堂々復活の狼煙が上がったのである。
◎参考
三菱自動車「パジェロ」公式
https://www.mitsubishi-motors.co.jp/lineup/pajero/special/index.html